音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■10月29日のインヴェンション・アナリーゼ講座■

2008-10-26 23:30:58 | ■私のアナリーゼ講座■
■10月29日のインヴェンション・アナリーゼ講座■
             08.10.26      中村洋子


★今週29日(水)に開催いたします「第4回インヴェンション講座」は、

インヴェンションとシンフォニアの各4番を使い、

バッハが、どれだけ偉大な「和声の大家」であったか、

それを、ピアノで実際に音を出しつつ、体験していただくことを

予定しております。


★「和声学」といいますと、音大で学ばれた方にとっては、

“無味乾燥で興味をもてなく、頭が痛くなり、

実際に弾いている曲と、どんな関係があるのかしら?”と、

あまりいい思い出を、お持ちでない方が、

大半であると、思われます。


★「ソルフェージュ」の、書取り聴音の4声体和声も、

8小節の紋切り型の課題を、数多く、なさったことと思います。

「和声」という言葉を、お聞きになりますと、

このような、あまり楽しくない体験が、

瞬時に思い浮かぶかもしれません。


★バッハが、「対位法の大家」と位置づけられ、

インヴェンションを勉強する祭、

各声部のテーマが、「どこにあるか」 まず、それを探し出し、

そこを「強く」際立たせて、弾くことに気を取られ、

和声の美しさを味わいながら演奏することが、

なおざりになる傾向が、あるかもしれません。


★バッハの和声は、「複雑怪奇な和声記号」ではなく、

決まりきった「4声体和声」でもなく、

まるで、「生き物」のように、

人間の喜びや悲しみといった感情を、

あますことなく表現できる手段として、

バッハの心の中から、湧き上がってきたものです。


★きょうは、静かな日曜日でした。

私は一日、ピアノに向かい、バッハのこの2曲の、

和声の骨格と、その流れを、私なりに、譜面上に要約しました。

講座では、この私の譜面をお見せし、よりよき理解の助けとして、

ご利用していただければ、と思っております。

この譜面を勉強していただければ、インヴェンションをどのように

演奏すればいいか、ということが、自ずから、

分かってくると、思います。


★「どの版を使ったらいいか」というご質問をよく、受けます。

ご推薦できる版は、いくつかあり、今回の講座で、それを

お話いたしますが、“この一冊だけでいい”という決定版は、

残念ながら、ございません。


★決定版というのは、バッハをお弾きになる皆さま、

お一人お一人が、バッハに日々向き合い、

作り上げていくものではないでしょうか。


★バルトークの「ミクロコスモス」は、

バッハのインヴェンションを、大いに意識して

作曲したはずです。

平均律クラヴィーア曲集が、大宇宙であるならば、

バルトークの「ミクロ」コスモス(宇宙)は、まさに、

インヴェンションなのです。


★ただし、極端に切り詰められた音楽の中に、

果てしなく大きな“音の宇宙”が、存在していたということは、

バッハも、バルトークも同じかもしれません。


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