鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

俳優座の音楽劇「母さん」を観賞して、プロの公演とはこういうものだと実感した

2024-03-10 | Weblog

 2日は東京・六本木の俳優座劇場で音楽劇「母さん」を観賞した。サトウハチローが愛する母の春をいかに愛したかを綴るいわゆるミュージカルで、劇中で「リンゴの唄」はじめサトウハチローの作った数々の詩を昔懐かしい音楽に合わせて合唱して楽しませてくれた。2019年に初演されて、今回で3度目の公演とかで、会場はほとんどが中年の男女でほぼ満席であった。俳優座の役者はわずか1人しかいなくて他は提携劇団の役者を動員しているのは毎度のことではあり、出演しているなかで知っていたのは母役の土居裕子と主演の浅野雅愽のみだったが、皆歌って、踊って演技力十分の役者だった。

 「母さん」は冒頭にサトウハチローの息子の忠が予科練に入隊したと言い出し、それを許さない父ハチローに姉の鳩子がなんとか認めてもらおうと説得にかかるが、頑として認めないハチローも幼いころに父紅縁に反抗し、警察沙汰を繰り返し、中学を退学し、離島に送り込まれることとなるなどハチャメチャな人生を送ってきたのだった。そしていつしか母の春とも別居することとなり、満足に母の愛を得られないまま、春はハチローが22歳の時に世を去ってしまう。

 そんな数々のハチローと母・春のやりとりを寸劇の形で綴っていき、なかには母春とハチローが互いに乗り馬となって戯れるシーンもあって、いかに母子が仲睦まじく時を過ごしたかがうかがえた。劇中では随所でハチローの作った「長崎の鐘」、「ちいさい秋みつけた」などの詩を舞台の片隅で奏でるピアノとバイオリンの曲の合わせて出演者全員で合唱して、会場を楽しませてくれたのも魅力だった。そして、時には浅草の劇場を思わせる女子3人によるレビューも披露してくれて、目を楽しませてもくれた。

 そんなハチローの波乱の人生をあれこれ紹介しながら、最後にハチローが生涯を終えるシーンで幕となるが、出演者8人がそろってカーテンコールをする段階となって、それまでいろいろな場面に登場した延べ30人を上回る数々の人物がこれら8人によって演じられていたことを思い知り、信じられない思いに至った。さぞかし、舞台の裏では入れ替わり、立ち代わり衣裳を替えて再び舞台に戻り、それぞれ別の約を演じていたわけで、まさにプロの役者であることをまざまざと見せてくれていたことを実感させられた。歌って踊る以外に演劇するということとはこういうことなのだ、と改めて認識させられた思いがした。

 入場の際にもらった公演のパンフレットによると、この俳優座は来年4月を以て閉館となってしまうそうで、その後の公演がどうなるかは書いてなかったが、ここでこうしたプロの公演が再び観賞できることをお願いしたいものだと思った。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10年以上使用しているアッ... | トップ | 何回も経験したズボンの後ろ... »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事