prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「トレジャーハンター・クミコ」

2020年05月06日 | 映画
映画「ファーゴ」のラストで埋められた札束を探しに日本から来てファーゴで死んだOL、という都市伝説の映画化。

「ファーゴ」は実話をもとにしていると冒頭にタイトルが出るが、実はウソであることは知っている人は知っているが、特に公的に訂正しているわけではない。
ドラマ版でも同じように実話がもとと出るが、これはもうほとんどギャグとして出しているので、聖書の奇跡が再現されたり明らかにフィクションであることをむしろ強調しているくらい。

ファーゴの近くで日本女性が死んだのは事実なのだが、映画の札束を探しに来たというのは誤報で、それが独り歩きして都市伝説化したらしい。
虚実が何重にも交錯している。ちなみに、この映画自体はファーゴのあるノースダコタ州の東隣のミネソタ州でロケされた。

前半の日本の場面は極端にセリフが少ない。
ヒロインのクミコは周囲と断絶していて、しゃべる時もほとんど途切れ途切れだし、たまに言葉を交わすのも母親の愚痴と説教と上司の余計な意見と一方的にうっとうしい言葉を押し付けられるか、まったく中身のないおしゃべりかで、非常な孤独なのが綿密に描き込まれる。

日本の場面はもちろん日本ロケで日本人俳優でやっていて、セリフが少ないせいもあるが、描写に違和感はない。
変にエキゾチックな場面を選ばなかったのと、ディスコミュニケーションがモチーフになっているのが逆に働いたか。
あと若い女性を「型にはめる」力の描写だから型通りの描写なのが自然なのだろう。

後半のアメリカに渡ってからは言葉はさらに通じにくくなり、クレジットカードも使えなくなるとディスコミュニケーションはさらに進む。
その上でラストで大きなフィクションが現実化して噴出するという構成。

菊地凛子がいかにもぶすっとして三白眼の可愛げのない感じで、なんとなく日本よりアメリカで活躍している(ように思える)理由がわかる気がした。

VHSからDVDへと移る時期で、何度も見過ぎた映画のVHSテープがのびきってワカメになっているのが、どこか貞子の黒髪のようで不気味。