prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「村の写真集」

2005年01月20日 | 映画
あまり普段意識しない日常生活や家族の価値を改めて考えさせる、古典的な日本映画の良さを受け継いだ作り。息子が広い意味で父親の仕事を受け継ぐ一種古めかしい話ではあるが、息子の恋人が台湾系だったり、家を出ている姉の描き方などは現代的。

藤竜也がきちっとかぶっているお洒落な中折れ帽を写真を撮るたびにいちいち脱いで頭を下げる礼儀正しさと、ちょっと小津調のモダニズム。ずっと村にいたわけではなく、東京に出ていた時期があるというのも納得させられる。

ダムで故郷が失われる設定ではあるが、かといって受け継がれるべきものは別の形で受け継がれる描き方。田舎の村だと思っていると時報に使われる曲が「アメージング・グレース」と洒落ていて、しかもそれがなんでもない日常のスナップに重なると“恩寵”という言葉をふっと思わせたりする。

風景がむやみと観光絵葉書的に綺麗でないのが好ましい。父子が黙々と歩く山道を横から撮った、なんでもないようで新鮮な視角。藤竜也や桜むつ子といったベテランが良い意味で素人みたいな芝居をしている。
(☆☆☆★★)


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