prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ゲド戦記」

2006年09月15日 | 映画
宮崎駿の息子というより、庵野“新世紀エヴァンゲリオン”秀明の義兄弟の作、という感じ(「ナウシカ」の巨神兵の作画をしたのが庵野というのは、有名ですよね)。
他者と関係を作ることができずウジウジ悩んでばかりで、相対するのは自分(の影)だけ、追い詰められるとキレるといったあたり、碇シンジとよく似てる(「エヴァ」を通しで見たことはないのだが)。

まあ、今どきよくいるタイプ。
内省的っていうのではなくて、根本的な生命力が足りないものだと思う。エロス欠乏症とでもいうか。恐怖にひきつった顔など、変にジジ臭く見える。
もっとも、それが現代的なキャラクターかというとそうとばかりも言えない気がする。「世界の均衡が壊れている」というセリフは「ハムレット」の「世界の関節が外れてしまったのだ」とまあ似たような意味だろう。

映画自体、技術的には高度だが、あまり見た目の快楽といったものは与えてはくれない。
「テルーの歌」を、伴奏抜きで通しで歌いきったのは、かなり破格の演出。快楽より禁欲に向かったみたい。ただ、アニメのように無生物に命を吹き込むジャンルでそれをやるというのは、自己矛盾がかってないか。

生と死についての対話、というのもリクツとしては一応納得するのだが、あまり見ていて「生き生き」とした感じが乏しいから、コトバの上で滑っている観が強い。
(☆☆★★★)


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