鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

ピース又吉の芥川賞受賞には異議あり、明日の芥川賞受賞者の意欲を損なったのは否定できない。

2015-07-21 | Weblog

 先日、ことし上期の芥川賞に漫才のピースの又吉直樹の「火花」が受賞することに決まった。漫才師が受賞するのは初めてのことで、意外であるとともに快挙でもある、と広く話題になっている。鈍想愚感子はまだ作品を読んでいないので文学的なことは言えないが、日が経つにつれ、不愉快な気持ちになってきた。小説「火花」はことし2月の文芸春秋社の雑誌「文学界」に掲載され、記録的な売れ行きを示したとしてちょっとした話題になっており、ことしの三島由紀夫賞の候補にあげられていた記憶がある。

 そこまではいいとして、それが一挙に文壇の登龍門である芥川賞をとるとなると、いかにもやり過ぎの感がぬぐえない。芥川賞は少なくとも一度でも作家をめざしたことにある人々にとって最高の栄誉である。苦節何十年もその栄誉をめざして研鑽の道を歩んでいるひとがいっぱいいる。なのにいくら優れているとはいえ、ポッと出の漫才師が栄に浴すというようなことがあっていいものだろうか。芥川賞を選考するのは選考委員会のメンバーである先輩作家の先生であるとはいえ、その背後には主催する文芸春秋社の意向が大きく影を落としている、とみるのはうがち過ぎなのだろうか。このところの出版不況のなか、少しでもベストセラーの匂いのある作品を芥川賞にして、書籍の売り上げを増やしたい、と思うのあh無理からぬところである。

 いままでもここまで露骨な作為はなかったかもしれないが、これに近いような受賞はいくつも見受けられた。過去の芥川賞受賞作家のなかには芥川賞を受賞して以降はさっぱり活躍しなくなった人もいないわけではない。毎年2人、もしくは4人もの芥川賞作家が生まれるのだから、実は受賞した時がピークだった作家もいたこともありうることである。ほとんどが受賞まで無名だった人がいきなり、世間の脚光を浴びて道を踏み外すような人も出てくることだろう。

 今回のピース又吉氏の受賞を受けて、ワイドショウの司会の宮根誠司氏が「芥川賞と書店の店員が選ぶ本屋大賞との差がなくなった」と語ったり、和田アキ子が「火花のどこがいいのかよくわからない」と語ったことが報道され、一部の顰蹙を買っているといわれているが、もともと芥川賞が一商業出版社である文芸春秋社の選出するものなので、いろいろな思惑が込められるのは否定できないだろう。逆に芥川賞の選出に国や第三者である学者が関与するなどして、文学に公平中立的な要素を求めるのも筋違いだろう。

 芥川賞は純文学作品に、直木賞は大衆小説作品に授与されるというが、時にその区分けが不分明なことがあるうえ、毎半期の芥川賞は一読してみても「なぜ、この作品が芥川賞なのか」と思わせる作品が多いのも事実である。それでも時期がくると注目されるのが芥川、直木賞なのである。毎期、こうした毀誉褒貶を受けながら受賞が繰り返されてきたのが芥川、直木賞なのである。でも今回だけはいかにも文芸春秋社の商魂が目立ち、芥川賞受賞に向けて日夜努力している明日の芥川賞受賞者の意欲をかき乱したのは否定できないことだろう。

追記 文芸春秋9月号の芥川賞発表で「花火」の全文が掲載されていたので、読んでみたが、やはり漫才芸人の一発芸という感じで、なぜこれが芥川賞なのか、理解できなかった。作者を思わせる漫才師の徳永が先輩の漫才師に漫才の弟子入りをして悪戦苦闘する様を描いているが、最後には漫才師を辞めてしまい、不動産屋に就職し、先輩も漫才界から足を洗って、漫才界のOBとなった2人が熱海に静養に行くところで、物語は終わっている。自らの体験をもとに書いた1回切りの作品であることは明らかで、それほど感動するには至らなかった。芥川賞選考委員会の作家のうち賞に値すると推薦しているのは宮本輝、川上弘美、小川洋子の3人だけで、あとはそれほど推しておらず、高樹のぶ子、村上龍、奥泉光は全く評価していない。テレビに出演している現役の漫才師が書いたというのがなによりも後押ししたようで、芥川賞の歴史に汚名となったのは間違いないようだ。

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 潮目は変わった。安倍首相の... | トップ | 創立140年を迎える日本経... »

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2015-08-05 14:05:15
>今回のピース又吉氏の受賞を受けて、ワイドショウの司会の宮根誠司氏が「芥川賞と書店の店員が選ぶ本屋大賞との差がなくなった」と語ったり‥‥

こちらの発言は確か古舘伊知郎氏では?
宮根さんも言ったのかもしれませんが‥
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事