田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-04-25 06:45:44 | Weblog
4月25日
吸血鬼/浜辺の少女15 (小説)
 盛り上がった芝生の筋が雨野めがけて収斂する。青々とよくのびた芝生がそそけだち、なんぼんもの筋があきらかに雨野の足元めがけて集まってきた。
地下からモグラのような生物が攻撃をかけてきた。
雨野が隠し持った幅広の剣を大地につきたてた。
バンと青白い炎が剣をつきたてた大地で炸裂した。
衝撃音が窓ガラスをこなごなに破壊した。
「念波アタックよ。わたしたちの防御バリアが破られたわ」
 とても信じられないことだが絵は完成していた。キャンパスの夏子をみるために現実の夏子が隼人のそばによりそった。「なかなかのできね」隼人の作品を見て夏子はつぶやく。  
ふたりはかたくだきあった。
絵の出来栄えを祝してふたりはかたくだきあった。
はげしくもえるようなキスをかわした。
「いくわよ!」
凛としたひびき。
夏子の気魄のこもった声だ。
隼人は絵筆を木刀にかえて夏子の後を追った。
夏子が念じる。お経のようにも聞こえる。陰陽師の呪詛のような念動力をひめたものだった。割れてちらばっていたガラスの破片が人型にうごめくものたちにむかって射こまれた。鋭角にとがった破片が雨野をおそおうとしている人型をヒットした。光にきらめきながら、無数の破片が人型を攻撃する。
 そこに声がする。破片は四散する。はねかえされる。むなしく大地におちる。
「あいかわらず、勇ましいことだ。白っこ娘。おれの従者がせわになったな」
「その呼びかたは、やめてほしいわ。鹿人お兄さま」
 空気が冷えた。肌寒かった。隼人は土埃のなかにいた。その目前で人型が具体性をおびてきた。
 どこといってかわったところはない。背のすらりとした、やせ形の若者の姿になった。チェックのシャツをダメージGパンの上にだらしなくだしている。背後には鬼島と田村がひかえている。そして、ああ、爬虫類の肌をした異形のものたち。
「夏子となのっているのだったな。妹よ、おまえはラミア、もどってきてはいけなかったのだ」
「兄さんこそ、なにをやろうとしているの。わたしをおそうなんて、あいかわらずいじめっ子ね。卑劣だわ。どこまでわたしをいたぶったら気がすむの。ごていねいなお出迎えありがとう」
「この鹿沼を支配したものが日本を統べることになるのだ。この県を統括することが日本を束ねることになるのだ。故郷を留守にしていたラミアはしらないのだ。近い将来、那須に首都機能が移転されることになるだろう」
「だから? だからそれがどうしたというの」
「わからないのか。この土地を手中におさめることが、日本を支配する。おれは闇の帝王になれるのだ」
「かわっていないのね。鹿人兄さん。兄さんは、人間を支配することばかり考えている。共に生きる道があるというのに」
「むだだったな。世界を遍路したことがなんにもなっていないのだ」
「わたしは故郷鹿沼の土の寝床でしばらく眠りたいだけなのに」
「嘘だな。なにを企てている」

コメント
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