prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」

2020年05月07日 | 映画
冷戦時代のエスピオナージものの冷やかな緊張感が全編を貫徹していて、朝鮮半島では東西対立は終わっていないことをありありと窺わせる。

腕時計、ネクタイピン、孟子の「浩然の気」といった言葉も含めて小道具の使い方の上手さ。

主演のファン・ジョンミンはメガネをかけると松重豊そっくり。
工作員を演じる俳優は芝居をしている人間をまた芝居しなくてはいけない二重性を出さなくてはいけないのだが、お愛想の振り撒き方から居直り方まで思い切りメリハリをつけているところと、抑制のきいたところを両立させている。

北朝鮮に入ってくシーンなどどうやって撮ったのかと思う。
キ・ジュボンという人が金正日そっくりなので、そっくりさんを使ったのかと思ったられっきとしたキャリアのある役者。

南北を代表対立しながらも腹の底でわかりあっている関係を表に出さずもっぱら観ている者に想像させるよう暗示する手法が成功している。

机に置いた携帯が(まだスマートフォンではない)バイブして鳴ると共にカブトムシみたいに蠢くのが不気味。

1990年代の話とあって、録音に使われるミニテープレコーダーは当然のようにSONY製。