自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

今年を振り返る

2020年12月31日 | 標本
今年を振り返ると精神的によくない1年だったという感じです。コロナ禍で振り回されました。振り回されるというより、押し潰されたような感覚です。それに対する行政のひどさや、それ以外の政治家のあまりの無軌道ぶりに不愉快さが増幅されました。
 私は今、勤務はありませんから、外にはできるだけ出ないようにしました。外に出ないで何をしていたかというと、優先順位で言うと、執筆、そして分析です。現役の時もできるだけ論文を書くようにしてきましたが、大学は忙しくて、会議や講義や学生の指導など次から次にと仕事があって、論文執筆の時間はそれらの隙間に行うという感覚でした。それが今では十分に時間があるので、まずそれに時間を使うようにしています。論文内容がこの数年くらい前に調べたものは記憶も新しいのですが、古いものの場合は、古い野帳を読み直したりして確認をするのに結構時間がかかることがわかりました。今年の成果は文末にあげました。
 論文に次いで優先順位が高いのが分析ですがそのうち一番多いのは動物の糞の分析です。タヌキやシカなどの糞を保管しているので、それを顕微鏡でのぞいて分析しています。今年はアファンの森のタヌキ、知人が集めてくれた愛媛県のタヌキ、高知県のシカ、鳥取県若桜のシカ、山梨県早川のシカ、三宅島のテンなどを分析しました。それから学生時代から通っている金華山の1970年代以降のシカの糞も分析しました。根気のいる作業なので、執筆に飽きたら分析、分析に飽きたら読書、そしてまた執筆という感じです。そのほか、果実を採ってきて写真を撮り、種子を取り出してまた写真を撮ることをしています。時々は小動物の死体を手に入れて骨格標本を作ってもいます。
 やはり退職してからしてきたことに、東大に残してきた膨大なシカ標本の整理作業があります。週1回のペースで通ってラベル付けや棚への並べ直しをしてきましたが、コロナ第3波が来たので12月からは中止しています。こちら

 地元の玉川上水の野草の記録を仲間としているので、10日に1回は玉川上水に行って花や果実を撮影し、みなさんからのデータを入力しています。こちら

 月一度の観察会も今年は取りやめていましたが、秋に再開したところです。12月初めにした子供向けの観察会はとても楽しく、思えば灰色だった今年の毎日の中で少し眩しいくらい一番明るい1日だったかもしれません。こちら

 そういう毎日ですから、気分転換に老夫婦で近所に散歩に行くようになりました。小平霊園にはよく行きますが、少し足を伸ばして黒目川という湧水の川があるのでよくいきます。こちら その流れでパン屋さんによって「一口とコーヒー」というのも楽しんでいます。
 認識を新たにしたのは、私は少し遠い場所に月に一度くらい、ずっと遠いところに年2、3回、そして近場に週一度くらいの野外調査に行くことで心身ともリフレッシュしていたのだなということです。そのことを特に意識はしていませんでしたが、今年それができなくなってそのことに気づきました。
 そうした閉塞感のある1年でしたが、日本哺乳類学会から哺乳類学会特別賞を授与されたことは光栄なことで、明るい気持ちになれることでいた。こちら

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明治神宮の森のタヌキの食性(2020.2.14、原稿提出済み)
高槻成紀・山崎 勇・白井聰一. 2020.   東京西部の裏高尾のタヌキの食性 – 人為的影響の少ない場所での事例 – . 哺乳類科学, 31: 67-69.            
高槻成紀. 2020. 2018年台風24号による玉川上水の樹木への被害状況と今後の管理について. 植生学会誌,  37: 49-55.              
Kagamiuchi, Y. and S. Takatsuki. 2020. Diets of sika deer invading Mt. Yatsugatake and the southern Japanese  South Alps in the alpine zone of central Japan.  Wildlife Biology, 2020(3) 
Nemoto, Y., H. Oomachi, R. Saito, R. Kumada, M. Sasaki, S. Takatsuki. 2020.             Effects of 137Cs contamination after the TEPCO Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station accident on food and habitat of wild boar in Fukushima Prefecture. Journal of Environmental Radioactivity      
高槻成紀. 2020. 日本での哺乳類の捉え方と哺乳類学. UP, 569 (2020 March): 14-20.
小島香澄・高槻成紀. 麻布大学キャンパス内の植栽樹への鳥類による種子散布. Binos, 27: 11-16. 印刷中
宗兼明香・南正人・高槻成紀. 長野県・東京ガスの森に生息するテンの食性. 哺乳類科学, 印刷中
高槻成紀・谷地森秀二.   高知県とその周辺のタヌキの食性 – 胃内容物分析–.  哺乳類科学, 印刷中
高槻成紀. 麻布大学キャンパスのカキノキへの鳥類による種子散布. 麻布大学雑誌, 印刷中
高槻成紀、石川愼吾、比嘉基紀. 四国三嶺山域のシカの食性−山地帯以上での変異に着目して-. 日本生態学会誌, 印刷中
Takatsuki, S., M. Inaba, K. Hashigoe, H. Matsui. Opportunistic food habits of the raccoon dog – a case study on Suwazaki Peninsula, Shikoku, western Japan.     Mammal Study, in press
Ohtsu, A. , Takatsuki, S. Diets and habitat selection of takhi and red deer in Hustai National Park, Mongolia. Wildlife Biology, in press
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