■19番の対位法 を素直に応用したのが 、Beethoven のピアノソナタ Op.101 ■
~第19回 Chopin が見た「平均律アナリーゼ講座」は、第1巻 第 19番 A-Dur ~
~ TOBEL版「 無伴奏チェロ組曲 」は、Casalsのレッスン内容を記載~
2014.5.16 中村洋子
★5月12日に開催しました KAWAI 「 みなとみらい 」 での、
Chopin が見た 「 平均律アナリーゼ講座 」 は、以前に、
表参道で開催しました第 1巻の講座内容と比べ、
より一層、深い内容になっていることに、
自分でも、驚いています。
それは、現在、表参道で 「 平均律クラヴィーア曲集 第 2巻」 の、
アナリーゼ講座を続けており、その第 2巻の研究成果が、
反映されているからです。
★Bach の勉強を続けることは、
“ 果てしなく、終わることがない旅である ” 、
と言うことができると、思います。
もし、あるところで、歩みを止めてしまいますと、
そこで、自分の音楽も終わる、ということなのかもしれません。
★毎日毎日、 Bach を演奏し、日ごと新しい発見をしたであろう
Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973) は、遂に、
自身の手になる ≪ Bach 無伴奏チェロ組曲校訂版 ≫ を、
作りませんでした。
★そのようなお話を、講座でいたしましたところ、
感想用紙に、「 カザルス版はあるようです 」 と、書かれた方が
いらっしゃいました。
★それは、 Rudolf von Tobel が編集した 「 Johann Sebastian Bach
6 Suites a Violoncello Solo senza Basso Bwv 1007-1012 」
According to intepretations of Pablo Casals edited with commentary
by Rudolf von Tobel Carus-Verlag, Stuttgart - CV24.062
を、指されているのでしょう。
★Casalsは、1952~65年まで、スイスの Zermatt ツェルマットで、
チェロの master classes マスタークラスを開催しました。
そこで、助手を務めていた Rudolf von Tobel (1903-1995) が、
Casals の教授内容を、記録していました。
Casals が生徒に対し、よく言っていた 「 シンプルで自然に弾きなさい 」、
「 低いポジションを保ったほうが、よりいい音になる 」、
「 開放弦を使うことを避けないで 」 などの教えを、
注釈として加えた楽譜を、Tobel が作りました。
★Tobel によりますと、
Casalsは、友人のチェリストや編集者から、
何度も何度も、Casals版 「 無伴奏チェロ組曲 」 を作るよう、
薦められたそうです。
しかし、Casalsにとって、それは幾つかの理由で、
不可能な仕事のようであった、そうです。
★第一に、彼は生涯を通して、絶えず、
よりよい Bach 解釈を、求め続けていた。
第二に、チェリストが、Casals の Fingering を理解しない
のではないかと、危惧していた。
その Fingering の目的は、多数あるがなかんずく、
最高の relaxation リラクゼーションを目指すことにある。
しかし、それは批判を浴びる結果になるであろうと、彼は思っていた。
第三に、 Bach が要求する、無数にある accents アクセントや、
nuances ニュアンスを書き記すことは、ほとんど不可能であると、
Casalsは、信じていた。
★そのような理由で、Casalsは、自身の版を創りませんでした。
Bach を、毎日勉強し、追及すると、解釈は留まるものではなく、
絶えず、変わっていくものなのです。
真摯な探求者であればあるほど、≪これが決定的解釈である≫、
というものを、打ち出せなくなるのです。
★次回 「 KAWAI 横浜みなとみらい 」 での、
Chopinが見た 「 Bach 平均律アナリーゼ講座 」 は、
平均律 第 1巻 「 第 19番 A-Dur イ長調 」 です。
★19番の prelude は、三つの主題をもつ
「 triple counterpoint 三重対位法 」 ですが、
見方を変えますと、半音階と四度跳躍音程から成る 「 対主題 Ⅰ 」 と、
掛留音 suspention を特徴とする 「 対主題 Ⅱ 」 を従えた、
「 Fuga 」 と、みることもできます。
★ Bach は、平均律第 1巻 の 7番 Es-Dur prelude でも、
重厚なフーガを展開しましたが、この19番は、高度な技法を用いながら、
なんとも軽やかで、優美。
無垢な子供が口ずさむ、歌のようです。
★この素晴らしい技法を、自家薬籠のものとしたのが、Beethoven です。
講座では、「 Klaviersonate Op. 101 A-Dur 」 の自筆譜を参照しながら、
彼が、 Bach から学びとったものを、お話いたします。
★19番フーガ fuga の主題は、4度音程での zigzgging subject
ジグザグ進行です。
Beethoven は、この 「 四度音程 」 の意味を、
「 ピアノソナタ 31番 Op. 110 」 で、解明しています。
★「 四度音程 」 の意味、とは ?
≪ 四度が 「 調性 」 のなかで、どのような役割を果たしているか ≫
ということです。
★Prelude には、ショパンの書き込みはありません。
Fuga には、主題の冒頭に 「 × 印 」 を記入していますが、
3小節目の上声部分にのみ、 「 □ 印 」 が記入されています。
この 「 □ 印 」 は、次の 20番 Fugaで多用されています。
なぜ一ヶ所だけ 「 □ 印 」 を記入したのか、
Chopinの深い意図を、探ります。
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■ 講 師: 中村 洋子
■日 時 : 2014年 6月 16日 (月) 午前 10 時 00分 ~ 12 時 30分
■会 場 : KAWAI ミュージックスクール みなとみらい
横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
( みなとみらい駅 『 出口 1番 』 出て、目の前の高層ビル3F )
■予約 : Tel.045-261-7323 横浜事務所
Tel.045-227-1051 みなとみらい直通
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■ 講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
初演される。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の楽譜とCDは
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
販売中。
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。
disk Union クラシック館で、第1~6番を購入できます。
※copyright © Yoko Nakamura
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