音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■5月12日の Chopin が見た平均律アナリーゼ講座は、18番と 「幻想ポロネーズ」■

2014-05-09 23:42:20 | ■私のアナリーゼ講座■

■5月12日の Chopin が見た平均律アナリーゼ講座は、18番と 「幻想ポロネーズ」■
~ 私の「Suite für Violoncello Solo Nr.2 」 の出版作業が、大詰め ~
               2014.5.9    中村洋子





★五月になりました。

街も山も川も人も、新緑と薫風に包まれています。

美しい日本を、実感します。


★私の 「 Suite für Violoncello Solo Nr.2 無伴奏チェロ組曲 第 2番 」

の、
出版作業が、大詰めを迎えています。
 
Berlin の ≪ Ries & Erler リース&エアラー(エルラー) ≫ 社では、いま

Editor エディターの Thomas Schwalbe トマス シュヴァルベ さんが、

編集作業を、精力的になさって下さっています。


★「 第 2番 」 の、CD録音をして頂きました

Prof. Wolfgang Boettcher 
ヴォルフガング・ベッチャー先生が、

bowing ボウイングと fingering
フィンガリングなどの、

書き込み  Spieltechn.Einrichtung を、
私の手書譜に、

詳細に、書き込んで下さいました。

それを基に、cellist チェリストでもある、 Schwalbe さんが、

入念に、土台となる “ 楽譜 ” を作ります。


その “ 素楽譜 ” を、作曲家、演奏者、編集者の三者で、

何度も何度も見直し、各々が描いていたニュアンスや、

表情、速度などの細かい点で、

齟齬があれば直ぐに、三者で協議します。

少しづつ、最善の楽譜に仕上げていく作業が続いています。

そのためには、避けて通れない、長時間の、

とても疲れる作業です。

しかし、心地よい疲労でもあり、

共同作業の楽しさを、
味わっています。






★≪ Ries & Erler リース&エアラー ≫ 社は、

最近、このブログで、取り上げています、

 Wilhelm Furtwängler ヴィルヘルム・フルトヴェングラー

(1886 - 1954
)の、
作曲した作品も、出版しています。


★私の 「 Suite für Violoncello  Solo  Nr. 1、3

 無伴奏チェロ組曲  1、3番 」、

「 チェロ二重奏 10 Duette für  2 Violoncelli  」 も、既に、

≪ Ries & Erler ≫ 社から出ており、 「 Nr.2 」 で、

4冊目となります。


★また、5月 22日には、ドイツで私の Piano Solo

ピアノ独奏曲 4作品を、

演奏して頂く事になり、先月まで、その推敲で忙しい毎日でした


★作曲家の、何度にもわたる 「 推敲 」 、

その結果としての作品の 「 改訂 」 、

そして、その作品が出版されます際の、

更なる 「 改訂 」 などにつきましては、

避けて通れない問題として、Chopin を例に、

当ブログでも、よく取り上げています。







5月12日 ( 月 ) には、 KAWAI 横浜 「 みなとみらい 」 で、

Chopin が見た 「 Bach 平均律第1巻 アナリーゼ講座 」 を、

開催します。

今回は、 「 18番 gis-Moll 」 です。


★KAWAI 表参道で、この曲を取り上げました時は、

Chopinが所持し、書き込みをしていた

「 Das Wohltemperirte Clavier Ⅰ」 の、

ファクシミリ楽譜は、まだ、出版されていませんでした。

★今回、 Chopin の書き込んだ Fingering や記号を検討しましたところ、

表参道でのアナリーゼ講座で、

私の分析を基にして、お話しました事と、同様な見方を、

Chopin もしているように感じられ、嬉しくなりました。


★一例を挙げますと、18番前奏曲 Praeludium 

10小節目 bassバス声部、
1拍目 付点四分音符  「 gis 」 は、

続く 16分音符  「 gis 」 と、
tie タイで、結ばれています

その後、さらに、16分音符の  「 gis - fis - eis - dis - cisis 」 が、

続きます。

その 「 fis - eis 」 に、 Chopin は鉛筆で Fingering を、

書き込んでいます。


数字が小さく、読み難いのですが、 「 3、 3 」 と、

「 3 」 が、 2回続くように見えます。

その 「 3、 3 」 の数字の上を覆うような格好で、

半円形の丸カッコが、描かれています。

この 「 3 」 の指を、ずらしながら弾いたのかもしれません









★明らかに、この 「 fis - eis 」 は、続く 11小節め右手上声、

付点四分音符 「 fis1-eis1 」 ( 1点嬰ヘ音、1点嬰ホ音 ) と、

対応しています。

10小節目の 「 fis - eis 」 から見ますと、

11小節目の 「 fis1-eis1 」 は、拡大カノン Kanon

ともいえます。


Chopinが、そこに注目しましたのは、

間違いないと思われるのですが、
それだけでは、ありません。

この 2音が、10小節目の 1小節前の 9小節目左手内声 Tenor声部、

第 1拍 「 gis 」 に付けました Fingering の 「 3 」 と、

共に考えますと、

Chopinがこの曲をどうとらえ、彼の作品に “ 劇的に ” 、

取り入れて行ったかが、解ってくるのです。


★12日の講座では、その点につきまして、詳しくお話し、

それと Chopinの 「 Polonaise-Fantasie Op.61 幻想ポロネーズ 」

との、
関連についても、分かりやすく、

ご説明いたします。





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■ショパンが見た 「 平均律クラヴィーア曲集 」 ・アナリーゼ講座
    第 18回 平均律  第 1巻  18番 「 gis-Moll 」
●Chopinは、平均律1巻18番を学び尽くして 「幻想ポロネーズ」 を完成
         ~ 最終曲 24番に向けて、歩み始める18番 ~
■日  時 : 2014年 5月 12日 (月)午前 10 時 00分 ~ 12 時 30分
