■銀座からまた、名店が消えました、 銀座日航ホテルが閉館■
2014.3.31 中村洋子
★銀座の名店がまた、姿を消しました。
銀座 8丁目の外堀通りに面した 「 銀座日航ホテル 」 が、
半世紀以上の歴史を 3月 31日で、閉じました。
数寄屋橋交差点から、歩いて数分、
建物は威容を誇らず、さりげなく落ち着いたたたずまい。
上品で丁寧、気配りのきいた質の高いサービス。
「 粋 」 でした。
しかし、決して格式張らず、銀座という街並に、静かに溶け込み、
なくてはならない存在でした。
★東海道新幹線が開通した1964年より 5年前の、1959年の開業。
昭和 34年です。
その年の 4月 10日 は、 皇太子殿下と美智子様の結婚式。
4月 20日には、東海道新幹線建設の最初の槌音が、鳴り響きました。
誰もが日本の明るい未来を信じ、羽ばたき始めた時代でした。
それから半世紀、 「 銀座日航ホテル 」 は、銀座の栄枯盛衰を、
ずっと黙って、見守ってきました。
★今回、建物の貸借契約が、終了したため、
営業を終えることに、なったそうです。
いまの建物は、取り壊されてしまいます。
日本の歴史を眺め続けた建物が、何を見てきたか・・・、
語って欲しいような気持ちです。
★ホテルのホームページに、
ホテルの皆さまの、最後の声が流れています。
フロントの皆さん、厨房のコックさん、客室係の女性たち、事務係、
ボイラー担当者など全員が、一言お礼を申されています。
長年、黙々と働き続けてきた、まだ現役の大きなボイラ-も、登場します。
縁の下の力持ちの 「 ボイラー 」君 にも感謝し、いたわる心、
全員が、和気あいあいと仲良く働く、その暖かさ、
それが、 「 銀座日航ホテル 」 の、真骨頂だったのです。
http://www.ginza-nikko-hotel.com/information/movie.html
★お部屋からは、ゆっくりとしたスピードで走る新幹線の姿。
その高架の先には、夜になりますと、
日比谷図書館の丸い大時計が、ぼんぼりのように現れます。
その奥には、ライトアップされた国会議事堂も、
浮かび上がります。
★作家の故向田邦子さんも、
このホテルで、執筆されていたそうです。
創作に疲れた時、かつての優雅で粋な銀座の街が、
彼女を暖かく、包み込んだことでしょう。
★ご好意で、私の作品 「 無伴奏チェロ組曲 4、5、6番 」 の音楽を、
ロビーで、流していただいておりました。
海外のお客様も多く、音楽は違和感なく、ホテルの雰囲気に、
馴染んでおりました。
惜別の念は、尽きません。
★もう一軒、銀座 6丁目の中央通り、
松坂屋の向かい側、 5階建て美しいビルの、
「 銀座大増 」 さんも、閉店されました。
創業九十余年、 銀座で七十余年、
元々は、お弁当仕出しのお店でしたが、
銀座では、色彩感と季節感に溢れる、
会席料理のお店として、有名でした。
★入口のウインドーに飾られた、お膳料理の洗練さは際立っており、
道行く人々が、うっとりとした表情でしばし眺め、そして、
満足そうな気持で、去っていかれます。
眺めることで、幸せな気持ちになります。
それがまさに、銀ブラなのです。
★私は、数回しか賞味したことがございませんでしたが、
女将のさりげなく、しかし、水際立った心配り、気配りに、
いつも、感嘆しておりました。
本当に、居心地がいいのです。
★これが、名店の条件なのです。
「 銀座大増 」 さんは、お弁当などは、継続されているようですので、
少しは、ほっといたしました。
★一見、丁寧そうですが、実はマニュアル化されただけの、
心のこもっていない、形だけの応対をするお店、
海外の観光客向けに、眉をひそめたくなるような、
原色の看板を掲げたお店が、本当に増えてきました。
★高級和服のお店として、双璧を成していました、
「 きしや 」 さんと、 「 ちた和 」 さんが倒産されてから、
かれこれ、十年は経つのでしょうか。
淡くやさしい色合、細かい刺繍の 「 きしや好み 」 の和服。
ネオンが瞬き始めるころ、そんな溜息の出るような、
高級な、趣味のいい和服を召されたホステスさんたちが、
優雅に、歩かれていました。
★私にとって、それを眺めるのも、実は、銀ブラの楽しみでした。
しかし、それも、いまや幻となりました。
最近のホステスさんは、ほとんどが、けばけばしい貸衣装で、
和服の歩き方すら、ご存じないような方が多いようです。
それでも、まだまだ名店は頑張っていらっしゃいます。
陰ながら、応援していきたいと、思います。
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます
※copyright © Yoko Nakamura
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私は、きしやさんとちた和さんと長いお付き合いで、両店の主力仕入先でした。
その好みを伝えるために直営のアンテナショップ「銀座きものギャラリー泰三」を通じて発信しております。
本当に銀座の老舗が次々と姿を消していきます。寂しい思いをしているこの頃でございます。