prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「きさらぎ駅」

2023年06月15日 | 映画
前半、佐藤江梨子の主観ショットで撮っているのだが、サトエリが実際には撮影現場にいなかったのではないか(何しろ写ってないのだから)と気になって困った。POVを使っているのに積極的な理由はないもので。

どれだけ怪異現象が起こっても回想形式をとっている以上、佐藤が生きのびることは割れていると思っていると、だんだんズレてくる。
つまりインタビューしていた恒松祐里が前半の佐藤の話の内容と同じようにきさらぎ駅という存在しないはずの駅から始まる体験を繰り返すことになる。

このあたり、同じような場面をずらしながら繰り返す技法を採用しているわけだが間延びしてると思っているといきなり脅かしにかかるから油断できない。
落とし込む結末も間延びしているのと斜め上なのと同居している。





「ブラッド アンド ゴールド 黄金の血戦場」

2023年06月14日 | 映画
ドイツ軍から一兵卒が脱走するところから始まり、捕まって首吊りの私刑に処せられたのを通りかかった女性に助けられる。
首吊りのリンチというところからしてマカロニウエスタン調で
BGMがマカロニ風だったりディートリッヒの歌だったりするなど、かなり皮肉な効果を狙っている。
ドイツ映画でマカロニというのがすでにミスマッチ。

良い方も悪い方も容赦なく殺され、展開が予想の斜め上をいく。
仇役が大きく二人いて、どちらになるのかでもひとひねりある。





「坂本龍一 PERFORMANCE IN NEW YORK: async」

2023年06月13日 | 映画
演奏シーン、ピアノを普通に弾くところがあまりなくて、つまみをいじってばかりいる。音と動作がシンクロしておらず、呟きのような音が別に降ってくる。
演奏者は坂本ひとり、ピアノの蓋を開けてプリペアード・ピアノ式に演奏しているのだが生の音ではない。

天井にモニターが設置してあって、抽象的な画像を投影している。
演奏以外のシーンは一切ない。






「エンド・ゲーム 最後のあり方」

2023年06月12日 | 映画
まず終末医療を担当する医者当人が両脚と片腕をなくしている、それも医師免許をとる前になくしているという事実に驚く。

同じ終末医療を扱っていても先日見た「最後の祈り」は呼吸器を外すかつけておくか線引きがはっきりしているが、ここで緩和ケアに身を委ねる患者たちにとっては意識がはっきりしている分どこで線を引くのかはっきりしないのがモヤモヤする。




「恋する寄生虫」

2023年06月11日 | 映画
潔癖症の男の子の林遣都がいつもマスクを、視線恐怖症の登校拒否の女の子の小松菜奈がヘッドフォンをしていて、共に何かで顔を覆っているのが象徴的(ヘッドフォンをしていたら音が聞こえないのではないかと気になったが)。

幻覚をCGで表現しているわけだが、これがかなりグロい。
映像自体が原色のライトを当てるなどかなり人工的で、ときどき出てくるテーマパークのヴィジュアルも人工的。

寄生虫というのは半ば現実、半ばアナロジーで、宿主の脳を乗っ取り(おそらく)錯覚としての恋愛感情を植え付けるわけだが、乗っ取られてなお恋愛感情が働いているところがおそらく核心だろう。




