猛烈に情報の密度が濃くて、日本語版にはハングルの字幕が出ないところにも所属部隊ほかの字幕がしばしば出るのが、本来ならジャマになりそうところがかなり理解を助けることになったし、実録ものという印象も強めた。
内容がどこまで史実に則っているのか、根拠は何なのか、どういう打ち合わせを映画公開の舞台裏で進めたのかは気になった。
2時間22分とかなり長いがテンポはものすごく速く、振り落とされてしまいそうなくらいだが、ラスト近くでチョン・ウソンの妻が出てくる以外は男ばかりの出演者ながら印象的な顔を適宜配してあって混乱しない。
「226」では女性の出番がムダに多くてげんなりしたのを対照的に思い出したりした。
大半の人間は強いものに従いたいのだといったファン・ジョンミンのセリフがあるが、ジョンミンの側についた者がそのゴ褒美としてラストで「出世」するのは今の日本の政争、ひいては政官財情学の構造にもそっくりそのまま当てはまる。
問題はその「強さ」がごく限られた範囲でそれ以外を排除した形で担保されていること。
全斗煥 (チョン・ドゥファン)をモデルにしたチョン・ドゥグァン(ファン・ジョンミン)とイ・テシン(チョン・ウソン)が悪と善、やってはならないことに手を染めるのとやるべきことをする代表で、その周辺は階級の上下に関わらずふらふら信念もなく日和見するか威張り散らすくらいしか能がない。辛うじてテシンの部下には軍人としての本分を全うするのはいるのだが、上の命令は絶対の軍隊で上層部自体が分裂しているのだから命令を全うしようがない。
盗聴している男がそれをあまり隠そうともしていないのが不気味。今でも中国では盗聴している男が堂々と割り込んできたりするらしい。