拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

神々の長からしてこれだから

2012-12-29 23:39:04 | インポート
姦通罪のことを言うんだったら、ジークフリートの両親(ジークムントとジークリンデ)は姦通罪ど真ん中。ジークリンデは人妻(夫はフンディング)ですから。怒ったフンディング(Hund(犬)をもじった名前。ヴァーグナーは、犬は嫌いか?)は結婚の神様のフリッカに直訴。で、あれやこれやで(中途省略)ジークムントは死ぬはめになる。けど、そもそも物語の中で、一番姦通罪に問われるべきなのは、フリッカの夫の神々の長ヴォータン(神々の長だから、指揮権発動で罪には問われない)。他所に作った子供の数は、物語の中だけでもヴァルキューレ9人と、ジークムントとジークリンデの11人。あらためて、すさまじいオペラだ。殺人、強盗、不倫のオンパレード。こういう物語に感動してていいんでしょうか(なーんて今更いってもしょうがない。毒が全身に回ってんだから)。昔、マディソン郡の橋って映画がはやったとき、某超有名芸能人のお兄さんが、「だって、これ不倫の話でしょ。そんなの好きじゃない」ってばっさり切って捨ててた。そういうご立派な方もいらっしゃるんですねー。

ジークフリートにもう一つ犯罪成立

2012-12-29 22:46:27 | インポート
指輪では他にも殺人事件があった。こびと族でアルベリヒの弟のミーメは、赤ん坊の時から育てたジークフリートの殺害計画を立て、眠り薬を作ってジークフリートに飲ませて殺そうとしますが、内心をべらべらしゃべちゃって(映画「ロード・オブ・ザ・リング」にそっくりなシーンがあります。)、企みがばれ、逆にジークフリートに殺されます(育ての親子間での殺人劇。おぞましや)。この場合に成立する犯罪についての検討。まず、ミーメ。眠り薬を作る行為は殺人予備罪にあたる。ただし、殺人の着手はないので、殺人未遂罪は成立しません。もし、ミーメが作ったのが毒薬だったら、これをジークフリートに飲まそうとした時点で着手ありとの評価も可能かも知れません。対して、ジークフリート。ジークフリートの弁護人は正当防衛を主張したいところです。正当防衛が成立するためには、「急迫不正の侵害」が必要。しかし、ミーメが眠り薬を飲まそうとした行為が急迫不正の侵害にあたるとは思えない。だって、単に飲まなきゃいいだけですから。したがって、ジークフリートには、ミーメ殺しの殺人罪が成立します。既にファフナーに対する強盗殺人罪が成立してる(この点、後日疑義が生じました。30日の記事参照)。これらは併合罪です。

ジークフリートに姦通罪(あったとして)が成立するか

2012-12-29 16:19:57 | インポート
ブリュンヒルデが可哀想だ、というコメントをいただきました。そもそもブリュンヒルデがハーゲンにジークフリートの弱点を漏らしたのは、夫であるジークフリートが浮気をしたと思ってかっとなったから。では、かりに姦通罪があったとして(韓国にはあるそうな)、ジークフリートに姦通罪が成立するか?構成要件は、「配偶者がある者が配偶者以外の者と姦淫を行う」であり、「配偶者」とは婚姻届出をした者であるとしましょう。成立しません。理由1:ブリュンヒルデとジークフリートは事実婚であり、婚姻届を出してない(岩山でいきなり同棲を始めた。ちなみに、ジークフリートは、岩山の火を超えるとそこにブリュンヒルデが眠っていると小鳥に教えられ(ソー、ドミレー。ドードードードーラレド。)起こしにいきます。にもかかわらず岩山で寝ているブリュンヒルデの鎧をはいだら女性が出てきて「Kein Mann!」(男じゃない)とびっくりするのは変。分かってたんじゃないの?冗談音楽のホフヌング音楽祭では、ここ「Kein Weib」(女じゃない)と歌って爆笑を誘います。長い括弧終わり。)。また、事実婚に類推適用をすることもできません。被告人に不利益に刑法の条文を類推適用することは、罪刑法定主義から許されません。理由2:姦通罪は故意犯であるところ、ジークフリートはグートルーネの薬ですっかり昔のことを忘れてしまってて、自分が既婚者であることを覚えていません。すると、構成要件中「配偶者のある者」の認識に欠けますから、故意を認定することはできません。

