玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

木の実 草の実 たねしらべ

2020-12-06 21:20:57 | 観察会
木の実 草の実 たねしらべ(2020.12/6)作成中

感想 スタッフ こちら
感想 保護者 こちら
かんそう こども こちら



前の日が小雨の寒い日だったので、天気が気になっていましたが、予報では晴れとのことでした。実際、当日は朝は少し寒かったのですが、良い天気で、子供たちは元気に動き回っていました。
 9時過ぎにスッタフは集まり、9時半には子供たちも集まりました。主催者のリーさんから挨拶があり、玉川上水に移動しました。

 初めに、散歩をする人も多いから、人がきたら道をあけるように説明しました。


それから
「みんなポケットはあるかな?」
「ある」
「3つある」
などと答えが返ってきました。
「では今からこういう袋を一人5枚配るからね」
と言ってジップ式のポリ袋を配りました。
「これはこうして開けるんだよ。そうして木の実を入れたらこうしてぎゅうとすると、もう落ちないから、それをポケットに入れてね」

実は今年は果実が少ないので、子供たちにどれだけ紹介できるか心配でした。それで少し長めに歩いて果実を見る確率を高くしようと思っていました。ところが、歩き始めてすぐに、ネズミモチを、もう少し行くとナンテンを見つける子がいて、驚きもし、安心もしました。子供たちは喜んで先に先にと進んで、マユミ、マサキ、ムサラキシキブ、イヌツゲと次々に見つけてくれました。



 日差しが良くて、コナラの黄葉に光が当たってきれいでした。そこで記念撮影をすることにしましたが、たまたまその木がナラ枯れをしていました。



 しばらく行くとコナラの若木がまとまってあったので、説明をしました。
「人のお母さんは二十代くらいから子供を産んで、そうですね50歳くらいまで産むでしょうか。でも木は100歳でも200歳でもずっと実をつけます。実は木の赤ちゃんです。その赤ちゃんが芽を出してこういうふうにたくさん生えてきます。これがずっと大きくなって高い木になるわけです。でも大きな木にまでなるのは少しだけで、多くのものは途中で死んでいきます」


「ここにはコナラのどんぐりがたくさんあるので、一人が5個拾ってください。できるだけ大きいのと小さいのを拾ってね」


「たかつき先生、これなんですか?」
と植物にくわしいとうわ君がいろいろ聞いてきました。コマユミ、ヘクソカズラ、センニンソウなどでした。それから
「先生、オニドコロがありました」
と大人顔負けの発言もしていました。
 
鷹野橋でアオキの果実を説明

イヌツゲ

ノイバラ

ムラサキシキブ

ヤブラン

ゴンズイ

コマユミ

カマツカ

ナンテン

ネズミモチ

 木の実が多かったのですが、ウサギ橋のところにヤブランの黒い果実が少し残っていました。

ヤブランの果実をとる

そんな調子で歩いていたらリーさんが焦ったように
「公民館での時間がなくなるから、そろそろまっすぐ歩きましょう」
「今、何時?」
「10時半」
「おや、もう1時間もたっちゃったのか!?」
まだ見せたいポイントもあったのですが、少し急ぐことにしました。子供たちは仲良くなって一緒に走ったりしていました。保護者の皆さんは子供に解説を聞かせたかったようですが、野外に出た子供はそうはいきません。一緒にいることが嬉しくて仕方ないようでした。

 津田公民館の部屋は広めの和室でした。もう11時になっており、時間が1時間しかないのですぐに説明を始めました。まず天秤ばかりです。これは針金を「へ」の字型にし、両端に紙コップをぶら下げるものです。中央部分は木の棒の先に打った釘に架けました。そしてその棒は木箱にテープで固定しました。
「左のコップにドングリを1個入れてみて」
子供たちはそうしました。


「左が下がったよね。重い方が下がるんだよ」
「そうしたら次に左側に大きいドングリを2個、右側に小さいドングリを3個入れてみて」
子供たちは自分の秤にドングリを入れて傾きを見ていました。
 今は学校の理科の時間でも家庭でも電子ばかりを使うようになったので、重さとは電子ばかりに載せて測るものだと思っているので、重さの原理を知ってもらいたいと思いました。重い方が下になるという当たり前のことを体験することが大事だと思います。

「さて、次はやじろべえを作ります」
「やじろべえってなあに?」
「やじろべえはね、今説明するよ。初めに穴を開けたドングリがあるから、これに竹串をつけます。それからドングリにキリで穴を開けて、竹串のはじを差し込みます。これを右と左につけると、ほら、ブラブラと動くね。これがやじろべえ。みんなも作って」
「でもね、これがキリで、先が尖っているからね」
と言って頬に当てました。
「刺さると大変だから、気をつけてね」

ドングリに穴を開ける(撮影、石橋)

ドングリに穴を開ける


これに20分くらいかけました。うまくできたようでした。

やじろべえができた(撮影 石橋)


会場の様子

 ホワイトボードに樹木から落ちるドングリ、赤い実をつける低木を描いて、親植物が果実を作り、動物が運んで種子を運ぶという話をし、
「こういうふうに植物はタネを広げようとします。動物を使う植物もあるけど、風を使う植物もあるんだよ。今日はその代表のアオギリという植物の果実を紹介するね」
と言って部屋の外にある狭い庭のようなところに出ました。
 アオギリの果実はとても変わっていて、大きな中華料理のスプーン(蓮華)のような形をしています。その付け根のほうに数個の種子がついています。これが空中に放たれると重さで付け根の方が下になって落ちていきますが、先端部が広く上に凸にカーブしているので空気を孕んで空気抵抗で止まろうとします。種子は片側が重いので落ちようとする力と左右のバランスのズレで回転が生じます。

