元日の祭事に
お参りさせて頂いた。
この日ばかりは
さすがにどなたも
ハレ着の方が多かったが、
自分も生まれて初めて
胸にポケット・チーフを
挿してみた。
ポケチには
「スリーピークス」や
「パフ」「クラッシュ」「TVホールド」
といったいくつかの形式があることを
『王様の仕立て屋』で知ったが、
初めてで、やはり気恥ずかしいので
控え目な「パフ」にしてみた。
ラペル・バッチも控えめにして、
息子の小学校時代の
学帽の紐止めに付いていた
桜花の紋章にした。
ネクタイが銀糸だったので、
ドレス・ウォッチもそれに合わせ
シルバーとゴールドのメタルにし、
タイネピンとカフリンクスは
フォーマルな黒のオニキスにした。
元日の恒例イヴェントである
ウィーンから生中継の
「ニューイヤー・コンサート」は
もう何十年も観ている。
今年は5回目の
メータの指揮だった。
オケとは53年の永い付き合い
というから、完全に自家薬籠中の
水も漏らさぬ名演であった。
黄金ホールのデコレーションも
毎年の見所だが、今年も
華やか、かつ、エレガントであった。
この舞台に立った唯一の日本人、
マエストロ小澤の超名演は、
永いこと語り草になっている。
そのCDとDVDは
世界的ベストセラーとなり、
かく言う自分も持っている。
最近、ハイビジョン対応の
ブルーレイ版が出たので、
それを買おうかどうか
迷っているところである。
旧版に対して2004年に
アマゾンに投稿したものが、
ベスト・レヴューとして
未だに残っている。
***
「最高のエンターテイメント!! グゥー! (o^-')b」
2004年元旦のアバド指揮ニューイヤー・コンサートを見終わって、
老眼鏡姿で楽譜をペラペラめくり、淡々と指揮するアバドの演奏に
何か物足りなさを感じて、2002年に録画した
小澤のビデオを見直してみた。
全曲暗譜で、しかも踊るような指揮ぶりの小澤の
なんとチャーミングでエレガントな演奏か・・・。
ため息が出た。
繰り返し何度も見て、
翌日にはこのDVDを注文してしまった。
まだ指揮棒を携えていた86年の映像を比較して見たが、
若々しくはあるがどこか振りが硬い。肩が強張っている。
2002年・・・小澤は完全に「全身指揮棒」となった。
まさに心技一体になった見事な指揮である。
長い白髪の一本いっぽんが、拍節に踊る。
ヒラヒラ蝶のごとく艶やかに舞う手の平。
雄弁に語る指先。
お茶目な流し目から、一転して鋭い眼光を効かす。
時に、オケを完全にドライブし、また時に存分に歌わす。
その勘所の冴えは見事である。
時折、叙情的な旋律に目を細める様は、
まるでスターウォーズの
老賢者ヨーダのようにも見えて微笑ましかった。
ウィンナ・ワルツ独特の微妙な拍節を、
小澤はカラダを瞬間停止させることによって表現している。
その様が映像でよくわかる。
『エリーゼ・ポルカ』で、諸手を広げフィナーレを閉める様は、
さながら師匠のカラヤンを彷彿させた。
『こうもり序曲』は見事な名演である。
会場からブラボー! が飛び交う。
お約束の『ラデッキー行進曲』は圧巻である。
あたかも、小澤がオケと聴衆の全軍を率いて
行進している軍神マルスのように見えた。
最後はスタンディング・オベーション!!
紳士・淑女といった装いの観客がみな上気した顔で、
嬉々として拍手喝采を贈っている。
このDVDには「大人の贅沢な楽しみ」が
密に詰まっている。
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