7月17日に行ったJIA関東甲信越支部・保存問題委員会の発表した「声明」と、関連して行ったシンポジウムの概要を報告する。
「声明」
私たち社団法人日本建築家協会 関東甲信越支部 保存問題委員会は。東京中央郵便局庁舎の部分保存という今般の決着に際し、以下3点を広く声明するものです。
(1)建築文化の伝承と発展のためには、都市環境保全を目的とした外観保存のみでは不足であり、建築の価値の中核をなす内部空間を含めた一体性のある保存が本来的かつ不可欠である、ということを、強く訴えます。
(2)今般の事例がモダニズム建築の保存における許容水準として扱われてしまうことの無いよう、保存の意義を自らその実践の方法とともに問い直し、モダニズム建築の持つ価値が広く理解・認識されることをめざして、最大限の努力を行います。
(3)吉田鉄郎がモダニズム建築の完成度をさらに深めた大阪中央郵便局庁舎の保存・活用が必ずや実現するよう、各分野の皆様との対話と協力を推進します。
この「声明」にあわせて、「背景」として声明発表にいたる経緯を記した。
つまり声明をおこなった動機は、「文化庁が重要文化財として検討に値するとの見解を表明し、日本建築学会が「重要文化財をはるかに超える価値がある」と述べた建築(東京中央郵便局庁舎)が、一部を残してオリジナル建築物の大部分が既に失われてしまった事実に、大阪中央郵便局など今後のモダニズム建築の存続と都市景観のあり方に、建築家として危機感を覚えたことによる。
会場にはJIAの主要メンバーを含む会員や、保存活動をしている市民、それにプレス関係者など七十数名が参加した。当日のシンポジウムについては、日刊工業新聞がコンパクト・明解にパネリストの発言を伝えている。タイトルは「大阪郵便局は保存・活用を」。
東京中央郵便局について、郵政サイドが設置した「歴史意匠検討委員会」に参加した鈴木博之教授は、「存続すべきという意見を制度的にもみ消されてしまうその手法に問題があった」との認識を示したとした。
委員会設置がある種の免罪符的に扱われるあり方について、内部からの声がなかなか公式の場で聞こえてこないが、この問題はこれからことある毎に「おおきな声」として訴え続けていかなくてはいけないと思った。
初めから結論ありきといわざるを得ないパブリックコメントの要請、景観審議会等の行政制度に通じる課題ではないかと考える。
ジャーナリストの清野由美さんの「経済合理性というコンセプト自体が時代に合わなくなってきており、その対極にある情緒的なもの、つまり古い建物を保存することで補完することが重要だ」との発言と「外観だけを保存することが歴史の保存だと言う考えは幼稚だ」との批判を紹介している。
僕達建築家にはなかなかこういう言い方は出来ない。これは痛烈な現代文明批判だと得心した。
室伏次郎さんの「ナショナルトラストのような組織が必要だし、選挙の候補者に歴史的建築の保存について問うような具体的な活動が必要だ」と述べたと簡明に伝えている。
さて僕の発言については、「東京は解体されたが大阪だけは残してほしい」「都市再生緊急特別措置法などによりの再開発が可能になったが、新法や法改正に対応する常設の委員会をJIAに設置する必要を感じる」と語ったとこのシンポを総括している。
様々な課題を背負ったシンポジウムだった。
<明日からは、8月1日に行われる愛媛県八幡浜市の「日土小学校」改修工事竣工見学会とシンポに参加するついでに、仲のいい建築家と3泊4日で四国建築巡りをやってきます。
目玉はDOCOMOMOに選定した増田友也の設計した鳴門市の公共建築群と坂出人工都市(大高正人)、香川県庁舎(丹下健三)。それにレーモンドの広見町庁舎や山本忠司の瀬戸内海歴史民俗資料館。
数が多いと目玉だとはいえなくなる!琴平さんにも行ってみたい。帰りは道後温泉に浸かった後夜行バスだ。>