「ヘロイン×ヒロイン」

2023年06月10日 | 映画
原題はHEROIN(E)。ヘロインとヒロインとをより直截に結びつけたタイトル。

判事と消防署長とふたりの女性がそれぞれヘロインのオーバードース(過剰摂取)に応対するわけだが、それが男性であった場合どれほど応対が違うものだろうとは思った。

それぞれがガラスの天井を破ってきたには違いないが、北風と太陽のたとえで言うなら太陽にあたるわけで、それが女性ならではの応対というところまでいかない。




「アートのお値段」

2023年06月09日 | 映画
美術が生き残るには商業的価値を持つこと、というある意味倒錯した価値観を堂々と言われるの虚をつかれた。

実際、価値があるから値段がつくのではなく、値段がつくから価値が出るというのは事実なのだ。

アートが多様な価値観を反映しているのは確かだろうが、多様すぎて逆に値段という確固とした数字を必要としているのだろうかと思いたくなる。





「ザ・マザー 母という名の暗殺者」

2023年06月08日 | 映画
ジェニファー・ロペスの暗殺者がFBIに軟禁されていて、態度のでかいFBIがあっさり殺され、オマリ・ハードウィックも殺されかけ、ロペスの元上官ジョセフ・ファインズが妊娠中のロペスのお腹をナイフで刺すがなんとか無事女の子を出産するといった展開はてきぱきしているが、引き離された生まれた子供を守ろうとするあたりから展開にムリが出てくる。

ハバナのごみごみした裏道の追っかけで、バイクに乗ったロペスが自家用車にぶつけたあと文句を言いに出てきたドライバーをぶん殴るのに対して、制服の女学生たちには娘の面影を見たのかイライラしながら待つといった具合にずいぶん態度が違う。

ハードウィックが中途半端なところで殺されてしまう(一本道の俯瞰ショットでいきなり横道から車をぶつけてくるショック効果はいい)ところや、ロペスが思い入れたっぷりに娘と別れた後すぐバイクで追ってくるのにはあれれと思う。

前半と後半が分裂気味で、アラスカで母オオカミが子供を守ろうとするあたりは比喩が効いているが、十二歳の娘が生みの親を初めわからず生まれて間もない自分の写真を見て涙ぐむところはやや駆け足気味。
ろくに闘えもしないのに出しゃばってあっさり捕まるなどどうもはっきりしない。




「The Days」

2023年06月07日 | 国内ドラマ
原発がいったん制御できなくなったら、あらゆる努力や苦労が基本的に徒労と化し、暴走しなくなったのもそれこそ「なぜ」なのか不明のまま、制御できると思う方が間違っているのではないかと思えるほどで、思った時はすでに手遅れということになる。

官邸と東電と現場の間の齟齬を含めて、個人と個人の間の感情とは関係なく(役者たちはそれぞれ好演している)もっと大きなメカニズムの一部として捉えられている。
視点は基本的には引き気味な一方、細部には密着している(必ずしも正確ということではない)。

冒頭の地震と津波を除いてむしろタッチは淡々としており、その後にはひたすら後始末が続く。
いくつかある感動的なシーンも、すぐにダレてきてブレーキがかかる。
意地悪というより、悪意を超えている。

原発事故を扱ったドラマシリーズとすると「チェルノブイリ」があるのだが、あれは大きな軸として党幹部と実務派との対立がはっきりしており、ロシア製ではなく英語作品であって第三者的視点が入っていてメリハリが効いていた。
ここでは官邸、東電本店が半ば敵役だが良くも悪くも両義的で現場の悪戦苦闘とのコントラストでそう見える。

役所広司の無精ヒゲが伸びないあたり、どうハサミを入れてるのかなと思った。
2011年にはスマートフォンが出ていたはずだが、ガラケーが目立つ。




「最後の祈り」

2023年06月06日 | 映画
人工呼吸器を外すかつけたままにするか、究極の選択を迫られる患者とその家族(家族がいない患者もいる)を描く。

気になったのは、かかる経費のこと。
患者のひとりが搬送されるのに二千ドルかかるからと救急車を拒否して自家用車を使い、延命措置を施したが間に合わなかったという事例があった。
日本で救急車がタダというのも決して当たり前ではないのだなと思わせる。

私事になるが、父が亡くなる前に気管切開して人工呼吸器につなぐかどうか選択を母と共に迫られて結局ムリな延命治療はしないと決めたことがあって、結局一日持たなかったが、それを思い出さずにはいられなかった。

患者とその家族が有色人種で、医者が白人女性というのが暗示的。




「ロスト・ケア」

2023年06月05日 | 
映画を先に見たのだが、相当に違う。
まず長澤まさみがやっている検事が原作では男になっている。

検事は性善説をとっているのだが、それが一種傲慢な印象を与えるのに対して、長澤まさみがやると女性ということもあってガラスの天井に頭をぶつけている感じになる。
さらに冒頭のわざと意味を曖昧にしているシーンからして映画の創作。

