田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

JINRO武と玲加の初恋物語

2014-02-02 11:01:08 | ブログ
2月2日 日曜日
●曇り空。
雪でも降りそうな気配だ。
子どもの頃は雪が楽しみだった。朝起きて一面銀世界になっているのを見るのは、楽しみをとおりこして驚きだった。

●シンガポール陥落は昭和17年2月。
登校の途中弁天池の傍らに、大きな雪だるまがあった。
日章旗が腕のあたりにさしてあった。
大日本帝国が勝利に酔いしれていた。

●長生きしているといろいろな思い出がある。
記憶のなかの日本と現在を比べると悲しくなる。

●いまのような日本の若者を、あるいは文化社会を生み出すために、わたしたちの先輩は散っていった訳ではない。
憤りすら感じる。

●これからどうなるのだろうか。
この風潮は是正されることなく、さらに増長されていくのだろうか。

●個々の事例に沿って、詳細に考えたい。
でも、ブログという公共性を考えて止めにした。

●これはもう……小説だけではなくルポでとらえるべきことだろう。
間口をひろげて、小説のほうが疎かになる不安がある。
だから、これも止め。

●歳を重ねると言うことは、みずからの可能性を伸ばす事が出来なくなる。
寂しいものだ。

●「JINROH武とMV玲加のFIRST LOVE」1月4日に予告編を載せた小説。
いまだに迷いに迷っています。
ともかく妖孤がキャラの小説ですから、何度化けてもいいようなものですが。
苦労しています。
改悪になっていなければいいな。
前回のように出だしの部分を載せます。
ぜひ読んでみてください。
全くかわりました。
まだまだ化けるとおもいます。
書きたいことが山ほどあるのに、こんなことしていていいのでしょうかね。

JINRO武と玲加の初恋物語                                          

PART 1 人狼がでたぁ



ホームセンタ-・カンセキ。園芸品売り場。
美麻(みいま)はバラの鉢を片手に抱え、パラソルをくるくる回しながら前をいく。
学からでは、かなり離れてしまった。バラの新苗を買ってうきうきしているのだろう。ステップも軽やかに歩いている。
学は不安になった。
咲きだしたバラの鉢で両サイドが飾られた小道を学は美麻に追いつこうと走っていた。レジで支払いを済ませた。かなり混んでいた。美麻はさっさと駐車場にもどろうとしていた。
美麻の行く手に、人影が見える。
おかしな老婆だ。
異様な風体だ。
灰色のボロをまとっている。
腰が曲がっている。よたよたと美麻に近寄っていく。
美麻が襲われる。学はそう感じた。不安が的中しようとしている。
まさか、そんなことはあるまい。
美麻の腰のあたりの身長だ。もちろん、腰が曲がり四足歩行のようだからだ。
腰が45度くらいに曲がっている。大地をナメルルようだ。
醜く太っている。
足が0脚に開いている。
ガマガエルでも歩いているようだ。
だがそのまさかが、現実となった。
よたよたと老婆は美麻のそばに近寄る。
老婆が美麻の背後で立ち上がった。
学は走った。「美麻!」大声を上げた。「危ない!」美麻に警告した。
何かいっている。老婆が何かいっている。

老婆から悪意がながれでている。
老婆から邪悪な想念が美麻に放射された。
学は叫びながら美麻に向かって走った。
バラの鉢につまづいた。危うく転がるところだった。
ジャンプした。それでも避けきれなかった。
鉢が大きな音をたてて倒れた。その音に、美麻がこちらを見た。
学は美麻のところに走りよる。
よかった。間に合った。
「バラなんかキライダ。トゲがあるから、バラなんかきらいだ」
老婆がぼそぼそつぶやいている。
 
