prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「J・エドガー」

2012年02月14日 | 映画
イーストウッド作品に現れる性的な歪みがひさびさに強く出た。ただ、イーストウッドは自分でストーリーを作るわけではないので(一番創造的なのはストーリーを作る人だとインタビューで語っていた)、どういう歪みなのかは必ずしも一貫していない。
「白い肌の異常な夜」の去勢恐怖、「タイトロープ」の父娘相姦願望あたりが強く出た例だが、ここでのマザコン、女装趣味、同性愛とはあまり共通性はない。

強いて共通点を言うなら、その歪みが暴力的な噴出をすることで、思い込みで敵を設定してそれを攻撃することでしか自己同一性を保てない姿がくっきり出た。
全編フーヴァーの語りで回想録風に時制を縫って描かれるのだが、Unreliable narrator(信頼できない語り手)の典型で、画面で描かれたこともどこまで事実なのか怪しい。FBIのイメージはフーヴァーの徹底したメディア戦略によって作られたものというのと対応している。

余談だけれど、「FBI―独裁者フーバー長官」ウィリアム サリバン,ビル ブラウン (中公文庫)によると、ハゲているFBI職員はすべてフーヴァーによって外部と接触する地位から外されていたという。見栄えを考慮してというのだが、ムチャクチャな話だ。

それにしてもアメリカ人の共産主義に対する憎しみや恐怖心というのは、いささか原理主義的に思える。
キング牧師と共産主義者との関係を妄想して恐喝するなどというのも、黒人とアカという反感を持っている二つの対象を感情的に結びつけたものだろう。
思い込みを権力をバックに押し付けるというのは、警察や検察で日常的に行われていることで、権力が絶対化するほど押し付けはひどくなる、というより押し付けることで自分に権力があるのを確認しているともいえる。

母親が亡くなった後のフーヴァーの部屋の調度がゴチック風なのは、「サイコ」を思わせる。
最初の方でフーヴァーが腕時計をしている、そのはめ方が手首の裏の方に盤面が来るのは、女性のはめ方だろう。
(☆☆☆★★)

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