ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

ゴメリ州における糖尿病児童数

2011-12-02 | 放射能関連情報
 チロ基金は2005年から「ゴメリ州モズィリ市糖尿病児童協会への支援活動」に支援を行っています。
 前々から関係者の方から
「チェルノブイリ原発事故後、子どもの糖尿病が増えており、放射能被曝との関連性が疑われる。」
と何度も聞いていました。
 今回、協会長さんに
「どれぐらい増えているのか、とか放射能との関連性があるという研究結果などのデータはありませんか? もしあれば教えてほしい。」
 と頼んでみました。会長さんは了解してくれ、モズィリの病院で尋ねてきてくれたのですが、そいうデータは開示していないとかいろいろ言われ、見せてもらうことはできなかったそうです。
 しかしここ16年にわたり、ゴメリ州では毎年「ゴメリ州住民の健康と環境」というデータをまとめて発表しています。
 発行もしているそうですが、なかなか手に入りにくいです。発行しているのはゴメリ州立衛生・伝染病学・公衆健康センターで、公的機関です。
 今年、2011年も2010年度版が発行されました。
 その一部を会長さんが手渡してくれたので、読んでみました。糖尿病のことだけではなく、いろいろな疾病疾患のことが載っています。
 とりいそぎ糖尿病のことについてのデータをお知らせします。

(その後検索してみると、ロシア語版しかありませんが、ゴメリ州立衛生・伝染病学・公衆健康センターはサイトを持っており、そこで「ゴメリ州住民の健康と環境」以外にもゴメリ州の健康状態に関するさまざまなデータを見ることができました。)

http://gmlocge.by/ru/Reviews/


 「ゴメリ州住民の健康と環境 2011年度発行」にはゴメリ州における糖尿病の発症者数の推移のグラフが19ページに記載されています。
 これによると、ゴメリ州全体では、発症率(その年糖尿病を発症した人の数)は、1986年で人口10万人に対して112.7人です。それが2010年には234.2人になっています。
 全体(全ての年齢層)で言うと、1986年から微増し、1991年と1992年に156.5人と158.6人、と最初のピークがあります。
 その後は減り続け、1994年かた1997年に横ばい状態になりますが、1998年から一転、増加傾向となっています。

 ここで注目したいのは全ての年齢層の罹病者数のほかに、14歳までの年齢の子どもの罹病者数もグラフになっていると言う点です。
 どうしてこのように区別したかというと、子どもがかかる糖尿病というのは1型糖尿病であるからです。


http://ja.wikipedia.org/wiki/1%E5%9E%8B%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85


 ウイキペディアからの引用になります。
 
 ・・・1型糖尿病は糖尿病の一種である。しかし、生活習慣の影響による糖尿病は2型糖尿病といい、それに対し1型は自己免疫性疾患であるため、両者は全く異なる病気である。

 ・・・2型の主な治療法である食事療法や運動療法を行っても、1型の場合は効果がほとんどない。そのため、インスリン療法を中心に行う。インスリン療法は、強化インスリン療法とその他の治療法に分けられる。

 ・・・今日ではペン型注射器などが開発され、発症者の大半である小児でも自分で打ちやすくなった。

 ・・・発症率(0~14歳)は日本では10万人に約1.5人である(1993年日本糖尿病学会小児糖尿病委員会より) 


 ウイキペディアからの引用は以上です。
 そしてゴメリ州における14歳以下の年齢の子どもが糖尿病(1型糖尿病)を発症した率もグラフになっているのですが、このようになっています。
 このグラフをこのブログでそのまま見られるようにできればよかったのですが、どうもうまくいかないので、文章でお知らせします。

 1986年(チェルノブイリ原発事故発生年)には10万人に対して、3.0人。
 1987年は4.2人。
 1988年は3.7人。
 1989年(チェルノブイリ原発事故から3年後)には9.5人に急に増えました。
 1990年(4年後)には4.9人と減りますが、その後増え続け、全ての年齢層では横ばい状態だった1994年(8年後)から1997年(11年後)の間に1型糖尿病の発症率は一度ピークがきます。
 1991年は6.3人。
 1992年は9.8人。
 1993年は13.0人。
 1994年は16.1人。
 1995年は13.7人。
 1996年(事故から10年後)は13.3人。
 1997年は8.2人。
 1998年は9.0人。
 1999年は9.7人。
 2000年は7.5人。
 2001年は12.1人。
 2002年は8.3人。
 2003年は8.6人。
 2004年は12.7人。
 2005年は14.8人。
 2006年(事故から20年後)は11.0人。
 2007年は8.3人。
 2008年は15.6人。
 2009年は15.2人。
 2010年は13.0人。

 全ての年齢層のほうの発症率は1型と2型糖尿病の合計です。2型は生活習慣が原因である場合がありますので、放射能は関係あるかどうか決定できません。
 しかし1型のほうは自己免疫性疾患であり、その原因が放射能被曝である可能性は全くないとは言えません。

 この発表されたデータには、数字が示されているだけで、放射能被曝との関連性については述べられてはいません。
 患者数が増えたことは認めているものの、原因についてははっきりと記述していないのです。
 
 このデータをもって、放射能被曝のせいで、子供の糖尿病患者が増えた、とは言えません。
 しかし1986年に10万人に対して、3.0人だった発症率が、16.1人、つまり5倍以上にまで増えた時期もあったことや、24年経っても13.0人である、ということは事実です。
 
 モズィリ市糖尿病児童協会の会長さんは福島の原発事故の影響を大変心配しており、
「日本でこれから子供の糖尿病患者が増える可能性がある。」
と話していました。
 そして
「発病してからでは遅い。それに糖尿病以外の病気の患者もチェルノブイリ後増えているのだから、とにかく日本の皆さんは被曝しないように早め、早めに対応策を取っておいてほしい。」
 と何度も私に話していました。

 「ゴメリ州住民の健康と環境」というデータには糖尿病以外の病気のデータも掲載されています。
 これからこのブログ上でその内容を少しずつ翻訳して公開していこうと思っています。

 

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