2

化(か)沼(ぬま)高校の二階。一年B組の教室。見(み)園(その)玲(れい)加(か)が窓から外を見ている。転校生としての挨拶をすませたばかりだ。まだ、教壇に立っている。道路を隔てたホームセンター・カンセキを見ている。
「見園くん。視力は」
担任の五十嵐(いがらし)満男(みつお)がきく。
「2テン0です」玲加は答える。
「後ろから二番目の席、犬飼武の前の席で、いいな」
「武の後ろのほうがいいぞ。前はヤバイよ。武にパイタッチされる」
「研くん。見園さんがこわがるわよ。そんなこといわないで」
「そうだ。クラス委員の洋子くんのいうとおりだ。武を挑発するな」
挑発するなということは、唆されれば――やるのだろうか。
玲加は、武の前の机の上にカバンを置いた。
武には眼で会釈しただけだ。席につかなかった。

3

老婆は美麻に肉迫していた。
立ち上がった老婆はいがいと大きかった。
アゴが美麻に接触した。とは、いかなかった。
美麻が素早く体をひらいた。
噛みつこうとした老婆のアゴをさけた。
「バラなんかきらいだ。トゲがある。トゲがあるから――。バラなんかきらいだ」
呪うような、悪意のこもった音声で老婆くりかえしている。
美麻が当惑したような顔をした。
とりあわないようにという顔を学にした。
「美麻。危ない」
鉤爪もあらわに老婆が美麻の顔に手をのばした。
間にあわない。なぜ、もっとはやく、気づかなかったのだ。美麻と離れてはいけなかったのだ。注意がたりなかった。
女と美麻の間に学はまたジャンプした。
美麻を守るためにジャンプした。
一瞬、まだまだやれる。――という感情がわきあがった。戦場からretireして三年になる。「美麻はこのおれが守る」声にはだせなかった。その言葉は、尻の肉への激痛に消された。ふいに背後からおそわれた。伏兵がいた。あたりは暗くなった。いや濃霧の中にいる。すぐそばに人がいる。そいつが、学の尻に噛みついた。気配をころしていたのだ。
美麻がバラの鉢をかまえている。
「人狼――吸血鬼――BV(ブラック・バンパイア)ね。うちのダーリンに何の恨みがあるの」
「かっこつけるんじゃないよ。九尾族の千年ババァ」
背丈が倍近くなり、脚もたくましくまっすぐにのびていた。
四足歩行にみえていたものが、立ち上がっていた。
老婆だったものは、両眼を赤くひからせている。
獲物を狙う野獣の眼だ。
そのために衣類がはじけていた。
青黒く毛深い膚。
狼の体。
顔はまさに吸血鬼のものだった。
般若に似た顔。
乱杭歯に長い犬歯。
歯を剥いて襲いかかってきた。
〈わたしは全身に若やいだエネルギーが満ちていた。さっきからおかしい。体が柔軟に動く。尻の痛みも消えている。出血もとまった〉
「お、おまえは」
人狼がたじろいだ。空に向かって相図の遠吠え。
「おまえは……わたしたちを見ることができるのか……そんなわけはない。人間のはずだ」
学は人狼吸血鬼BVを見てもさほど怖いとは感じなかった。
想像を絶するほど醜悪な顔だ。でも恐怖は感じなかった。唇からは黄色く濁った涎をたらしていた。遠吠えの相図で、周囲に人狼の群れが忽然と現れた。待ち伏せされていたのだ。
「食らってやる」
眉間には深い二本の縦皺が刻まれていた。目は白濁してぶよぶよながれだしそうだ。
どこに隠していたのか美麻はバラの枝――鞭で打ちかかった。顔面から青い液体がふきだした。いやな臭いがする。まるで膿だ。
「バラのトゲは美しいものを守るためにある。あんたは消えなさい」
「そのことばはそつくりあんたら二人にお返しするぜ。ジャマなんだよ。あんたらが」
おう、痛いぜよ。とバラの鞭でたたかれた傷跡をなめている。
「ヤッテおしまい」
老婆は配下の人狼に声をかけた。人狼の爪がぐいっと、剣のようにのびる。尻は噛みつかれたのではなかった。鉤爪で裂かれたのだ。もう、痛みはない。
ザザッと剣風をともなって切りこんでくる。
「これを、学、使って!」
美麻がパラソルを投げてよこした。
パラソルの芯を抜き放った。仕込みになっている。直(ちょく)刀(とう)があらわれた。
銀色に光っている。その銀色の光りに人狼がタジロイダ。
老婆とともに美麻を襲う人狼に斬りこんだ。斬り捨てた。
恨みの首が薄黒い煙の中に消える。
「さすが、ダーリン。剣道で鍛え、傭兵で鍛えてきただけのことはある」
美麻は人狼をけん制する。大声で学の動きを鼓舞する。敵は学がただののっぽではないことを知る。ただのイケメンではないことを剣風からも察知した。たじろぐ。
「なに、オタついているの。こちらの方が数はおおいのよ」

