とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「男と女」古今亭志ん輔さん

2014-08-22 18:40:08 | 社会人大学
8月最後の社会人大学は、落語会だ。今回で4回目となる落語家の古今亭志ん輔さんが登場した。今回は、どんな噺になるかと期待していたが、一番目のお題が「試し酒」で、2011年の時に聞いた噺だった。

内容はと言うと、こんな噺だ。

病気が治った近江屋が、見舞いに来てくれた返礼に坂倉屋を訪ねた。近江屋が、唯一の飲み友達だった坂倉屋は、喜んでお祝いに一献やりましょうと勧めたが、近江屋は、近頃すっかり飲めなくなったと断った。「大酒飲みの近江屋さんが、そんなことはないでしょう。」となおも食い下がった。近江屋は、大酒飲みといえばお供の下男が床上げの際、五升は飲んだと坂倉屋に話した。坂倉屋は、その下男に会ってみたいから、ここに呼んでくれと言う。呼ばれた男は、田舎から出てきたばかりという素朴な男で身体は小さく、坂倉屋は五升の酒を飲むとは信じられない。坂倉屋は、この人には五升は無理だという。しかし、近江屋は、どうしても飲むと言い張るので、二人で飲めるかどうか、賭をすることになった。下男は、「五升と決まった酒を、計って飲んだことがないので、わからねぇだ」という。坂倉屋は、「もし、今ここで、見事五升の酒を飲み干したら、褒美をやる」。それを、聞いて下男は喜んだが、飲めないときは近江屋が坂倉屋をご馳走するということになった。下男は、飲めないときは、旦那が損をする。飲めるかどうかおもてに行って考えさせてくれと言い、しばらくすると下男が帰ってきた。やがて「五升飲む」という賭が始まった。坂倉屋自慢の一升はいる大きな杯で、一升、二升、三升と飲み干して上機嫌な下男が、ついで四升も飲み干した。そして、最後の一升も一気に飲み干してしまう。驚いた坂倉屋は、下男に質問した。「おまえさん。酒のうーんと飲めるまじないか何か知っているんだろう。それを、是非教えてくれと、頼みこむ」。下男は、「そんなものは、何もねぇーだ!」。坂倉屋は、不思議な顔をして「それじゃあ、何だって、おもてに行って考えていたんだい?」。すると下男は、笑い出して「なぁに、五升と決まった酒が飲めるかどうか、わからねぇから、さっきおもての酒屋で、五升飲みに行ってきたんだ」 (2011年のブログから)

前にも聞いた噺だなあと思ったが、何度聞いても面白い。特に、志ん輔さんの芸が細かい。下男が、酒を一升ごと飲み干していく様子が、本当にうまいのだ。扇子を盃に見立てて音をたてながら飲み干していく動作が、本当に酒を飲んでいるように見える。げっぷを出したり溜息をついたり、扇子をうまく使いこなし顔の表情やら手の動きも芸が細かい。

休憩後の二つ目の話は「唐茄子屋政談」である。これも昨年聞いた噺で、上下二つに分かれる人情話だが、通しで最後まであった。内容は以下の通り。

上(2013のブログから)
道楽が過ぎた若旦那、勘当されても「お天道さまと米の飯はついて回る」とうそぶいて反省の色がない。だが、ころがりこんだ先の友人たちからも見放され、親戚を頼っても相手にされず、とうとう宿無同然となって吾妻橋から身投げしようとするところを、偶然通りかかった叔父に止められる。「お、叔父さん……! お願いです、助けてください」「なァんだ、てめえか……止めるんじゃなかった。さ、飛び込みな」口では散々悪態をつくものの、その実甥の行方を心配し続けていた叔父の家に連れて行かれた若旦那は、心を入れ替えて何でも叔父のいう事を聞くと約束する。翌日若旦那は叔父に言われて天秤棒を肩に、慣れない唐茄子の行商を始めるが、肩に食い込む重さのあまりに「人殺しィ!」と荷を投げだす始末である。通りかかった人たちの情けで唐茄子を買ってもらい、今更ながらに人情の温かさを味わうのであった。だが、昔覚えた道楽は忘れることができないもので、売り声の稽古をしようと吉原田舗に来かかると、ついつい花魁との甘い思い出に浸って一人で惚気てしまう。

下(2013のブログから)
気を取り直した若旦那は、その内に三ノ輪の裏長屋を通りかかり、ぼろをまとってはいるがどこか品のあるおかみさんに呼び止められて唐茄子を売る。夫は浪人で今は遠くで行商をしているが、うまくいかないのか送金が滞っているという身の上話を聞き同情した若旦那は、お腹をすかせた子供に自身の弁当を食べさせ、「おあしはいりませんから。ここにわずかながらお金があるんで、これを差し上げます。これで何か買ってくださいまし。」と唐茄子の売り上げを無理強いに渡して去る。涙を流して喜ぶ母子。だが、入れ違いにきた因業な大家が、「店賃としてもらっておくよ。」と取り上げてしまう。そうとは知らない若旦那、家に帰って叔父に売り上げを差し上げた事を言うが、「お前、そんな嘘をついてどうする。」と信じてもらえない。やむなく、叔父ともども三ノ輪の裏長屋に来ると、そこは蜂の巣をつついた騒ぎ。聞けば、件の母子が、親切な人から恵んでもらったお金を大家に取られたことを苦に心中を図ったというのだ。幸い母子とも無事だったが、怒った若旦那は大家を殴り長屋の者も加勢する。裁きの末、大家はきついおとがめを受け、母子は叔父の持っている長屋へ引き取られ、若旦那は奉行から青差五貫文の賞金とお褒めを受け勘当も許される。

長い話だが、若旦那が唐茄子(かぼちゃ)をどうやって売って、親の勘当を解くかが焦点だ。道楽者で、人の苦労を知らない若旦那が、一文無しになって初めて人の為になる事をして勘当を解かれるという噺である。この噺では、扇子を天秤棒になぞらえてずっと肩に当てている。時折、「トーナス」と掛け声が出てくるのが、何故か笑える。

最後に、質問コーナーがあったのだが、事務局長から早めに終わるようにせっつかれ困ったような顔をしていた志ん輔さんだったが、さすが噺家である。話術でうまく切り返していたのが印象的だった。

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2 コメント

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落語 (見切り発車)
2014-08-23 19:06:32
あっ、
また 楽しい企画ですね
このトーナスのお話 前回の前半部分 覚えていますよ、
長い人情話だったのですね。
五升の方は落ちに覚えが無くて意外でおもしろかったです。
生に聞ける落語 やっぱり楽しいですね。
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見切り発車さんへ (とっちー)
2014-08-25 23:14:09
返事が遅くなってしまいました。

「試し酒」の下男は、五升どころか十升もの酒を飲みほしてしまうとんでもない大酒飲みだったという噺でした。
意外と面白いオチですね。
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