■会  場 :  カワイミュージックスクールみなとみらい        
          横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
         ( みなとみらい駅『出口 1番』出て目の前の高層ビル 3F )
■予約         Tel.045-261-7323 横浜事務所

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★Bach の 「 平均律クラヴィーア曲集 1巻 18番 」  Preludeは、わずか 29小節です。
一見、単純な 「 3声 」 に見えるため、侮ったように 「 3声のインヴェンション 」 と、
あっさり片付けている解説書が、流布しているようです。
しかし、そうではありません。そのような解説書は、「 インヴェンション 」 も、
理解していないといえます。

★通常ですと、 17番が 変イ長調  As-Dur であるため、18番は 「 変イ短調  as-Moll 」
となるはずです。しかし、バッハは、 異名同音調である 「 嬰ト短調 ( gis-Moll ) 」 と、
しました。 なぜ、バッハがそのようにしたのでしょうか?

★それを、徹底的に考え抜き、自分の作品に反映させたのが、Frederic  Chopin ショパン
なのです。Chopin が、18番 Prelude に書き込んだごくわずかな Fingering が、
この曲を理解するうえで、極めて重要なカギとなります。

★ ショパンの 「 幻想ポロネーズ POLONAISE-FANTASIE Opus.61 」(1845~46 ) は、
 「 As-Dur 」  の調号をもつ曲ですが、 17小節目で早くも、異名同音同主短調の
「 gis-Moll 」 に、転調します。これは、≪ バッハの手法 ≫ です。
ショパンは、実に 1年半もの長い期間をかけて、この曲を、作っています。

★平均律 1巻の 17、 18番 は、motif を共有し、お互いに “ 見つめ合って ” います 。
そして、この曲が目指していくのは、最後の、感動的な 「 24番 h-Moll 」 なのです。 
「 幻想ポロネーズ 」 も、 132小節目から、  「 h-Moll 」 に、転調しています。

★ショパンは、18番から調の関係だけでなく、和声についても深く学び、
それをさらに発展させた “ バッハ由来の和声 ” を、見事に 「 幻想ポロネーズ 」 に、
散りばめています。真のショパンを演奏する “ 近道 ” は、バッハを、学ぶことです。








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■講師: 中村 洋子   Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年 :自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠 Wolfgang Boettcher ヴォルフガン
     グ・ベッチャー氏が演奏した CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年 :CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年:「 Open lecture on Bach Inventionen  und  Sinfonien Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全15回をKAWAI   表参道で開催。
09年:「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」を ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
      「 Suite Nr.2 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 2番 」が、W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイムで、初演される。
10~12年: 「 Open lecture on Bach Wohltemperirte Clavier ⅠAnalysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
      全 24回をKAWAI 表参道で開催。
10年:CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』Wolfgang Boettcher 演奏を発表。「 Regenbogen-Cellotrios
虹のチェロ三重奏曲集 」を、ドイツ・ドルトムントのハウケハック社Musikverlag Hauke Hack Dortmund  から出版。
11年:「10 Duette für 2 Violoncelli チェロ二重奏のための 10の曲集 」をベルリン・リース&エアラー社「Ries & Erler Berlin 」から出版。
12年:「Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)  チェロ四重奏のための10のファンタジー(第 1巻、1~5番)」を、Musikverlag
Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年:CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 fur Violoncello  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 fur Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、自作品が演奏される。

★上記の楽譜とCDは、「カワイ・表参道」http://shop.kawai.co.jp/omotesando/

 「アカデミア・ミュージック 」
https://www.academia-music.com/ で
 販売中。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

disk Union、全国の主要CDショップや amazon でも、

ご注文できます

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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