自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

アファンの森 9

2020年12月12日 | アファンの森


ゲストハウスの向かいに「松木小屋」があります。今は退かれましたが、アファンの森を作ったといってよい人です。森を知り尽くした人で、昔風の頑固な人でした。口が悪いのなんのと言ったらありません。
 ある著名な植物学者がアファンの森に来たときのことです。それは冬だったそうですが、松木さんはその研究者に向かって
「あんた、この木を知っているかい」
と聞いたそうです。
「いや、今は冬で葉がないから、春になればわかるんだが・・・」
というと、松木さんは
「ああそうかい。あんたらは冬の木は見ないのかい」
と吐き捨てるように言ったそうです。そういうことが何度かあったらしく、私がアファンの森に行き始めた時は大変でした。難問を出して、私が口籠っていると
「そんなことも知らねえのか」
とニヤリと笑います。
何度かそんなことがありましたが、植物や森の話をしているうちに次第に気持ちが通じるようになりました。あるとき、私がナツエビネを見つけました。と言ってもその時は名前がわからず、でもランであることは分かったので、調べてナツエビネだということがわかりました。そのことを松木さんに話すと、
「そんなのまだ見たことないぞ」
とその場所に連れて行くように言われました。
現地に行くと
「ああ、これは今まで見たことがないな」
と言って、この辺りからよく声をかけてくれるようになりました。とはいえ、口の悪さは相変わらずで
「そんなことも知らねえのか」
は続きましたが、その会話を楽しんでいるようでもありました。
コメント
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