とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

天空への回廊/笹本 稜平著

2014-11-21 21:31:39 | 読書
天空への回廊 (光文社文庫)
クリエーター情報なし
光文社


笹本稜平の作品は、「春を背負って」を読んで以来二作目となる。週刊誌のブックレビューでこんな事が書かれていたので興味が湧いて読んでみた。

内容(BOOKデータベースより)
エベレスト山頂近くにアメリカの人工衛星が墜落!雪崩に襲われた登山家の真木郷司は九死に一生を得るが、親友のフランス人が行方不明に。真木は、親友の捜索を兼ねて衛星回収作戦に参加する。ところが、そこには全世界を震撼させる、とんでもない秘密が隠されていた。八千メートルを超える高地で繰り広げられる壮絶な死闘―。大藪賞作家、渾身の超大作。

以前読んだ夢枕獏の山岳小説「神々の山嶺」もエベレストを舞台にした山岳小説であったが、内容紹介でエベレストに人工衛星が墜落とあり、単なる山岳小説ではなく好奇心を掻き立てる何かがあるのではないかとピンと閃いて読む事にしたのだ。幸い図書館の予約も入っておらず、すぐ借りることができた。

ページ数は660ページ近くもあり、かなり分厚い文庫本だ。最初の数ページまでは、よくある山岳小説といった出だしだったが、すぐにエベレスト山頂付近に隕石らしきものが落下爆発し、登山中のクライマーが雪崩で何人か犠牲になってしまう。実はその落下物は、隕石ではなく、小型原子炉を積んだ人工衛星が軌道から外れ落下したものだとすぐに明らかとなる。こんなにすぐに落下物の正体をあきらかにしていいのかなあと思ったが、これは、ほんのプロローグに過ぎなかった。とにかく二転三転どころか、四転五転するくらいの先が読めないハラハラドキドキのストーリーであった。

舞台は、8000mを越えるエベレストであり、まさに極限の世界だ。その場所で繰り広げられる山岳サスペンス&サバイバル&アクション小説といっていいだろう。主人公は、真木郷司という日本人のクライマーで、エベレスト登山中の彼が世界の存亡の鍵を握るというからスケールの大きい話に膨らんでいく。人工衛星を回収するために、アメリカ、中国、ロシアなどの超大国の思惑やテロリストの思惑も絡み、一筋縄ではいかないさまざまなトラブルや事件が発生する。とにかくスケールがどんどん広がっていくから、中盤までは読み進めるのも大変だ。

中盤までの話の広がりで中だるみになってしまった感があったが、後半に入ってきた辺りから、中身ががぜん濃くなってきた。薄い空気と極寒の世界での郷司とテロリストとの息をつく間もない戦いに目が離せなくなっていく。笹本稜平という作家は、こんな作品を書いていたのかといささか驚いた。山岳小説としての体裁も十分備え、しかもミステリー、サスペンス、ロマンスの要素を兼ね備えた贅沢な作品である。長い物語で多くの登場人物と、いろんな陰謀・思惑が描かれているが、最後は一つにまとまっていく。最後の最後になって、郷司の思いが達せられたとき目頭が熱くなるほどの感動を覚えた。ストーリー的には、ハリウッドで映画化されてもいいくらいの内容である。この作品、長いから読み終えるのはかなり大変だが、中盤で諦めないで最後までじっくり読んでほしい。凄い作品だったことは間違いない。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
天空への回廊 (見切り発車)
2014-11-27 11:31:02
タイトルからして 面白そうですね、
機会を見つけて私も読んでみます。
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見切り発車さんへ (とっちー)
2014-11-28 23:09:54
図書館で予約すれば、すぐ借りられると思いますよ。
いろんな話を詰め込みすぎかもしれないですが、面白かったです。
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