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リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

現代音楽、紅テント、古楽復興、ぴんからトリオ、ユーミン、ビートルズの時代(下)

2022年07月06日 20時58分08秒 | 音楽系
そして古楽復興のムーブメントが日本でも火が付き始めたのもこの頃です。古楽の演奏家が昔も今もタキシードを着てコンサートをしないのはその頃の時代潮流(権威主義をぶっこわせ、みたいな)を反映していたのがハシリだった感じがします。当時クラシック音楽の演奏家はバシッとタキシードで決めていたものですが、古楽の演奏家がそういった雰囲気だったので私自身タキシードは一着も持っていません。最近では指揮者でも普通のスーツで登場したりしますが、逆にタキシードで決め込んでリュートリサイタルというのもアリかも知れません。

その頃の流行音楽シーンを見てみますと、?わーたしーがあああ~~さーさあああげーえた、で始まるぴんからトリオの女のみちが1972年、ユーミンがデビューしたのも1972年です。その当時大半の人がユーミンの斬新さになびいたのかというと、私の知っている限りではそうではありません。その10年近く前のビートルズの音楽に全若者が心酔したのではないのと同様、ユーミンもどちらかというと知る人ぞ知るに近かった感じがします。

よく70歳前後のおっさんがオレはビートルズ世代や、なんて若い人に吹聴しているのを見聞きしますがほとんどの場合それは勘違いかウソです。私が中学生のときビートルズの音楽が大好きだと言う人は学年に1,2人でした。まぁ田舎だったからそうだったかもしれませんが。ビートルズが若い世代のみならず全世代に浸透していったのは解散後で、それは彼らの音楽がすでにある種のお墨付きを得てからの話です。

これまでに挙げてきました松下眞一をはじめとするアヴァンギャルドの音楽(いわゆる現代音楽)、ビートルズ、唐十郎の紅テント、ぴんからトリオ、フォークゲリラ、古楽復興、ユーミンが混在していたのが、60年代から70年代初めにかけての時代なのです。古楽復興やユーミンといういままでにないスタイル受け入れ始めたのは決してこの混沌とした時代と無関係ではないのです。

それらは時代のカオスを揺りかごに生まれ育ってきたと言えます。翻って現代も混沌としている時代だとよく言われますが、60年代70年代のとは様相が異なり目に見えないところで大きく変化しているような感じです。この時代が新しい文化を揺籃しているのでしょうか。60年代70年代当時には見えなかったものが50年後には見えてきたと同じように、その答えは50年経ってみないとわかりません。