アオギリの果実


アオギリ果実が回転する原理

 捕虫網用の金属のつぎ棒(釣り竿みたいなもの)の先にタッパーの箱をつけた道具を使って、アオギリの果実が回転しながら落ちる様子を見る実験をする事にしました。つぎ棒は高いところから落とすためで、さらに高くするために私が脚立の上に乗りました。棒を掲げると高さ3メートル以上になりました。

アオギリの果実を飛ばす実験

そこからアオギリの果実を落とすとクルクルと回って漂うようでした。皆さんから歓声が上がりました。

「あ、飛んでる」

「ではもう一つやってみよう」
もう一つを落としたら、驚いたことにその高さで回転して下に降りるようすがありません。それどころか、しばらく旋回してから逆に上に昇って行くではありませんか。徐々に高さを増して5、6メートルのところをゆっくりと回転して公民館の建物のほうにきました。これには驚きました。
「すっげー!」
「マジックだ!」
と子供たちは大喜び
「みんなにもアオギリをお土産にあげるからね」
「やったー!」


それからもう一度部屋に戻って最後の話をしました。センリョウを示しながら
「今日、いろいろな実があったけど、赤いのが多かったでしょう。なんでかなア」
と言ってクリアファイルに赤い丸いシールを貼ったものを見せました。その背後に手持ちのホワイトボードの裏側のコルクの面を置きました。
「これだけと目立たないけど、こうしたらどうかな」
とホワイトボードに緑色の葉を貼り付けたものを背後に置くと、目立って見えました。

 

「私たちが見ても緑の葉に赤い実があるのはきれいです。だからナンテンやマンリョウは正月の床の間に飾ったりします。これはいかにも日本の伝統的習慣に思えます。でもこれはヨーロッパでも同じで、クリスマスには緑の木に赤い飾りをつけて、緑と赤をクリスマス・カラーと言ったりします」
とこれは大人向けに話しました。
「ただ、木の実は人のために赤いわけではなく、自分の種子を取りに運ばせるための仕掛けなわけです。確かに緑の中の赤い実は目立ちます*。でも、イヌツゲやネズミモチのように黒い実もけっこうありました。黒は人の目には目立つようには見えませんが、研究によれば鳥の目は感じる波長が違って黒も目立つんだそうです。だから植物は鳥に向かってアピールしてるんですね」

* この文章の最後に、赤い実を集めてみました。
「ナンテンみたいに赤くて小さい実が多かったけど、花はいろいろです。大きいのもあれば、小さいものもあり、形もさまざまです。それは系統が違うからで、それでも同じようになるのは、それが有利だからと考えられています」
「今日はいろいろな果実を集めたけど、そのほかにもスタッフの人が色々集めてくれたので、あちらの机の上におきました。どれでもいいから選んで、実の中にどういうタネが何個入っているか調べてみて」
と言ってピンセットを配りました。
 しばらく作業をしていましたが、カラスウリの7個から11個までとか、ジャノヒゲの1個とかいろいろな結果がありました。

カラスウリの種子を数える

その間にカマツカの実をかじってもらって、リンゴのような香りがするのを体験してもらおうとしたのですが「まずい」という子がいたので、食べない子の方が多くてこれはうまくいきませんでした。多分いまの子供は飴とかお菓子しか食べないので、「不純物を含んだ」味というのを知らないからそういう味は「まずい」と感じるのだと思います。

 
手作りの箱に入れた果実(撮影 高槻/ 石橋)

 時間がなくなってきたので、忘れていたサプライズを紹介しました。
「あのね、先生はシカの研究をしているんだ。それで今日の内容とは関係ないんだけど特別にシカの角を持ってきました」
と言って頭に1対の角を掲げて
「みなさんこんにちは」
とお辞儀をしました。


「うわ、すごい!」
と大人からも歓声が上がりました。
「これが春になるとポロリと落ちて、またニョキニョキと伸びるんだよ。不思議だよね。さっきのアオギリの果実がクルクル回ったとき<マジックみたい>と言ってる子がいたけど、シカの角も不思議なもので、自然界にはたくさんの不思議なことがあるんだよ」



 時間が押してきて11時55分になったので、片付けをすることにしました。感想文を書いてもらい、果実をお土産にしてもらって解散としました。
 
 野外で果実を採集し、遊びながら学ぶという狙いからすれば、まずまずのものになったように思います。ただ慌ただしくてやや消化不良気味になったのは反省点でした。この観察会が子供たちにどのくらいのものを残したかはわかりませんが、植物っておもしろいなと感じてくれれば嬉しいことです。

 準備をされたリー智子さん、協力いただいたスタッフの皆様*にお礼申し上げます。多くの写真は豊口信行さんの撮影です。ありがとうございました。

*スタッフ:足達千恵子、豊口信行、平沼みなみ、坂本有加、長崎 薫、伴かなこ、藤本 優、山岡信貴

*********************
玉川上水以外の場所で採集したものも含め、赤い実とその種子を並べてみました。


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