ねこ庭の独り言

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日本の神々の謎 ( 大和朝廷と出雲王国 )

2018-10-22 18:10:18 | 徒然の記

   武光誠氏著『日本の神々の謎』( 平成4年刊 大和書房)を、読み終えました。

 何度読んでも、日本の神話は、なかなか理解できません。難解というのではなく、神々の名前が無数に現れ、その読み方が簡単でなく、漢字を見ても読めないところに原因の一つがあります。

 天御中主尊 ( あまのみなかぬしのみこと ) 、高皇産霊尊 ( たかみむすひのみこと ) 、可美葦牙彦舅尊 ( うましあしかげひこじのみこと ) 、国常立尊 (  くにのとこたちのみこと) など、漢字を知っていても読めません。

 さすがに私も、息子たちに日本の神話を読みなさいと、気楽に勧める気持ちにはなれません。今から2年前の平成28年に、叔父の遺品としてもらった蔵書で、神話に関するものを4冊読んでいます。

  1. 安達巌氏著「出雲大神と日本建国」( 平成6年刊 新泉社 )

  2. 安達巌氏著「出雲王朝は実在した」( 平成8年刊 新泉社 )

  3. 山崎謙氏著「出雲大社の謎」( 平成6年刊 (株)ディーエイチシー)

  4. 戸部民夫氏著「日本の神様が、よくわかる本」( 平成16年刊 PHP文庫 )

  どの本も、読みづらい漢字の神々に悩まされ、難渋しました。ここでちょっと、今回の本も含め、著者の略歴を比較すれば、何かの糸口が掴めるのかもしれません。
 
 1. 安達巌氏  ( 日本の食品業者、食物史家、古代史家 )
   明治39年、島根県松江氏の農家に生まれる。旧制中学校を中退し、大阪、東京へと移り、農民運動、社会運動、協同組合運動の活動をする。戦後は製パン業を始め、あけぼのパン常務、中村屋顧問、業界団体の幹部をへて著述業。日本人の食生活についての評論、食物史から、古代史まで多くの著作をなした。
 
  2. 山崎謙氏
   昭和26年、徳島県生まれ。明治大学文学部考古学専攻。出版社勤務後、 昭和55年に独立。以降、主に古代史を中心と した出版物の企画・編集・執筆に携わる。
 
 3. 戸部民生氏
    経歴情報なし。
 
 4. 武光誠氏  ( 日本の歴史学者、目明治学院大学教授 )
    昭和25年、山口県生まれ。東京大学大学院国史学専攻。昭和55年頃から明治学院大学に勤務。「古代太政官制の研究」により博士号を取得。
 

 安達氏と山崎氏の神話の読み方は、大和朝廷に対峙するものとして、出雲王朝を大きく取り上げているところに共通点があります。どういう偶然なのか、二人は古代の日本を二分していたのは、大和朝廷と出雲王朝だと語ります。

 出雲の神様の分布は、山陰地方だけでなく、奈良、京都、長野県の諏訪にまで広がり、大きな勢力だったことが説明されます。有名な国譲り物語も、実際の話は、大和朝廷が出雲国を武力で攻め、大国主命を殺害していると、山崎氏は史実をあげ、説明していました。私の常識を覆す激しい神話の解釈に、戸惑いすら覚えました。

 例を挙げますと、安達氏による国譲りの説明は、次のようなものでした。

 「もしオオクニヌシが全国に分散している、傘下の国つ神に呼びかけ、徹底抗戦の道を歩んだならば両者がその国力を消耗し尽くし、朝鮮半島の諸国に、漁夫の利を得さしめることに、なったであろう。」

 「勝海舟と西郷隆盛が、相互信頼の上に立ち、平和裡に江戸城を授受し、日本の近代的出発の糸口を開いたという、あの劇的場面に似ている。」

  それまでの私は、全国の神社は、天照大神 ( あまてらすおおみかみ ) を頂点とする、八百万 ( やおよろず ) の神々が、古代より連綿と一本につながっていると信じていました。しかし安達・山崎氏の氏の説に従いますと、古代の日本には、大和朝廷と出雲王国が覇を競っていたことになります。
 
 当時の出雲王国は日本海を通じて、北陸地方、北九州、さらには朝鮮半島とも繋がりを持つ、巨大な一大勢力だったと言います。何より驚かされるのは、大和地方が、大和朝廷より先に、出雲王国の支配地であったという説でした。
 
 それに比べますと、戸部氏の著書は、「全国の名物食べ歩き」のような通俗本で、私には無縁な本でした。日本の歴史や、神話の世界など、そのようなことは何も語らず、「金儲けの神様は、どこにあるのか。」「恋人と結びつけてくれる神様のいる場所。」などと、人間の欲望に合わせ、神様の所在地を案内する本でした。

 神話の体系や歴史を、近隣諸国との関係で語るなど、今回読んだ本の中では、武光氏の著作が一番オーソドックスでした。オーソドックスというのは、正統的、学問的という意味ですから、簡単に言いますと、一番わかりにくく、退屈だったということです。親子、兄弟、親類縁者の神様が、ややこしい名前で、続出しますので、途中で投げ出したくなるほどの煩雑さでした。

 「日本の神々を記した、日本神話は、」「きわめて複雑な構成をとっている。」「宇宙の初めを説明する神話が、三個の系統に分かれているのである。」「それぞれを、天御中主尊 ( あまのみなかぬしのみこと )系統 、」「可美葦牙彦舅尊 ( うましあしかげひこじのみこと ) の系統、」「国常立尊 (  くにのとこたちのみこと)系統と、名付けておこう。」

 天皇家の神は「天照大神」で、これが最高の神なのですが、氏の説明を読みますと、「天照大神」の前に、25以上の神様が先行いたします。

 天界から、固まらないどろどろの下界を、矛でかき回し、落ちた雫が日本の島々になりました。下界をかき回し、日本を作った神は、伊奘冉命 ( いざなみのみこと) 、伊弉諾命 ( いざなぎのみこと ) と呼ばれます。この神様が最初かと思っていましたのに、神話ではやっと20番目に現れる神様です。

 この男女神は、天照大神の親であると言われますが、名前だけでは、とちらが男の神か女の神か区別がつきません。二人は、日本の島々を生むだけでなく、その他にも、24柱の神様を生んでいます。もっと分かりにくいのは、天照大神は、女神である伊弉冉尊 ( いざなみのみこと)が亡くなり、黄泉の国へと消えた後、男神である伊弉諾命 ( いざなぎのみこと ) が生んでいるところです。いくら神話の世界の話とはいえ、私の常識は苦悶いたします。

  同じ出雲王国を扱いながら、先に読んだ安達氏や山崎氏と、武光氏の説明は肝心な所で違っています。どちらがが正しいかのは不明ですが、分かることが一つだけありました。「古代史は今も謎のままであり、研究者の解釈次第でどうにでも変化する状況にある。」と、簡単に言えばこういう結論です。

 「古代史の謎と、ロマンの世界へ」と、神話好きな人間ならそう言うのでしょうが、私は違います。一人の国民、学徒として、天皇家の歴史が知りたいだけなのです。神話好きでない方は、しばらくお休みください。貴重な時間を、退屈するために使うのはもったいないことです。

コメント (4)
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