ドクターキリコみたいに安楽死を選んだ方が楽ではないかという確信犯が出てくるのだが、映画ではそこから後があって、その分ダレもするのだが、犯人と検事の立場が対立よりは親和性が高くなった。



「カルテット」

2023年06月04日 | 国内ドラマ
坂元裕二がカンヌで脚本賞を受賞したので、見そびれていたこのシリーズを見ることにした。
連続ドラマを途中から見るのは気が進まないのだが、今では配信という手がありますからね。

初めから話を割らずにカラオケボックスで四人が出会うところから偶然ではないこと、松たか子の夫を初めのうちに顔を伏せておいて小出しに出してくる。
満島ひかりがもたいまさこに松たか子が犯罪に絡んでいると匂わせる物騒な依頼を受けるところから始まって二転三転する展開。

満島ひかりがテーブルの下で寝ているのが笑わせるのだが、それがその場で終わらないで伏線になっている。

鳥の唐揚げにレモンをかけるかどうかで高橋一生がもめて、あとで宮藤官九郎がイヤがっていたことがわかるあたり(宮藤は高橋とは会っていない)の人物設定のずらし方。

プロとしては四流だなど言われながらバイトしたりしている中途半端なところにある(あれで四流なのかな、と思わないでもないが)。
酷い匿名の中傷の手紙を受け取るのだが、空き缶を投げ込んでくるところも含めて姿を見せない悪意とそれと裏腹に手紙の主自身が自分に嫌悪感を持っているのではないか、と思わせる。

松田龍平がマジメでゴミ出しに厳格なのがなんだか可笑しい。

カルテットとはいっても四角関係にはならない。喋り方が微妙に他人行儀で、それでいて恋人未満、夫婦未満、家族未満になっている。



「The Witch 魔女」

2023年06月03日 | 映画
劇場版が公開中なのだが、これはそれに先立つ一作目。
二時間を超すのもシリーズものとして色々と盛り込んでいるためらしい。
良くも悪くもタメが長いのが目立つ。

主演のキム・ダミの瞳孔の色がときどき緑色になる。ドクターの目の色も文字通り変わる。浜辺美波の目の色が変わることがあるけれど、この場合異常性を強調するためと見ていいだろう。




「マザーズ・デイ」

2023年06月02日 | 映画
ポーランド映画。
元軍人の母親が何かの事情があって身分を隠して幼くて何もわからない息子を養子に出す。息子は明らかに黒人なのに養親は白人というのにも事情があるらしいが、どうもはっきりしない。

冒頭から大勢を相手にした立ち回りになってそれをまともに相手にするものだから、母親の方も強いことは強いのだが、かなりのダメージを負う。
どこか自滅的というかニヒリスティックに見える。

敵役がスキンヘッドだったり変態的なコスチュームだったりと、殺伐としている。ワルシャワ駅ががらんとしているのも印象的。




2023年5月に読んだ本

2023年06月01日 | 
読んだ本の数:20
読んだページ数:3825
ナイス数:0

読了日:05月13日 著者:レマルク




読了日:05月13日 著者:さいとうたかを 池波正太郎

読了日:05月14日 著者:さいとう・たかを,池波正太郎




読了日:05月14日 著者:橋本 ナオキ






読了日:05月16日 著者:横山 やすし




読了日:05月20日 著者:池波正太郎(作)武村勇治(画)

読了日:05月20日 著者:蓮實 重彦




読了日:05月23日 著者:アーサー ミラー




読了日:05月23日 著者:さいとう・たかを




読了日:05月23日 著者:さいとう・たかを




読了日:05月23日 著者:さいとう・たかを




読了日:05月24日 著者:芥川竜之介




読了日:05月27日 著者:ハナツカ シオリ




読了日:05月27日 著者:ハナツカ シオリ




読了日:05月27日 著者:ハナツカ シオリ




読了日:05月29日 著者:諸星 大二郎




読了日:05月30日 著者:葉真中 顕




読了日:05月31日 著者:けら えいこ




読了日:05月31日 著者:けら えいこ