音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■19番の対位法 を素直に応用したのが 、Beethoven のピアノソナタ Op.110■

2014-05-16 01:38:20 | ■私のアナリーゼ講座■

■19番の対位法 を素直に応用したのが 、Beethoven のピアノソナタ Op.101 ■
~第19回 Chopin が見た「平均律アナリーゼ講座」は、第1巻 第 19番 A-Dur ~

~ TOBEL版「 無伴奏チェロ組曲 」は、Casalsのレッスン内容を記載~
           2014.5.16      中村洋子







★5月12日に開催しました KAWAI 「 みなとみらい 」  での、

Chopin が見た 「 平均律アナリーゼ講座 」 は、以前に、

表参道で開催しました第 1巻の講座内容と比べ、

り一層、深い内容になっていることに、

自分でも、驚いています。

それは、現在、表参道で 「 平均律クラヴィーア曲集 第 2巻」 の、

アナリーゼ講座を続けており、その第 2巻の研究成果が、

反映されているからです。


★Bach の勉強を続けることは、

 “ 果てしなく、終わることがない旅である ”

と言うことができると、思います。

もし、あるところで、歩みを止めてしまいますと、

そこで、自分の音楽も終わる、ということなのかもしれません。


★毎日毎日、 Bach を演奏し、日ごと新しい発見をしたであろう

Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) は、遂に、

自身の手になる ≪  Bach 無伴奏チェロ組曲校訂版 ≫ を、

作りませんでした。


★そのようなお話を、講座でいたしましたところ、

感想用紙に、「 カザルス版はあるようです 」 と、書かれた方が

いらっしゃいました。

 

 


★それは、 Rudolf von Tobel が編集した 「 Johann Sebastian Bach

6 Suites a Violoncello  Solo senza Basso  Bwv 1007-1012 」

According to intepretations of Pablo Casals edited with commentary

by Rudolf von Tobel   Carus-Verlag, Stuttgart - CV24.062

を、指されているのでしょう。


Casalsは、1952~65年まで、スイスの Zermatt ツェルマットで、

チェロの master classes マスタークラスを開催しました。

そこで、助手を務めていた Rudolf von Tobel  (1903-1995) が、

Casals の教授内容を、記録していました。

Casals が生徒に対し、よく言っていた 「 シンプルで自然に弾きなさい 」、

「 低いポジションを保ったほうが、よりいい音になる 」、

「 開放弦を使うことを避けないで 」 などの教えを、

注釈として加えた楽譜を、Tobel が作りました。


★Tobel によりますと、

Casalsは、友人のチェリストや編集者から、

何度も何度も、Casals版 「 無伴奏チェロ組曲 」 を作るよう、

薦められたそうです

しかし、Casalsにとって、それは幾つかの理由で、

不可能な仕事のようであった、そうです。


第一に、彼は生涯を通して、絶えず、

よりよい Bach 解釈を、求め続けていた。

第二に、チェリストが、Casals の Fingering を理解しない

のではないかと、危惧していた。

その Fingering の目的は、多数あるがなかんずく、

最高の relaxation リラクゼーションを目指すことにある。

しかし、それは批判を浴びる結果になるであろうと、彼は思っていた。

第三に、 Bach が要求する、無数にある accents アクセントや、

nuances ニュアンスを書き記すことは、ほとんど不可能であると、

Casalsは、信じていた。


そのような理由で、Casalsは、自身の版を創りませんでした。

Bach を、毎日勉強し、追及すると、解釈は留まるものではなく、

絶えず、変わっていくものなのです。

真摯な探求者であればあるほど、≪これが決定的解釈である≫、

というものを、打ち出せなくなるのです。

 

 


次回  「 KAWAI 横浜みなとみらい 」 での、

Chopinが見た 「 Bach 平均律アナリーゼ講座 」 は、

平均律 第 1巻  「 第 19番 A-Dur イ長調 」 です。


19番の prelude は、三つの主題をもつ

「 triple counterpoint 三重対位法 」 ですが、

見方を変えますと、半音階と四度跳躍音程から成る 「 対主題 Ⅰ 」 と、

掛留音 suspention を特徴とする 「 対主題 Ⅱ 」 を従えた、

「 Fuga 」 と、みることもできます。


★ Bach は、平均律第 1巻 の 7番 Es-Dur prelude でも、

重厚なフーガを展開しましたが、この19番は、高度な技法を用いながら、

なんとも軽やかで、優美。

無垢な子供が口ずさむ、歌のようです。

 

 


この素晴らしい技法を、自家薬籠のものとしたのが、Beethoven です。

講座では、「 Klaviersonate  Op. 101  A-Dur 」  の自筆譜を参照しながら、

彼が、 Bach  から学びとったものを、お話いたします。


19番フーガ fuga の主題は、4度音程での zigzgging subject 

ジグザグ進行です。

Beethoven は、この 「 四度音程 」 の意味を、

「 ピアノソナタ  31番 Op. 110 」 で、解明しています。

 
★「 四度音程 」 の意味、とは ?

≪ 四度が 「 調性 」 のなかで、どのような役割を果たしているか ≫

ということです。


★Prelude には、ショパンの書き込みはありません。

Fuga には、主題の冒頭に 「 × 印 」  を記入していますが、

3小節目の上声部分にのみ、 「 □ 印 」  が記入されています。

この 「 □ 印 」  は、次の 20番 Fugaで多用されています。

なぜ一ヶ所だけ 「 □ 印 」  を記入したのか、

Chopinの深い意図を、探ります。

 

 

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■ 講 師:  中村 洋子
■日  時 : 2014年 6月 16日 (月) 午前 10 時 00分 ~ 12 時 30分
■会  場 : KAWAI ミュージックスクール みなとみらい       
        横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
      ( みなとみらい駅 『 出口 1番 』 出て、目の前の高層ビル3F )
■予約 : Tel.045-261-7323 横浜事務所
      Tel.045-227-1051 みなとみらい直通

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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。

日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

 2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

 07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。


 08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。


 08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。


 09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

 

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

 

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

 

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

 

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

 

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

 

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 ★上記の楽譜とCDは
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/  

「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
 販売中。



 

★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

disk Union クラシック館で、第1~6番を購入できます。

 

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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