田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女         麻屋与志夫

2008-04-22 22:11:24 | Weblog
4月21日 月曜日
吸血鬼/浜辺の少女 12 (小説)
「重そうですね。もってあげましょう」
 ふいに荷物をうばわれた。キョトンとしている。口をぱくぱくさせている。声はだせない。女は高野をみただけでふるえている。たのしい。女は泣きだしている。恐怖にすくんでいる。たのしい。
「こわがらなくていいから」
 高野はたのしんでいる。
 女は両足の間から湯気をたてている。失禁してしまった。
「こわがらなくていいから」
 高野は女をかかえて駐車場の隅の暗闇に誘う。だれにも見られていない。女はおびえている。逆らう気力もない。高野は女をひきよせた。腕の動脈にかぶりと噛みついた。
 それでも、喉の渇きはいやされない。高野は河川敷を歩きだした。捕食する獲物をさがす。すぐに目に入った。高校生が川に面した木製のベンチでいちゃついている。
「コンバンハ」
 声をかけても夢中でキスしているので気づかない。高野はカブっと少女の襟首に噛みついた。少女は悲鳴をあげた。断末魔の悲鳴だ。
 楔のようにのびた犬歯を首筋に深く打ちこんだ。ドクっと血があふれる。いっきに吸血行為にはげむ。新鮮でうまい。少年が健気にも高野につかみかかってきた。
 高野の腕のひと振りで少年は流れの中央まではねとばされる。なみの膂力ではない。おれはまちがいなくパワーアップしている。
 少女の血はうまい。おびただしい血。少女の血が高野の喉に流れこむ。闇の中で血は香ばしい匂いをたてている。この先ももと大量の血をのみつづけたい。少女は血をすわれながらあえいでいる。
 まさにバンパイァとなった。
 おれはもう夜の一族だ。バンパイァだ。

5

隼人がめざすのは<赤い蔦>の邸宅だつた。
 壁にはった蔦の葉は赤かった。壁は白煉瓦。隼人は昨夜夏子を送りつけた家にたどりついた。夏子とわかれぎわに唇をあわせた。身も心もとろけるように陶酔した。

コメント
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