日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

心が躍る`壁のない学校 `「加藤学園初等学校」(1)

2013-01-27 16:56:44 | 建築・風景
1月26日(土)。槇文彦が1972年、沼津に建てた「加藤学園初等学校」を見学させていただいた。41年前、日本で初のOPENシステムによってつくられ、日本の教育改革の原点になった小学校である。

創設者加藤正秀理事長や、90歳を越えてなお赫灼(かくしゃく)とされている亀田佳子元学園総務主事、校長先生や創設期に在学したOBやOG、それに槇事務所の所員やそのOBの方々に迎えられた。
僕は当時槇事務所の所員として元倉真琴さんたちとともに、設計を担当された建築家中村勉工学院大学教授に声を掛けて頂いたのだが、文科省の施設課長や、この学校を支えている長澤東洋大学教授、建築ジャーナリストの磯さん、新建築社の面々などなど大勢の建築の関係者が参加した。この学校の存在とその教育方針などを知ってもらいたいという学校の方々の想いが伝わってくる。

設計理念は「壁のない学校」だったと中村さんは言う。
試行錯誤を繰り返したというが、若き日の中村さんの日本にない学校をつくるという喜びが、僕たちに伝わってくる。現場に来た槇さんは、しゃがんで高さの確認をしていたという。
その高さ、子どもの背にあわせて作られた台や小さな中庭にはね出したガラスで包まれたコーナーに設置されたベンチに寝っころがって勉強したというOGの一言と、あんたはいつもそうだったね!という同級生の言葉に笑いが起きた。そういうことが許される教育がなされてきたのだ。そのための学校、槇さんと担当された若き日の建築家たちとの思いが見事に結合している。

でも僕の心が躍るのは、アメリカのグラフィックデザイナー レイ・コマイ氏に委嘱したというスーパーグラフィックである。そしてもう一つのキイワード、4分の一の円だ。

この建築空間が妙に懐かしく感じられるのは、僕の(僕たちの)心を震わせたアメリカ西海岸に建つシーランチ(チャールス・ムーア)の味わいがあるからだ。大きな文字や切り取った原色を壁や天井に取り込むスーパーグラフィック、槇さんもやったのだとなんだか嬉しくなる。

愛しきもの VALCANとBRAVAS

2013-01-20 00:55:09 | 愛しいもの
洗面所に僕のつくった棚があり、取りやすいところにVALCANとBRAVASが置いてある。
形が違うが、このデザインのボトルはどちらも好きだ。VALCANはKaneboでBRAVASは資生堂のヘアリキッドである。
同じリキッドでも髪の受ける触感はまったく違う。VALCANはさっぱりしていてBRAVASは粘り気がある。つけたあとの感じや香り、どちらも悪くない。でも僕はVALCAN派だ。

何故BRAVASがあるかといえば、たまたま買いにいったときにVALCANがなかったからだ。

ところで、僕もゴルフをやっていたことがある。ジャック・ニクラウスが強かった頃だ。コンペをやると僕は何故かしらブービー、何故かといいたくなるのは、僕より下手な奴が何故か一人はいたからだ。このVALCANはそのある時のブービー賞だった。
35年前である。35年も使っていて替えられるものか!
このリキッドは、今や僕の`愛しきもの`なのだ。

床屋に行くと馴染みになって何年も経っているのに、整髪料は何にしますか?と聞かれる。リキッドと答える。メーカーは?とは聞かれない。そしてその翌朝、シャワーを浴び髪を洗ったあとつけるのはVALCANだ。

雪の前にHAYAMAと鎌倉へ

2013-01-14 23:27:27 | 日々・音楽・BOOK
今年の成人の日は1月14日、久しぶりの雪になった。
ハインリッヒ・シフの弾くハイドンのチェロコンチェルト第1番と第2番をのんびりと聴きながら、暖房を強めて新聞のスクラップをする。チェロの音は柔らかく部屋の空気がふんわりと緩み、こういう時には、こうやって温もりながら家(うち)に閉じこもるのも好いものだ。
と 思ったが、ふと思い立って床屋に行った。

寒くなったので髪を伸ばそうと思っていたが、帽子をかぶると髪の毛がビチャッと寝てしまい様にならない。11日(金)の夕刻、パナソニック汐留ミュージアムで始まる「二川幸雄・建築写真の原点 日本の民家1955年」展(会場構成は藤本壮介)のオープニングレセプションに行ったときに、函館で手に入れたHarri&TweedのFISHING HATをかぶって行ったら、ミュージアムの和田さんにブカブカだねえ!と笑われてしまった。これはいかん、いっそのことさっぱりしよう。
ところが床屋の親父には、髪は黒くても歳とると毛が細くなって張りがなくなっちゃうのね!なんて言われてしまった。床屋の親父の頭は真っ白、歳を取って髪の風情が変わるのはお互い様である。

今日の天気予報が雨だったので、晴れている間にと考え、昨13日、急遽若き友人森博さんに電話をし、彼の愛車、ダンパーを固めた真っ白なBMWに乗せてもらい、神奈川県立近代美術館葉山に行き「桑山忠明展 HAYAMA」を見た。

