2009.2.25
2005年、姉歯秀次元一級建築士が建物の構造計算書を偽造し、地震で倒壊の恐れのあるホテルやマンションが建設、販売された事件から早くも4年が過ぎた。
愛知県では、この偽装によってホテル解体に追い込まれたビジネスホテル「センターワンホテル半田」(愛知県半田市)が、建築確認審査で建設を認めた愛知県などに約5億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が昨日(24日)、名古屋地裁であった。
判決は原告の訴えをほぼ認め、県などに約5700万円の支払いを命じるものであった。全国で同種の訴訟が起されている中での行政の責任を認めた初の司法判断である。
この公判の中で県は『審査対象は建築基準法に書かれたものだけ』と繰り返し、専門家の多くが常識的に疑問に思う耐震性の安全も『審査する部分ではない』と主張し続けた。
しかし判決では、建築主事については「建築の専門家」とした上で、今回の構造設計の中には『常識的に見て明らかに構造が危険なものがあり、建築主事は問題点を認識できたのに放置していた』と厳しく指摘した。ただ、損害については『耐震補強工事でも耐震強度は確保できた』として、建て替えが必要だったとする原告の主張を退け、補強工事の費用などとして計2億5300万円を損害と認定、既に施行業者から弁済されている金額などを差引いた約5700万円の支払いを命じたというものである (2.25付け中日新聞より)。
ところで、一連の耐震偽装事件の張本人である姉歯元建築士は、既に懲役5年の実刑が確定し、服役中である。99件もの偽装物件が発覚し、多くの人を不安と困窮に陥れた割には何と軽い刑であろうか。
そもそも建築士といえば、素晴らしいデザイン感覚と数学的能力を要する知識人として社会的地位も高い人のはずであった。事実そういう建築家たちたちも多くいて尊敬される存在であった。したがって、建築士ともあろう人がこんな破廉恥な犯罪を犯していたとは全く信じられないことでもあった。しかし多くの人がだまされ、ホテルを建てた人もマンションを買った人も突然、塗炭の苦しみに追い込まれたのである。
今回の判決では、県側は国が定めたとおりの審査をしているだけで負けるとは思っていなかったとしているが、筆者としては偽装を見逃した建築主事の責任は免れないと思わざるを得ず、今回の判決は妥当なものとみる。
この事件を契機に、建築確認の審査基準を厳しくした改正建築基準法が2007年6月に施行された。また、マンションなどの大規模な集合住宅などの建物について、専門機関が構造計算書を再審査する仕組みを導入、県や民間機関が審査した後、構造計算の専門家によるダブルチェックが行われるようになった。
筆者は、建築確認業務が民間にも移譲されたことはよいとしても、構造計算ぐらいは別な扱いをすべきだと主張していたが、小泉構造改革路線の流れを誰も押しとどめられなかった。そうした反省もなしに、こうした事件の再発防止がどんどん進んでいることにさらなる危惧を感じざるを得ない。
2005年、姉歯秀次元一級建築士が建物の構造計算書を偽造し、地震で倒壊の恐れのあるホテルやマンションが建設、販売された事件から早くも4年が過ぎた。
愛知県では、この偽装によってホテル解体に追い込まれたビジネスホテル「センターワンホテル半田」(愛知県半田市)が、建築確認審査で建設を認めた愛知県などに約5億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が昨日(24日)、名古屋地裁であった。
判決は原告の訴えをほぼ認め、県などに約5700万円の支払いを命じるものであった。全国で同種の訴訟が起されている中での行政の責任を認めた初の司法判断である。
この公判の中で県は『審査対象は建築基準法に書かれたものだけ』と繰り返し、専門家の多くが常識的に疑問に思う耐震性の安全も『審査する部分ではない』と主張し続けた。
しかし判決では、建築主事については「建築の専門家」とした上で、今回の構造設計の中には『常識的に見て明らかに構造が危険なものがあり、建築主事は問題点を認識できたのに放置していた』と厳しく指摘した。ただ、損害については『耐震補強工事でも耐震強度は確保できた』として、建て替えが必要だったとする原告の主張を退け、補強工事の費用などとして計2億5300万円を損害と認定、既に施行業者から弁済されている金額などを差引いた約5700万円の支払いを命じたというものである (2.25付け中日新聞より)。
ところで、一連の耐震偽装事件の張本人である姉歯元建築士は、既に懲役5年の実刑が確定し、服役中である。99件もの偽装物件が発覚し、多くの人を不安と困窮に陥れた割には何と軽い刑であろうか。
そもそも建築士といえば、素晴らしいデザイン感覚と数学的能力を要する知識人として社会的地位も高い人のはずであった。事実そういう建築家たちたちも多くいて尊敬される存在であった。したがって、建築士ともあろう人がこんな破廉恥な犯罪を犯していたとは全く信じられないことでもあった。しかし多くの人がだまされ、ホテルを建てた人もマンションを買った人も突然、塗炭の苦しみに追い込まれたのである。
今回の判決では、県側は国が定めたとおりの審査をしているだけで負けるとは思っていなかったとしているが、筆者としては偽装を見逃した建築主事の責任は免れないと思わざるを得ず、今回の判決は妥当なものとみる。
この事件を契機に、建築確認の審査基準を厳しくした改正建築基準法が2007年6月に施行された。また、マンションなどの大規模な集合住宅などの建物について、専門機関が構造計算書を再審査する仕組みを導入、県や民間機関が審査した後、構造計算の専門家によるダブルチェックが行われるようになった。
筆者は、建築確認業務が民間にも移譲されたことはよいとしても、構造計算ぐらいは別な扱いをすべきだと主張していたが、小泉構造改革路線の流れを誰も押しとどめられなかった。そうした反省もなしに、こうした事件の再発防止がどんどん進んでいることにさらなる危惧を感じざるを得ない。
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