prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「父、帰る」

2004年10月16日 | 映画
オープニング、柵に寄りかかってタバコを吸っている母親の姿に、タルコフスキーの「鏡」みたいと思うと、帰って来た父親が裸にシーツをかぶって寝ている姿を足の裏から撮るは、食卓でワインとパンを配るは(最後の晩餐)で、この父親、キリストのメタファーかと思う。もっともこういう話の常で、父親は勝手なことばかりする(そのへんもキリストらしかったりして)。またたいていのシーンが水のそばか雨の中で展開しているのもタルコフスキーと結び付けたくなるが、あまりこだわらない方がいいだろう。

均衡のとれた構図、ゆるやかな横移動撮影、銀残しらしい寒色にグレーが混ざった深みのある色彩(フィルムはコダック)など映像的には魅力あり。

ただ、掘り出した箱の中に何があったのかわからないままというのは、納得できない。父親が体格がよくて遠くで働いていて割と金を持っていて魚を食べ過ぎたから今は食べないなどといったヒントから、だいたい何をしていたかはわかるが、それだけではドラマの売りだけがあって買いがない。
(☆☆☆★)


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