武光誠氏著『日本の神々の謎』( 平成4年刊 大和書房)を、読み終えました。
何度読んでも、日本の神話は、なかなか理解できません。難解というのではなく、神々の名前が無数に現れ、その読み方が簡単でなく、漢字を見ても読めないところに原因の一つがあります。
天御中主尊 ( あまのみなかぬしのみこと ) 、高皇産霊尊 ( たかみむすひのみこと ) 、可美葦牙彦舅尊 ( うましあしかげひこじのみこと ) 、国常立尊 ( くにのとこたちのみこと) など、漢字を知っていても読めません。
さすがに私も、息子たちに日本の神話を読みなさいと、気楽に勧める気持ちにはなれません。今から2年前の平成28年に、叔父の遺品としてもらった蔵書で、神話に関するものを4冊読んでいます。
1. 安達巌氏著「出雲大神と日本建国」( 平成6年刊 新泉社 )
2. 安達巌氏著「出雲王朝は実在した」( 平成8年刊 新泉社 )
3. 山崎謙氏著「出雲大社の謎」( 平成6年刊 (株)ディーエイチシー)
4. 戸部民夫氏著「日本の神様が、よくわかる本」( 平成16年刊 PHP文庫 )
安達氏と山崎氏の神話の読み方は、大和朝廷に対峙するものとして、出雲王朝を大きく取り上げているところに共通点があります。どういう偶然なのか、二人は古代の日本を二分していたのは、大和朝廷と出雲王朝だと語ります。
出雲の神様の分布は、山陰地方だけでなく、奈良、京都、長野県の諏訪にまで広がり、大きな勢力だったことが説明されます。有名な国譲り物語も、実際の話は、大和朝廷が出雲国を武力で攻め、大国主命を殺害していると、山崎氏は史実をあげ、説明していました。私の常識を覆す激しい神話の解釈に、戸惑いすら覚えました。
例を挙げますと、安達氏による国譲りの説明は、次のようなものでした。
「もしオオクニヌシが全国に分散している、傘下の国つ神に呼びかけ、徹底抗戦の道を歩んだならば両者がその国力を消耗し尽くし、朝鮮半島の諸国に、漁夫の利を得さしめることに、なったであろう。」
「勝海舟と西郷隆盛が、相互信頼の上に立ち、平和裡に江戸城を授受し、日本の近代的出発の糸口を開いたという、あの劇的場面に似ている。」
神話の体系や歴史を、近隣諸国との関係で語るなど、今回読んだ本の中では、武光氏の著作が一番オーソドックスでした。オーソドックスというのは、正統的、学問的という意味ですから、簡単に言いますと、一番わかりにくく、退屈だったということです。親子、兄弟、親類縁者の神様が、ややこしい名前で、続出しますので、途中で投げ出したくなるほどの煩雑さでした。
「日本の神々を記した、日本神話は、」「きわめて複雑な構成をとっている。」「宇宙の初めを説明する神話が、三個の系統に分かれているのである。」「それぞれを、天御中主尊 ( あまのみなかぬしのみこと )系統 、」「可美葦牙彦舅尊 ( うましあしかげひこじのみこと ) の系統、」「国常立尊 ( くにのとこたちのみこと)系統と、名付けておこう。」
天皇家の神は「天照大神」で、これが最高の神なのですが、氏の説明を読みますと、「天照大神」の前に、25以上の神様が先行いたします。
天界から、固まらないどろどろの下界を、矛でかき回し、落ちた雫が日本の島々になりました。下界をかき回し、日本を作った神は、伊奘冉命 ( いざなみのみこと) 、伊弉諾命 ( いざなぎのみこと ) と呼ばれます。この神様が最初かと思っていましたのに、神話ではやっと20番目に現れる神様です。
この男女神は、天照大神の親であると言われますが、名前だけでは、とちらが男の神か女の神か区別がつきません。二人は、日本の島々を生むだけでなく、その他にも、24柱の神様を生んでいます。もっと分かりにくいのは、天照大神は、女神である伊弉冉尊 ( いざなみのみこと)が亡くなり、黄泉の国へと消えた後、男神である伊弉諾命 ( いざなぎのみこと ) が生んでいるところです。いくら神話の世界の話とはいえ、私の常識は苦悶いたします。
同じ出雲王国を扱いながら、先に読んだ安達氏や山崎氏と、武光氏の説明は肝心な所で違っています。どちらがが正しいかのは不明ですが、分かることが一つだけありました。「古代史は今も謎のままであり、研究者の解釈次第でどうにでも変化する状況にある。」と、簡単に言えばこういう結論です。
「古代史の謎と、ロマンの世界へ」と、神話好きな人間ならそう言うのでしょうが、私は違います。一人の国民、学徒として、天皇家の歴史が知りたいだけなのです。神話好きでない方は、しばらくお休みください。貴重な時間を、退屈するために使うのはもったいないことです。
時宜を得たテ-マだとおもいます。
古事記や日本書紀の物語は、私たち日本人の誇りであり、民族のロマンです。
このテ-マのブログに期待しております。
もう誰にも読まれないはずと、思いながら、神話の世界へと足を踏み入れました。
私はまだ、「日本人の誇り」という境地には達していません。市井の学徒として、学ぶのみです。それにしましても、貴方は、興味深い方です。
こんばんは
ねこ庭流の古代史解釈に今から期待が膨らみます
武光氏の著作も所蔵していますが、なかなか正統でありながら、鋭い着眼点を持っておられる作者だと思います
古代史はパーツを失ったジグソーパズル
百人居れば百通りの説があってよいと考えます
懐かしいコメントです。お元気でしたか。
私もいつまで、続ける元気があるのか、そんな日々です。武光氏の書をあなたもお持ちでしたか。
この方は、学問的には正統派ですが、いわゆる保守の学者ではありませんね。客観的叙述は、私には違和感がありませんが、保守の学者には、抵抗があるような気がいたします。
でも武光氏のおかげで、神話について、冷静な見方を、教えられたような気がしております。
どうか、気が向きましたら、私の「ねこ庭」にも、またお立ち寄りください。