リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

メンデルスゾーン上演稿によるマタイ

2009年04月05日 22時11分46秒 | 音楽系
BCJのマタイ、なかなか興味深かったです。(2009年4月4日しらかわホール(名古屋))この上演は、19世紀におけるメンデルスゾーンの上演稿をもとに行われまして、楽器の編成、各部の構成がオリジナルとあちこち異なっています。

いわばメンデルスゾーン編曲によるマタイ受難曲といった趣です。オーボエ系の音の低い楽器のかわりにクラリネットが使われていましたし、通奏低音はオルガンとかチェンバロ、テオルボといった楽器ではなく、チェロ2台とコントラバスでやってました。もちろんこの通奏低音はきちっと楽譜に書かれていたもので、バロック時代の通奏低音の演奏の仕方とは異なります。(バロック時代は、和音楽器の通奏低音奏者の楽譜には和音を表す数字を伴った低音だけ(場合によっては数字もない場合も)が書かれていて、奏者はそれを見て、和音やメロディを入れる)

エヴァンゲリストの「語り」やアリアもいくつか省略されていました。第1稿ではリュートがオブリガート楽器になっていた、第57曲バスのアリア「来たれ、甘き十字架よ」はばっさりと削られていました。このリュートによるオブリガートは、現代において一般的に使用される版(最終稿)ではヴィオラ・ダ・ガンバに変更されていますが、それをさらにチェロに編曲してもうまくいかないと判断したのでしょう。メンデルスゾーンの時代にはもうヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ましてやリュート奏者はいなかったでしょうから、いたしかたありません。ちなみに最後のリュート奏者といわれるクリスティアン・ゴットリープ・シャイトラーは1815年没です。シャイトラーがもう少し長生きできていれば、この公演に参加できたかも。(笑)

はじめてのマタイがこの公演の方は、一般とは少し異なるイメージを持ってしまったかもしれませんが、この特別なマタイ、なかなか魅力的でした。