秋の日に聴くチェロとピアノのコンサート。
サン・サーンスのチェロソナタ2番の、マエストーソ、ラルガメントとされている第一楽章を聴きはじめて、この曲がいま(現在)の時代を象徴しているような気がしてきた。そして我が身の帰し越し方をふと振り返ることにもなった。異例である !
此の一文を書き起こしながら、改めて配布されたプログラムに目をやる。チェロを弾くのは小田急線沿線の秦野に住い、建築設計事務所を構える建築家久保寺敏郎、僕の出た明治大学建築学科の後輩でもある。曲の合間や、休憩時間に走り書きをしたメモ、そして「10回目の演奏会を迎えて」とタイトルされたプログラムに記載した久保寺とピアノを弾いた久保寺美帆の一文に改めて目を通し、瞑目する事になった。
1、(一曲目) 祈り――悲しみが胸に溢れるサンサーンス晩年の曲で、今年亡くなった心友に捧げます。此の曲を作曲したのは70歳のとき。サンサーンスは1835年の生まれ、1921年(大正10年)86歳で亡くなる。此の曲を冒頭に弾いた久保寺の想いに一夜を越して改めて心打たれた。そして休憩を挟んで演奏したチェロソナタ2番。こんな一文を記している。(文中一部略称)
1楽章は、力強く始まり激しい感情の起伏が増幅され・・・2楽章は8っの変奏曲形式・・・3楽章は心に染み入るう緩徐楽章、4楽章はピアノとチェロが絡み合い壮大に曲を構成していく・・・(以下略)。
時間と題したピアノを弾く久保寺美帆の一文。14歳のときに渡英してピアノを学び様々な賞を得た久保寺の姪、・・・チェロリサイタルも今年で10回を迎え、時間は瞬く間に過ぎていきます。世の中の平和を願い、多くの作曲家の音楽作品と出会い、演奏できることの幸せをかみ締め、ピアノが弾ける時間を大切にしていきたいと思います。この二人のコンビネーションに魅せられた。
そして第10回記念として演奏された`日本の歌シリーズ`。冒頭の「早春賦」。弾き始めたピアノの音を聴いて涙が出そうになった。春の小川、みかんの花咲く岡、と続いていく。会場から小さな声で囁くように歌う声が聞こえてくる。僕もムゴムゴとメロディを追うが、無念にも歌詞が出てこない。最後の一曲は`初恋`。そして拍手、幾つかのアンコールの最後に、久保寺はバッハの「G線状のアリア」を慈しむように弾いた。
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