4

玲加は窓の外が気になる。ただ見下ろしていた訳ではない。異常を感じるセンサが稼働していた。たしかに異様だ。カンセキの広い駐車場に黒い竜巻が発生している。狼煙にみえた。ただの竜巻ではない。円錐状なのだ。仲間を狼が集めるサインでもある。ここは人狼の故郷。敵地だ。
竜巻の底辺から殺気が伝わって来る。
これだったのね。わたしの視線を窓の外に向けさせたのは。ピピピッとわたしの感覚を刺激した……。そうとわかると、玲加は教室をとびたした。廊下を走っていた。
「見園どこへいく」
武の声が背後から追いかけてくる。わたしに嫌われたとでも、思ったのかしら。
「玲加どこへいくのよ」
血相かえてとびだす玲加に何人かのクラスメイトからも声がかかる。
 
美麻のバラの鞭には人(じん)狼(ろう)の肉片がこびりついている。トゲに細かい肉がつきトゲの効果を激減させた。叩かれたくらいでは人狼の固い皮膚はびくともしない。美麻は苦戦している。

長い黒髪が初春の風になびいていた。美しい。玲加の姿は校庭を走っている。校門を出た。黒い竜巻はない。円錐状の異空間がある。煙のなかにいるようだ。飛びこむ。
進路をハバンダ男の首に空手チョップを叩きつける。首がカシグ。折れたかもしれない。手練の業だ。
「ヤッパ、美智子おばさまだぁ。」
「神代寺の歴女クラブの玲加さんじゃないないの」
「一日早く着いたの」
「何おとぼけだぇ。スケットを呼ぶということは、徹底抗戦の気がまえとみたよ、九尾の千年ババァ」
「美智子おばさまのこと……。ババァなんて呼ばないで。許しませんよ」
「まとめて、くらってやんな」
老婆が人狼にゲチをとばす。ザワッと包囲網が狭まる。
「お婆! これは族長の命令なのか」
武が包囲網をかきわけて悠然と現れた。
「だとしたら武、どうだというのだ」
「オヤジの命令だとしても許さないよ」
「なぜだよ」
「見園玲加はぼくのクラスメイトだ。ぼくのそばに座るひとだ」
「それがどうしたのだい」
「ぼくはクラスメイトの玲加とツキアウつもりだ。だから見園を傷つけることは許さない」
「ゲェ、ゲェ。武、それ本気か」
「本気だ」
その叫びを聞くと老婆が蒼白になった。
「ひとまずヒク。あとが怖いからね。覚悟しておくんだね」
美麻に捨て台詞を吐きかけた。
人狼の群れは身をひるがえして、円筒状のバリアの外にジャンプした。黒い風の尾をひいて走り去った。バリアの煙も彼らとともに消えた。
「こんなに早く来てくれるとは思わなかった。そう。玲加ちゃんが来てくれたのね」
玲加を見て美麻がうれしそうだ。
「どうして――あなたとつき合うことになっているの」
玲加が武をにらんでいる。声に先ほどまでの迫力はない。武がタイプらしい。
「ああでもいわなかったら、おばばたちは引かなかった」
玲加は胸の鼓動が高鳴っていた。ドキドキと激しく脈打っている。その音を武にきかれるのではないか。顔までほてってしまった。女系家族に育った。小学校からずっと女子校だ。男の子に声をかけられたことなどない。そして、武は都会の子にない、凛々しさがある。わたしのタイプかも……。



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コメント (2)
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