prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ブリムストーン」

2018年03月11日 | 映画
二時間半に及ぶ長尺で、全体が四章構成になっており、それぞれにEXODUS、GENESISといった明らかに聖書的なタイトルがついている。

時間構成も単純な編年体ではなく、新たな章が始まるごとに時間が遡ったりして設定も映像も意表をつき、しかも単純な回想ではなくそれ自体完結したエピソードにもなっていて、その中で冒頭の謎めいたところが説明的でなく解き明かされていく話法が秀逸。

タイトルのブリムストーンとは硫黄の意味だが、当然聖書のソドムとゴモラを滅ぼした硫黄の火からとっているのだろう。
登場する娼館の名がINFERNOというくらいなのだから。

バイオレンスシーンが必ずしも直接描写が多いわけではないのに非常に強烈。
ガイ・ピアース演じる牧師(というか、自ら語る言葉のように偽預言者=偽りの神の言葉を預かる者)が、「ファニーとアレクサンデル」のヴェルゲルス主教(ヤン・マルムシェー)のような継子いじめ(しかもここでは性的虐待すら含む)をするおぞましさは映画的文体の強靭さがなければ耐えられないレベル。
あるいは「狩人の夜」のロバート・ミッチャムのように、いったいどこまで普通の人間なのかそれとも超自然的な存在なのかわからないような感じもある。
子羊を惨殺するのは自らをよき羊飼い=キリストに喩えているつもりか。

ヒロインが猿轡のような器具をはめられたり舌を切ったりしてしてはじめにあるもの=言葉を奪われている存在なのが象徴的。

牧師が処女性にバカにこだわる(なぜ聖母マリアは処女で子供を産むのか)のは命が生まれること=自分の生まれたこと自体に憎しみを持ってるのではないか、と思わせるくらいで、不気味なのはそういう性向を持つ男は割と一般的にいるのではないかという予感を感じされるところ。

主演のダコタ。ファニングが子役時代からのキャリアを持ち、子供だった時の顔を見知っているのが効いている。

キリスト教の持つ暗黒面と格闘している感のある異色ウェスタン。開拓期西部の無法地帯ぶり、暴力がもろに支配力につながっている身が縮むような怖さが良く出ている。

撮影はアメリカではなく、スペイン、ハンガリー、ドイツ、オーストラリアで行われ、監督脚本のマーティン・コールホーベンはオランダ人。清教徒の国アメリカだと、かえってつくりにくいのではないか。
なんだかあっという間に公開が終わってしまったが、強烈な秀作。
(☆☆☆☆)

「ブリムストーン」 公式ホームページ

「ブリムストーン」 - 映画.com



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