■Spain の若い Cellist Concours で、私の作品を演奏した方が優勝■
~ Fuga には、鋼のように鍛え抜かれた、力強い Themaが不可欠~ 2014.6.30 中村洋子
★7月 3日の KAWAI 表参道 「 平均律 第 2巻アナリーゼ講座 」 を前に、
「 16番 g-Moll Prelude & Fuga 」 の勉強を進めています。
勉強すればするほど、「 Wohltemperirte Clavier Ⅱ
平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 」 は、底知れないほど深く、
難しい曲集であることを、痛感いたします。
CDショップを覗きましても、平均律 1巻 に比べ、
平均律 2巻を録音している Pianist は、かなり少ない印象です。
当然かもしれません。
私自身、やっと、平均律 2巻の本当の勉強に踏み入った、
というのが、正直な心境です。
★これは、おそらく、あの Pablo Casals パブロ・カザルス(1876~1973)
であっても、毎日毎日、 Bach と切り結ぶように、
対峙していたのであろうと、僭越ながら、そう思います。
★その Casals の故郷 Spain で開催されました、若い Cellist のための、
「 Audition Final de curso de Violonchelo 」 (5th.June 2014)
concours コンクールで、私の作品を演奏した方が、1等に輝いた、
という嬉しい便りが、Berlin の、
Wolfgang Boettcher ベッチャー先生から、届きました。
★1er. Premio : Monica Aguilar Morgado e Isaias Rodriguez Garcia
1等:モニカ・アギュイラ・モルガド と イザイアス・ロドリゲス・ガルシアさん。
演奏曲目: “ Ein Spanisches Fest ” Duo de Yoko Nakamura
Monica さんの写真がありますが、大変に美しい方です。
この方たちが、第二の Casals や Jacqueline du Pré に、
なって欲しいものです。
★この “ Ein Spanisches Fest ” Duo は、
「 Musikverlag Ries & Erler Berlin リース&エアラー社 」 から、
出版されました私の 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」 の、第 4曲目です。
日本でも、徐々に、この作品が演奏されるように、
なってきているようです。
これで、音楽が本当に好きになり、私の組曲も、
弾いていただけるようになれば、大変に嬉しいです。
★ここ数日は、平均律 第 2巻、 16番を勉強しているのですが、
資料づくりとは別に、思わず、 Bach の音楽の世界に、
うっとりと、ひたっている自分に気づくことも、よくあります。
★ Bach の Fuga は、一般的には 「 がちがちの countepoint 対位法 」 と、
レッテルを貼られているようですが、今回の講座では、
その類稀な美しい ≪ 和声 ≫ についても、詳しくご説明する予定です。
★この 16番 Fuga は、冒頭 tenor テノール の 「 一声 」 で、
「 Subject 主題 」 が始まり、次に、 alto アルト で 「 Answer 応答 」 が、
出現します。
その時、 tenor テノール 声部は、そのまま 「 Counter subject 対主題 」
となります。
その次に、3回目の Subject 主題の提示として、 soprano ソプラノ が、
Subject 主題 を、奏します。
★そうしますと次は、 alto アルト がそのまま Counter subject 対主題
となり、 その瞬間から 「 三声 」 となるのです。
四回目の提示として、 bass バス 声部に Answer 応答 が出現し、
その際、 soprano ソプラノ が、 Counter subject 対主題 となり、
やっと、 ≪ 四声 ≫ が出揃うのです。
★これを ≪ 和声 ≫ の観点から眺めますと、最初の 「 一声部 」 では、
Subject 主題は、むきだしの旋律、旋律のみですので、
Bach が、そこにどういう和声をイメージしていたかは、
分からないのです。
それは、私たちが考えに考え抜いて、類推するしかありません。
★作曲家の立場からいいますと、 Subject 主題を創るということは、
今後のあらゆる展開に耐えうるように、鍛えに鍛え上げた
≪ Subject 主題としての旋律 ≫ が、必要なのです。
そうした逞しい旋律に、和声を完全に付けて、初めて、
「 Subject 主題 」 が、確立するものなのです。
★これは、実は、西洋音楽すべてに共通した方法です。
Bach は、下書きをほとんど残していませんが、
Beethovenは、スケッチ帳が残っており、
Thema テーマ を確定するまでに、どれだけ格闘していたことか、
その苦闘の軌跡が、見て取れます。
★ここで、 Subject 主題と Thema テーマ との違いについて説明します。
曲の核となる旋律を Thema テーマ と呼びます。
Thema テーマ という広い意味の言葉の中には、 Fuga での、
Subject 主題と Answer 応答も入り、
Beethovenのソナタ形式で、必ず出現する、
第1 Thema テーマ 、第2 Thema テーマ も、含まれます。
★作曲家は、和声を確定したうえで、 Thema テーマ を作曲するのです。
盤石の体制で Thema テーマ を創ることが何より肝要なのです。
特に、 Fuga の場合、その Thema が上声になったり、下声、
あるいは内声となったりするため、どこに位置しても完全に機能するよう、
鋼のように鍛え抜かれた、力強い、美しい Thema でなければ、
展開途中で、空中分解し、瓦解してしまうのです。
音楽には、ならないのです。
★Bach の Fuga で、 むき出しに演奏されている
「 一声部 」 の Subject に、どういう和声を Bach は考えていたか、
それを、探求し、解明することが、
Bach に近づく第一歩でもあるのです。
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■ 第 13回 Bach 平均律 第 2巻 アナリーゼ講座
第 16番 g-Moll BWV885 Prelude & Fuga
~ Chopinの Piano Concerto No.2は、
16番を学び尽して生まれた ~
日 時 : 2014年 7月3日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分
会 場 : カワイ表参道 2F コンサートサロン・パウゼ
予 約 : Tel.03-3409-1958
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■ 講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
初演される。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
全国の主要 CDショップや amazon でも、ご注文できます。
★ disk Union クラシック館で、第1 ~ 6番を購入できます。
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