拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

ヴンダーリヒとF・ディースカウの発音

2015-10-19 17:09:58 | 音楽
(承前)で、ベームのマタイの最大の注目点のヴンダーリヒのエヴァンゲリスト。おおっ、ちゃんとエヴァンゲリストを歌っているではないか(大歌手に対して失礼しました。いえ、ヴンダーリヒのエヴァンゲリストってイメージになかったので。この人、ドイツの歴代のリリック・テナーの中では一二を争う美声の持ち主。パヴァロッティは、自分のお手本としてこの人を挙げている。私が最初にレコードで聴いたのは、やはりベームの魔笛だった。)。ただ、いつも聴いてる人たち(ヘフリガー、シュライアー、プレガルディエン等々)と比べると、フレーズの頭のアクセントが強い。語尾の子音は誰よりも明瞭。だから「きれがいい」感じがする(だから「よい」というわけではないが)。そして、その発音は徹底した歌唱ドイツ語のもの。語尾の「r」は必ず「ル」。これに対し、フィッシャー・ディースカウなどは、リートの神様と言われているが、その発音は必ずしも歌唱ドイツ語のそれではない。例えば、マタイの「イエスを帰せ」では「mir」を「ミア」と言ってる。歌うときは「ミル」の方が楽な気がするが、やはり日常使う言葉がドイツ語の人こそ会話的な発音が多くなるのだろう。コロラトゥーラのダムラウも、夜の女王のアリアに出てくる「nimmermehr」を「ニンメルミール」とは言わずに執拗に「ニンマーメアー」と言う。

イエス役にベームの趣味(マタイ受難曲)

2015-10-19 14:54:59 | 音楽
カール・ベームが指揮したマタイ受難曲(バッハ)のCDがきたので早速聴く。小細工なしで淡々と進むうちに音楽が大きく盛り上がるところなんざベームの面目躍如。コラールをロマンティックに聴かせるあたりは近代物を振る指揮者だなーと思う。なによりもベームらしいのはイエス役のバスにオットー・ヴィーナーを起用した点。ハンス・ザックスを持ち役にするようなヴィーナーの声は「おじさん」ぽくて、他の演奏、特に最近のピリオド演奏で聴くイエスとはまったく異なる。ベームはオペラでも「でっかい声」が大好きだもんな(ニルソン、ジョーンズ、キング、タルヴェラ等々)。その点、同じ近代物の指揮者でもカラヤンは細い声の歌手を好んで起用するから、バッハの演奏でもソロは違和感がない(続く)。