拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

ミシェル~ミサソレのソロ・ヴァイオリン~おしどり夫婦の成行き

2021-05-27 08:36:42 | 音楽
「ミシェル」というフランス名は男女共用(綴りは違うらしいが発音は同じ)。かつて、そのことでイージマ少年は混乱した。ビートルズが「ミーシェール」と歌う相手は女性なのに、映画「禁じられた遊び」でポーレットが「ミシェール」と呼びかける相手は男の子である。因みに、私が最初に口にしたある程度まとまったフランス語はビートルズのミシェルの歌詞である。♪ミーシェール、マーベール、そんでー、僕ー……と歌っていた。「ミシェル」の元は言わずとしれた「大天使ミカエル」。英語名は「マイケル」であり、アメリカで「マイケル」と言ったら男性。「ミシェル」は女性である。だから、マイケルとミシェルが結婚すると、夫婦同姓ならぬ同名となる。恥を忍んで告白。「ミッキー」が「マイケル」の省略形だと初めて知った。恥ついで。これも告白しよう。10代の私は、音楽については独墺一辺倒の当時の風潮にどっぷりはまっていた。だから、ベルリン・フィルのコンサートマスターが「ミシェル・シュヴァルベ」と聞いて、え?なんで、世界に冠たるドイツのオーケストラのトップがフランス人なの?と、不満であった。仕方がない。子供は馬鹿なものである。馬鹿を直すのは大人の役目であるが、当時、私の馬鹿を直す大人が私の周りにはいなかった。最近、カラヤンが60年代に録音したベートーヴェンのミサ・ソレムニスの録音を聴いた。子供の頃、レコード屋でもらうグラモフォンのカタログにでーんと載ってたやつである。批評家の某大先生に洗脳されてアンチ・カラヤンになり(馬鹿な子供をだます大人は大馬鹿である)、ミサソレについてはベームが愛聴盤になっていたから、この録音をまともに聴かずにここまで来ていた。今回聴いて、ベネディクトゥスのソロ・ヴァイオリンの最初の音でノックアウトされた。シュヴァルベである。因みに、この方は、ポーランド生まれのユダヤ系であった。「ミシェル」という名前で出身地を推し量ることはできない。その前に、フランス系で悪いはずはない、ということである(半世紀前の私に対する説教)。ところで、この録音は、歌のソロがこれまた素晴らしい。ヤノヴィッツ、ルートヴィヒ、テナーは、な、なんとヴンダーリヒ!!!、そしてヴァルター・ベリーという布陣である。ヴンダーリヒのミサソレを聴けることでもこの録音は相当な価値がある。因みに、ルートヴィヒとベリーはこの頃は相当なおしどり夫婦で、どこでもかしこでも一緒だった。私の音楽仲間にもそういうカップルが何組もある。だが、ルートヴィヒとベリーはその後離婚。とたんに、同じレコードで二人の名前を一緒に見ることがなくなった。見事な変わりようである。最後にもう一度「禁じられた遊び」について。ラストで、「ミシェール、ミシェール」と呼んでいたポーレットが最後に「ママー」と言うのが印象的(子役が芝居を忘れて本当の「ママ」を呼んだのだろうか)。雑踏に紛れてしまったポーレットがあの後どうなってしまうのか、と心配させて終わる本作は罪な映画である(そもそも、全編「罪」である)。この映画は、イエペスのギターが有名だが、撮影にお金がかかりすぎて、オーケストラを組めなかったのでギター・ソロになったという。そう言えば、中学のときクラスでギターが大はやり。私も例外ではなく、休み時間に「禁じられた遊び」を夢中になって練習したものである。