とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「とっぴんぱらりの風太郎」 万城目学/著

2014-02-05 22:26:06 | 読書
とっぴんぱらりの風太郎
クリエーター情報なし
文藝春秋


2014年の本屋大賞と直木賞にノミネートされた万城目学の「とっぴんぱらりの風太郎(ぷーたろう)」を読んだ。この人の作品は、実在の出来事の中に、奇想天外な非日常性な出来事が混在する不思議なお話が多い。いわゆるファンタジー小説のジャンルになると思うが、読みだしたら止まらない面白さがある。その作風は、「万城目ワールド」と呼ばれ、結構気になっている作家だ。今までに読んだのは「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「プリンセス・トヨトミ」「偉大なる、しゅららぼん」等だ。「偉大なる、しゅららぼん」は、来月には映画が公開される。

さて、「とっぴんぱらりの風太郎」の時代背景は、豊臣から徳川へと遷ろうとしている頃だ。主人公の風太郎は、伊賀忍者であったが、重なりあった不運の末に伊賀を追い出され、京でぶらぶらとその日暮らしの生活を送っていた。今でいうニートな若者であった。しかし、不思議なひょうたんとの出会いから、奇妙な運命に突き進んでいく。やがて迫る戦乱の気配。だましだまされ、 斬っては斬られ、というハードな展開になっていく。不思議なひょうたんに導かれ、炎上する大坂城での最終決戦の決着はいかにというお話だ。

かなり分厚い本で、740ページもある大大大長編小説である。しかも上下ではなくこれで1冊だから、読み始めるのも覚悟がいる厚さだ。しかし、読み始めたら続きが知りたくて止められず、3日くらいで読み終えてしまった。「とっぴんぱらりのぷー」という言葉がある。これは、秋田の民話のしめくくりの言葉で、「これでおしまい」「めでたしめでたし」などの意味がある。作者は、最後に「めでたしめでたし」という意味でこのタイトルにしたのかもしれないが、そうは思えないという人もいるようだ。最後は、結構切ない終わり方であり、主人公に感情移入してきた人にとっては、やるせなさが残る。しかし、忍者の生き方はこれしかないのだと思えば、作者の意図もうなずける。むしろその先の未来に光を当てた終わり方で、「めでたしめでたし」だったのだろう。

登場人物は、ほとんど忍者ばかりだ。ニート忍者の風太郎の他、南蛮育ちでお調子者だけど気のいい黒弓、泥鰌髭の忍仲間蝉左衛門、女装姿に黒弓が惚れ込んでしまうが、実は男の忍びである常世、美人で冷酷だが風太郎を気にかける百市、風太郎のことが気になっているのにぶっきらぼうな態度を取ってしまう少女芥下など個性的なキャラクターが丁寧に書き込まれている。敵対する忍者には凄腕の残菊をはじめとする強敵が最後まで風太郎たちを追い詰める。そして、ひょうたんの精というべき因心居士と風太郎の掛け合いが面白い。

風太郎は、因心居士の導きによって、太閤秀吉の妻ねね様に出会い、「ひさご様」と呼ばれる巨漢の公家(実は秀吉の跡継ぎの秀頼)と関わり、次第に豊臣家への滅亡の道に絡んでいく。前半は、ニートの風太郎がひょうたんを育てながら、成長していく過程が描かれている。そして、後半は、大阪城での徳川と豊臣の最終決戦となり、つぎつぎと主要な人物が死んでいってしまうハードな展開だ。ただ、深読みするとこのお話は、400年後の「プリンセス・トヨトミ」に繋がっているともいえる。「プリンセス・トヨトミ」を読んだ人なら、きっと「とっぴんぱらりの風太郎」を読んでみたくなるはずだ。

尚、出版社のPR動画を載せたが、この中で「その時、1人VS10万人」というキャッチコピーが出てくる。私はこのキャッチコピーに特に興味を惹かれたのだが、これは全くの誇大広告であった。これでは、まるで風太郎1人で10万人の兵と戦うのかと思わせる。しかし、実際は、納得できる範囲内での戦いであった。

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