指輪の登場人物に成立する犯罪(強盗殺人罪目白押し)

2012-12-29 14:11:01 | インポート
今年、バイロイトのFM放送に指輪は入ってないけど、WOWOWではメトの、NHKBSではスカラ座のジークフリートを放送してくれて。スカラ座の方に出てたライアンは期待のヘルデン・テナー(皆さんは、ジークフリートの第1幕、「ノートゥング、ノートゥング」とゆっくり歌う部分と、「ホホー、ホホー、ホハイー」と歌う部分とどっちがお好きですか?ルネ・コロは、日本でやったソロ・リサイタルのアンコールで後者を歌って観衆のどぎもを抜きました。)。それにしても、指輪は悪人ばっかり。最初、ラインの乙女(男をからかう相当な性悪)から黄金を奪ったアルベリヒは窃盗罪。アルベリヒが黄金を加工して作った指輪を強奪したヴォータンは強盗罪。ヴォータンから指輪を受け取ったファゾルトとファフナー……これは取引だから犯罪は不成立か(指輪をよこさなければフライアを返さないと脅したので恐喝罪の可能性はあり)。仲間割れを起こしてファゾルトを殺して指輪を独り占めにしたファフナーに強盗殺人罪が成立するか。共同占有の侵害が奪取罪でいうところの占有侵害にあたるかが論点。答:あたる。だから強盗殺人罪成立。ファフナーを殺して指輪を手中にしたジークフリートは、これは明らかな強盗殺人罪(この点、後日疑義が生じました。30日の記事参照)。指輪を奪うためジークフリートを殺したハーゲンはどうか?ブリュンヒルデが現れて指輪の奪取には失敗したけど殺人は既遂なんで、強盗殺人罪の既遂犯が成立。そのブリュンヒルデ、ハーゲンにジークフリートの弱点を教えたので殺人罪の幇助罪の成否が問題となる。私は、幇助の意思はなかったようなので不成立と考えます(かっとなって言っちゃったって感じ)。もし幇助の意思があった場合でも強盗幇助の認識はなかったから、殺人罪の幇助罪どまりでハーゲンの強盗殺人罪の幇助にはなりません。

ヒエッ、ヒエッ

2012-12-29 11:04:47 | インポート
昨日は(本物の)第九鑑賞。オケと合唱、とっても良かった。ソリストはでこぼこ。バリトン独唱は立派(体格がそのまま声になったよう)。テナーは、美声なんだけど声量が……と思ったら案の定、行進曲のところで合唱がかぶったら指輪の最後のハーゲン状態(昨日のブログ参照)。それに比べてソプラノはよく通る声で合唱を突き抜けて聞こえてきましたが最後の四重唱のHから降りたFisが低くて残念(ここが決まらないと現代音楽になる、と以前書きました。)。合唱の中には知人がいて、最前列で目立ってました。彼(テナー)が日頃、「バスの連中は、高音をテナーにまかせときゃーいいものを、下手に出すからFで声がひっくり返る」と言っていて、ほんとに、あちらこちらでヒエッ、ヒエッってひっくり返ってて、面白かった。いろいろ書きましたが、熱演。拍手するとき、べとっ、べとっ(手にびっしょり汗をかいてました。自分が歌ったわけじゃないのに)。拍手の中、指揮者がオケを向いて、ソリストも定位置に戻って、おろっ、第九のアンコール?あとにも先にも私が学生のときだけ、と書いたばかりなのに、と思ったら、蛍の光。会場真っ暗になってペンライトが光って、紅白歌合戦のようでした。