prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「緋牡丹博徒」

2020年05月29日 | 映画
山下耕作といえば、花を印象的に使うのがトレードマークみたいな監督だが、タイトルにすでに花の名前が入っているとあって、ことさらに花とその色の扱いには力が入っている。

タイトル文字が白の時はバックの牡丹が赤、文字が赤の時は牡丹が白という具合に交錯する。赤は一家を女の身で継がなくてはいけない立場の疑似家族の血の色であると共に人を殺す時の血でもある。その手を汚す仕事から周囲の男たちが庇うという構図になる。

ヤクザ映画といったら今風の言葉を使うホモソーシャリティ、つまりは徹底して女を排除した男の世界なのが通常なのだが、その中でいかにもたおやかなヒロインを端然と置いたのが異色でもあるし、その美しさを守るところに男たちの存在意義とナルシシズムを置く。

ヤクザ映画はさまざまな方向に発展したわけだが、ここで端正な様式美という方向で一つの達成をまず示し、加藤泰の「花札勝負」「お竜参上」で様式美と情念の極限にまで至ることになる。