音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■山本隆博・漆器展 ~ぬりもの の うつわ展~■

2008-06-05 18:03:22 | ■楽しいやら、悲しいやら色々なお話■
■山本隆博・漆器展 ~ぬりもの の うつわ展~■
                08.6.5   中村洋子


★越前・鯖江、河和田(かわだ)の塗師「山本隆博」さんの個展が

東京・日本橋の「三越本店」6階美術サロンで開催中です。

父君の名人「山本英明」さんとは、親しくお付き合いさせて頂き、

このブログでもご紹介したことが、ございます。
http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/e/d36e6258c0493ab7c09ce5bec0d84306


★“忙中閑あり”で、拝見して参りました。

しっとりと落ち着き、美しく、

質と品の良さが、じわじわと滲み出てくる作品群、

日本の工芸の極致かもしれません。

しかし、「日常什器」という世界からは、逸脱せず、

“芸術作品”のようには、威張っておりません。

汁椀の価格も1万2千円から。

そこが凄いところです。


★毎日、朝晩使っても、飽きず、

一層、愛着が湧いてくる「汁椀」から始まり、

左党のための「片口」、「茶箱」や「重箱」、さらに

彼が修練した技術のすべてを集め、

眺める自分の顔が、鏡のように、

鏡以上に、美しく映るまで磨いた、

40cm近い、溜漆の「お盆」や、

直径50cm以上の力作「三脚盤」まで、

すべての作品が、“じっくり見てください”と

待っています。


★私は、写真のお盆を購入したしました。

家に持ち帰り、包みをそっと開けますと、

会場での慎ましやかだった印象が、一転しました。

その力強い存在感に、圧倒されてしまいました。

2cmほどの厚い「朴(ほう)」の木に、

大胆な刻み目、茶漆の重厚さ。

テーブルに、このお盆を一つだけ置きます。

多分、普通のお皿など同席させますと、

力負けして弾き飛ばされるでしょう。

盆に盛られたお料理を、じっくり味わう。

どんなお料理を載せても、美味しくなりそうですね。

ちなみに、このお盆の代金は、汁椀と同じでした。


★彼は作品に添えた紙に、次のように書き記しています。

「私が作るものは、椀や盆など主に生活のためのものです。

切れる刃物が後世残らないように、私の作品も、結果として

残らなくてもいいと思っています。

むしろ、そのほうが自然なのかもしれません。

だからといって、仕事の手を抜くつもりはありません。

最良の材料とやり方で、仕事をしているつもりです。

プロは、過程や能書きではなく、結果がすべてと思っています」


★山本父子と、お仲間の佐川泰正さんの3人は、

最高の国産漆を、大変な手間と労力を掛け、

自分たちで、精製する作業から始めます。

本物の塗師は、かなりいらっしゃりますが、

自分で、漆まで精製までする方は、

ほとんどいらっしゃらないでしょう。

そして、納得のいく最高の木地を使います。

汁椀でも、何十という工程を経、完成するまで

最低三ヶ月は掛かるそうです。


★山本隆博さんの個展は、6月9日(月)まで開催されます。

(最終日は、午後4時半まで、日曜は午後7時半まで、

平日は午後8時まで)

もし、お暇がございましたら、

ご覧になることをお薦めいたします。

本当の美しさと、誠実さがあります。

きっと、心が豊かになることでしょう。


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