鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

社長公募に踏み切った東証一部上場のユーシンは人材育成を誤った

2010-08-03 | Weblog
 自動車部品メーカーのユーシン(本社東京)の社長公募が話題を呼んでいる。東証一部上場企業が社長を公募するのはあまり例のないことで、それに至る経過が米国のファンドがからんで紆余曲折を経たことが余計に注目を集めているのだ。この10日に公募が締め切られるが、ユーシン側の望む人材が応募さいてくるのか、道は険しそうだ。消費財メーカーならともかく、よそ目にはわかりにくい生産財メーカーの場合業務なり、会社の事情に精通した人材はみずから育成することが求められていることが教訓となっている。
 ユーシンが先月25日付けの日本経済新聞の4面の人材募集広告面の左中央に半5段で掲載された広告によると、「社長候補求む!当社の将来を託す社長候補として優秀な人材を広く募集する」と銘打って、「大卒以上で語学堪能、行動力、思考力に優れ、ブローバル経営を任せられる若手(30~40代)のバイタリティに満ちた方」を期待する社長像といsて掲げている。やる気、自信のある方は是非応募して下さい、社内公募も歓迎として、年収は3500万円以上としている。
 同社は現在76歳の田邊耕二氏が社長を務めているが、高齢で健康に不安を抱えていた田邊社長は4年前に自らの後任探しと引き換えに投資ファンドのRHJインターナショナル(旧リップルウッドホールディングス)から20%の出資を受け入れた。その2カ月後に当初の目論見通りRHJ側は部品メーカーのナイルスの元社長である竹辺圭祐氏が社長としてユーシンに送り込んできた。
 ところが、RHJ側はこの人事をきっかけに業績不振に苦しんでいる傘下のナイルスをいずれはユーンンのもとに引き取らせようと画策した。これを察知したユーシンの生え抜き層が反発し、他にも素行面で問題のあった竹辺社長を最終的には追い出してしまったのだ。これで、田邊社長は再び社長に復帰せざるを得なくなり、RHJとの提携も解消され、後継者探しは振り出しに戻ってしまった。
 それで異例の社長公募となったわけだが、当初は人材ヘッドハンティング会社にも依頼したものの適当な人材が見つからなかった、という。冷静に考えて、たとえ3500万円以上の高収入が約束されているとはいえ、一度手垢についた企業の後継者がおいそれと決まるとはとても思えない。優秀な人材であればあるほど、応募に際しては二の足を踏むことになろう。
 ユーシンは1936年創業の企業で、リーマン・ショック時には業績は落ち込んだが、この2011年11月期には売上高600億円で、営業利益は48億円、連結の最終利益は25億円にまで回復してきている。自動車メーカーがグローバルに事業展開しているのに対応して自動車部品メーカーもそれなりのグローバル展開が求められている。社長の役割りはそのトップセールスを先陣切って行うことで、社長候補としているもののいきなりそその役目を外部に求めるのは筋違いというものだろう。まずは社長室担当役員くらいで、助走をつけてから社長に就任するのが常道だろう。
 そうした人材は社内で予め育成して、数人に絞ったうえで決めるのが一般の企業の人事の進め方である。そうした育成を怠った田邊耕二社長の責は重い、と言わざるを得ない。
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