田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

記者会見(5)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-17 07:48:30 | Weblog
5

「だったら、静かに休むといいわ」
医務室で、なんどもうがいはした。
「水はあとで分析するから」
白衣の看護師が言う。
気をきかしてデスクにもどっていく。

「どういうことなんだ」
自問するように隼人がキリコと並ぶ。
部屋の隅のソファにかける。

「隼人を脅かすのがねらいかもね」
「ぼくはフロリダからきたばかりだ。
だれがぼくの到着を知っているというのだ」

隼人は辺りを気にしている。声を低める。
看護師はすこし離れた処にいる。
声は聞こえていないはずだ。
それでも、さらに声を低める。

「おこらないで。あくまでもアタシの考えよ。
だって、美智子さんと一緒にいて。
事故死したのは直人でしょう。
こんどだって、美智子さんに怪我はない。
あくまで隼人にたいする警告とみたらどうなの。
おれたちは、おまえさんの存在に気づいている」

隼人はさらに声をひくめる。
いままで、美智子さんの周辺でなにも起きなかった。
盗聴器で身辺はたえず見張られていた。
それでもなにも起きなかった。
それなのに、ぼくがきたとたんに……。
辺りに警戒の視線をむける。
キリコの耳もとでささやく。

「そうか、おれの任務がもれている。
そういうことか。
FBIかフロリダ警察に内通者がいる。
麻薬シンジケートから汚い金をうけとっているやつがいる」
「わたし兄貴に連絡してくる」

「直人の夢を見ていた。
あんなに夢でもいいから。
会いたいと思っていた直人の夢見た」
美智子はすがるような眼差しをしている。
隼人をじっとみている。
直人のことをおもいだとている。
水に何が混入されていたのか。
美智子が狙われているのか。
いまのところはなにもわかっていない。
美智子の顔色は平常にもどっている。 
美智子がベッドでつぶやいている。

「直人の夢みたわ」
記者たちの声が廊下でする。
背後でシャッターをきられながら。
キリコがすばやく部屋にもどってくる。
「隼人が直人に似ていることに気づいたひとがいるみたい。
美智子さんのモト彼が生きていた。なんていってる。
ヤバいよ。どうする」
「どうします」



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