その前日に、椎木さんに案内されてプレス発表で見た東博の特別展「飛騨の円空・千光寺とその周辺の足跡」展にも刺激を受けたが、桑山さんは御(おん)年80歳、チタンによる微妙なメタリックの静謐な光に心が奪われる。
更に休憩スペースのモニターに登場して展示会場によって同じ作品でも設置する高さや組み方が必然的に変わり、それがまたご自身がご自分の作品に触発されることにもなると述べる桑山さんの真摯な姿に密かに感動するのだ。
何度もこの美術館には来ているが、この会場はなかなか好いと想いを新にした。

海と富士山の見えるテラスでコーヒーを飲みながらの森さんとの話が弾む。ライカ論(彼の愛するカメラはライカのM8だ。こん畜生(笑)!)とか建築論、ダンパー(足回り)を固めたのは早く走るためだなんていう。世代が違うが僕とはうまが合うのだ。

さてもう一つの目的、志功のお孫石井頼子さんに迎えてもらい、鎌倉山の閉館した棟方板画館に隣接している、僕が47年前に工事を担当した旧板画館に赴き写真を撮った。僕の若き日の記念碑でもあるからだ。頼子さんも一緒にBMWに乗り、西鎌倉の森さんが設計した住宅に立ち寄る。頼子さんは僕の一言「建築家のつくった家だね!」という言い方を面白がる。
鎌倉駅まで送ってもらい、頼子さんと僕は、森さん推薦の小町通からちょっと入った「いさむ」で一杯だ。

<写真 モニターで語る桑山忠明氏>

`験直し神様`のコトバ

2013-01-05 21:03:45 | 日々・音楽・BOOK
こんなことを言うと、地の神様に叱られるかも知れないが、三が日を過ぎてから凶の験直し(げんなおし)のために大山阿夫利神社にお参りした。
そして頂いたお言葉。
「ながむれば ながむる花のあるものを 空しき枝に うぐいすの なく」

さて、何のことかと思えば、「古きをすてて 新しきにつくがよい あまり一つの物にとらわれて役にも立たぬことを思ってはだめです 元気を出して捨てるべきはすて進むところへ進め」
分かりやすいが何となく稚拙な一文、でもこれだと思った。
過去は大切だが、やることをやるのだ。迷わずに!

「願い事は、急には無理だがひかえてよし」。待ち人は来るし、「失せものはところをかえて探せ」。そうか!年末に部屋を片付けたら何が何処へ行ったか分からなくなった。神の教え好し!
そして「学問は、自己への甘えを絶ち目標を定めよ」。よし、そうしよう!
そして旅行(たびだち)、「思いきって出よ」、とある。暮れに四国に行き、2月は沖縄だ。目標定まれり。

例年の如く、沢山の方々に賀状をお送りし、沢山頂いた。
僕も数名の友人に万年筆で同じ文意の書き添えをしたが、一年過ぎるのが早すぎて困ります、と困惑している同年輩の添え書きが気になっていた。
歳をとると共に、時間経つのが早くなるが「元気を出して捨てるべきはすて進むところへ進め」という神のお言葉にある「元気を出して」というのがいい。

こういう賀状の書き添えもあった。
お目にかかれて嬉しかった、(僕から)よい影響を受け、世界が広がった、とあり、さらに一言。「結婚しました」。大学院博士課程に在学中の女子大生である。
「お元気ですか、私もがんばってます。大晦日に還暦過ぎてしまいました」という飲み屋の素敵なお上からの細いペン字の添え書きもあって、ずいぶん会っていないなあと嘗てのやり取りを思う。

「アタリマエという奇跡、フツーという奇跡かけがえのない価値を見出していきたい」という大学の教授。
そして、建築歴史学の重鎮「皆様のご健康とご多幸をお祈りします」という一文への添え書きにペンでの八文字「もうすぐ米寿です」に、穏やかな懐の広いお人柄を思い、この何気ない賀状に万感の想いが込められていることを想う。そして僕は良き新年を迎えることができたと感謝するのだ。

おみくじは「第四十七番 中吉」である。

妻君と並んで社殿の前で記念写真を撮った。でも掲載の写真は立ち寄った蕎麦や「萬陣」である。

2013年を迎えて

2013-01-02 17:44:10 | 日々・音楽・BOOK
どうも僕は「蛇」が苦手で、いやいや苦手を超えて怖いのである。
なんて見得を切ることもないのだが、吾が子(娘)が幼稚園児の頃だったか、娘と娘の仲のいい友達を連れて、厚木にある森林公園に行ったときに、首をもたげて池を泳いでいる蛇を見てぞっとした。森に一歩入ったら、とぐろを巻いている蛇がいて,わっ!と叫んで飛び出して幼き二人に笑われた。いまやこれが我が家の伝説である。

今年の干支は蛇、冒頭の絵は蛙が好きな娘からの嬉しきお年玉、この蛙は言うまでもなく僕なのだ。汗かいてスタコラ逃げている。思わずニヤリ!
こうやって今年が始まった。

晴天に恵まれて地の神様有鹿神社に初詣をした。引いた神籤はなんと凶、初めての体験だ。細君と娘もエッ!と驚き、娘が記念にと御神籤の写真を撮った。

日本海側や北海道の雪を思う。東北は! と さまざまな思いや願いがあるが言葉が出ない。