音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■私の作品「10 Duette fur 2 Violoncelli 」が、出版されました■

2011-04-14 23:24:38 | ■私の作品について■

 

■私の作品「10 Duette für 2 Violoncelli 」 が、ドイツで出版されました■
             2011.4.14

 


「 東日本大震災 」 から、1ヶ月が経過しました。

「 国破れて、山河在り 」 、

どんな逆境になろうとも、自然だけはこれまで、

人々を暖かく迎え入れ、包み込んでくれました。

しかし、このたびは、その自然が修復不可能なほどに傷つけられ、

「 FUKUSHIMA DAIICHI 福島第 1原発 」 からの,

放射性物質の放出も、沈静化の兆しがみられず、

炉心の冷却化作業も、メルトダウンや、爆発の危険性を孕み、

毎日が、不安で堪りません。

この大震災の前後で、ご自分の人生観が、

変わってしまわれた方も、多いと思われます。

 


★3月上旬は、私の 「 10 Duette für 2 Violoncelli 」

「 チェロ二重奏のための 10の曲集 」 の、

校訂・校正作業に、没頭しておりました。

出版社の  「 Ries & Erler  Berlin 」

リース&エアラー社 ベルリン の、

編集者 Thomas Schwalbe トーマス・シュヴァルベさんが、

粘り強く、5回も校正につきあってくださいました。

その最後の校訂を、ベルリンに送り終えたのが、

ちょうど、3月11日の正午でした。


★生意気な言い方ですが、校訂を送り終えた時、

バッハやベートーヴェンの国  「 ドイツ 」 で、

「 3回目の出版ができた 」 という、達成感がありました。


★しかし、その約3時間後、「 大地震 」 が日本を襲いました。

シュヴァルベさんは、すぐに、

「 私は、あなたの作品が大好きです、

これで、消え去ることはありません 」 という、

お見舞いのメールを、くださいました。

同時に、私のなかでは、

“ 書きたいものがまだまだ、たくさんある ” 、

という思いが、強くわき上がってきました。

 

 

★この作業を通して、自筆譜と出版楽譜の相違を、

身をもって、体験しました。

シュヴァルべさんは、とても優秀な編集者で、

ドイツ出版界の、現在の基準に則って、

楽譜をコンピューターで作成し、送ってこられました。

私は、それに対し、私がバッハの自筆譜から学んだことを、

自分の楽譜にも活かそうと、努めました。


★私の意図を、シュヴァルベさんに伝えますと、

かれは、「 一般的ではないが、あなたの考えは理解できる 」 と、

修正に、気持ちよく応じてくれました。


★この体験で、出版楽譜は、決して自筆譜の意図を、

忠実に反映しているわけではない、ということを、

再確認いたしました。


★これから、バッハやシューマン、ベートーヴェンの、

実用譜を見る際、この経験を活かすことができると、思います。

また 「 アナリーゼ講座 」を再開いたしますとき、

それを、具体的にお話いたします。


★今回の私の楽譜は、校訂面で満足していますが、

楽譜の段落分けについては、自筆譜とは全く、

異なった配分と、なっています。

私の自筆譜は、視覚的に、曲の全体構造が分かるように、

1ページが 16段の 五線紙を使っています。


★しかし、今回の出版は、

「 譜めくりを最小限 」 にして、演奏しやすくすることを、

前提にして、レイアウトされました。

 


★同じような例は、バッハの 「 フーガの技法 」 にも、見られます。

これは、バッハが亡くなった直後に出版されました。

幸いなことに、バッハの自筆譜と初版版のファクシミリの両方を、

現代の私たちは、見ることができ、比べることができます。


★初版楽譜も、大変にすばらしく、

段落分けも、いかにも意味がありそうにみえますが、

バッハの自筆譜とは、全く異なっております。

私の楽譜のように、譜めくりのため、

という事情でも、なさそうです。


★もし、自筆譜が存在しなかったならば、

この初版楽譜のレイアウトをみて、いろいろと思い悩んだり、

疑問がふつふつと、わき上がってきたことでしょう。


★以上の例から考えますと、バッハの 「 イタリア協奏曲 」 の、

初版譜は、作曲家が生前に認めていたものであったとしても、

自筆譜との相違が、かなりあると思われます。

やはり、なにはともあれ、作曲家の自筆譜に当たることが、

その作曲家を理解するのに、最良の方法である、と思います。


★Chopin ショパンにも、それが当てはまります。

私が、もっともらしい 「 Ekier エキエル版 」 を、

信用しないのは、そのためです。

自筆譜を書き上げた後、ショパンが考えを変えたとしても、

その作曲時点での、ショパンの意図に、正しく迫るのには、

その自筆譜を、見るしかないのです。

そこには、いかなる校訂者も、入り込む隙はありません。


★掲載しました写真は、

Frankfurt フランクフルトで、4月6日から9日まで、

開催されました、世界最大の音楽見本市

「 MUSIC MESSE 」 に、出品されました、

「 10 Duette für 2 Violoncelli 」 の、写真などです。

私の楽譜を持っている、ドイツ人男性は、

Musikverlag Ries & Erler  Berlin の社長の、

Andreas Meurer アンドレアス・モイラーさんです。

 

★この 「 10 Duette für 2 Violoncelli 」 は、

https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED

http://www.rieserler.de/index.php?manufacturers_id=729

http://www.rieserler.de/product_info.php?products_id=2529

http://www.rieserler.de/product_info.php?products_id=2635

http://hauke-hack.de/page4.php

 


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