海賊とよばれた男 上 | |
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海賊とよばれた男 下 | |
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やっと読むことができた。超ベストセラー作家百田直樹の話題作「海賊とよばれた男」を図書館から借りることができ、上下巻を一気に読み終えた。
この作品は、小説という形をとっているが、すべて実在した人物がおり、描かれた出来事は全て事実というから驚きだ。主人公の国岡鐵造は出光興産創業者の出光佐三氏がモデルになっており、まさしく出光佐三氏の伝記小説といってもいい。上下巻で合わせて700ページ近い作品だが、最初から最後まで全く飽きることなくぐいぐいと読み進むことができた。
国岡鐵造は、父親から「一生懸命働くこと」「質素であること」「人のために尽くすこと」の三つを厳しく教え込まれたという。その教えは、生涯変わることはなかった。創業した国岡商店においては、店員(社員ではなく店員と呼ぶ)すべてが店主(社長ではなく店主)の家族であり、全員を信用しているからタイムカードや定年はなく、どんな店員でも解雇することはなかったという。その理念は、大企業になっても変わらず、店が傾きそうになった時でも自分の資産を削っても店員には給料を払い、店員が出兵している時でさえ、家族に給料を払い続けたというから驚きだ。過去にも現在にも、こんな経営者がいただろうか?労働組合もない会社ながら、店員は店主を親のように慕い、店主のためならばと身を粉に働いたというから、よほど人間的魅力にあふれた人物だったのだろう。国岡商店には、いろんな圧力や困難が降りかかってくるが、その都度、国岡鐵造の確たる信念のもと、重大な決定がなされ、幾多の困難に打ち勝っていく様は、痛快で気持ちがいい。こんな指導者が、一企業としてではなく、日本の政治の中心にいたら日本のこれからの行く末も大きく希望が持てただろうと思うのだが、政界にはそんな人物が見当たらないのが、残念なところだ。
後半では、世界をあっと言わせた「日章丸事件」を題材にとった話がメインとなる。世界一の埋蔵量を誇る油田をメジャーのひとつアングロ・イラニアン社(現BP)に支配されていたイランは、国有化を宣言したため、国際的に孤立し、経済封鎖で追いつめられる。日本が発展するためには、安くて良質の石油を調達しなければならないと考えた国岡鐵造は、イランから石油を調達するため一隻の日本のタンカー「日章丸」を極秘裏に神戸港から出港させた。イランで無事石油を調達した「日章丸」は、妨害しようとするイギリスの軍艦を見事に振り切り無事日本に帰ってきたというから、凄い話だ。これは実話だが、正直言ってそんな事件があったことなど全く知らなかった。この「日章丸事件」によって、日本の海外からの石油の調達の道が開けたといってもいい。まさに、日本経済復興の足掛かりを国岡鐵造が作ったのである。このあたりは、読み始めたら止まらない。理念を持った人物には、運命も味方するものである。すべての出来事が奇跡のような具合にうまく運んでいく様子は、我々読者にも大きな感動を与えてくれた。
小説に書かれた出来事は、事実とは言うが、ある程度は美化された部分もあるかもしれない。しかし、それにもまして日本のためにと私利私欲を捨てて一大石油会社を作り上げた国岡鐵造という人物の偉大さ、素晴らしさを多くの人に知ってもらいたいと思いこの「海賊とよばれた男」を書き上げた百田直樹の思いも大いに伝わってきた。本屋大賞をとった作品でもあり、ベストセラーとなったのも十分納得できた作品だった。
明治維新後の日本の教育が、あったからだとも思います。
維新後は、教育制度自体が出来ておらず、海外に追いつく為に私学では、外国語や外国文化教育が積極的に行われ、昔からの文化が、急速に消え行ったそうです。
明治天皇が憂いて・・としていますが、かつての政治家が憂いて当時の文部大臣等が、策定したのが、『教育勅語』だとうです。現代文で読むとしっかりとした道徳文です。
その後、教員教育に使われていた『終身論』が、尋常小学校で終身という授業となったのですね。(戦時下では、軍事政権下の際に終身は書き換えられ兵隊の話しを取り上げたのがアメリカには、脅威だったのでしょう。)
終身論とは、福沢諭吉先生が、アメリカの経済学書を訳した際に『モラル』という言葉から『終身』と言う言葉をつくり広めたとされています。(モラルトレーニングセオリー=終身論)
古い終身は、読んだ事がありますが、戦前生まれの私の父親や母親が話してくれた言葉や立派な人物が書かれていました。
現在でも通用する立派な道徳教育本だと思います。
私達年代は、その教育を受けていませんが、その道徳力は親より受け継いでいるようです。
出光佐三氏もそうですが、松下幸之助、稲盛昭夫、本多宗一郎等も立派な経営者です。
豊田佐吉なども国の為にと発明に取り組んで居りました。
しかし最近は、会社利益や出世欲の為に社員や経営者のモンスター化が進んでいると憂いている人もいます。
百田尚樹氏が取り上げ、小説化した『出光 佐三』もテレビでヒットした『半沢直樹』も現代の乱れた会社や社会の現象を反映しているのだと思います。
ただ、国岡鐵造が、父親から「一生懸命働くこと」「質素であること」「人のために尽くすこと」の三つを厳しく教え込まれたという点に関しては、納得できます。
今の時代、利益や出世のためなら他人を顧みないという風潮があふれています。
儲かれば何をやってもいいとか、楽して儲けようという考え方を持った人々が多すぎます。
多くの人々に、国岡鐵造という素晴らしい人物が日本にいたという事を知ってほしいものだと思いますね。
出光のメインバンクは、旧S銀行と旧T銀行でしたので、この本の中の話はよく知ってゐます。タイムカードや労働組合、召集中の社員の給料などは普通のことで、もっとすごいのは、社員の給料は(能力だとか実績だとかが基準ではなく)「家族の数によって決まった」といふもの。これはすごいですね。さすがに上場した今では、さうではないと思ひますが。
百田尚樹は、私と同じ年です。下積みの生活が長かったので、文章は簡潔でうまいですね。しかもジャンルが悉く異なってゐます。
「海賊~」「永遠の0」「ボックス」「モンスター」など、一人の作家が書いたものとは思へない。「永遠の0」は12月に映画化されるやうですが、これも泣けるハナシです。少々、つくりすぎ、できすぎの感もありますが。
その同級生も、就職したてはそんな雰囲気の会社で仕事をしていたのでしょう。
百田尚樹作品の「永遠の0」「モンスター」は、まだ読んでないのです。
早く順番が来ないかと図書館の連絡を待ちわびています。