駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』

2023年05月14日 | 観劇記/タイトルか行
 KAAT神奈川芸術劇場、2023年5月13日17時半。

 1930年代のニューヨーク。銀行家を母(中野今日子)に持つボビー(この日は斎藤洋一郎)は、周囲の心配をよそに踊ることに夢中で、ブロードウェイの劇場に入り浸っていた。今夜も彼は、華やかなショーが繰り広げられるザングラー劇場に入り込み、大興行主ベラ・ザングラー(志村要)に自分のタップダンスを売り込もうとして軽くあしらわれる。仲良しの踊り子たちは慰めてくれたが、大事な跡取り息子をショービジネスの世界から遠ざけようとした母親は、彼にネヴァダ州の田舎町デッドロックに物件の差し押さえに行くよう命じる。寂れてしまった金鉱の町デッドロックにたどりついたボビーは、町でただひとりの若い女性ポリー(相原萌)に出会って一目惚れするが…
 作詞・作曲/ジョージ・ガーシュウィン、アイラ・ガーシュウィン、台本/ケン・ルドウィッグ、原案/ケン・ルドウィッグ、マイク・オクレント、原作/ガイ・ボルトン、ジョン・マクガワン、日本語歌詞/和田誠、高橋由美子、日本語台詞/高橋由美子、初演日本版演出/浅利慶太、指揮/上垣聡、演奏/劇団四季ミュージカル・オーケストラ。1992年ブロードウェイ初演、1993年日本初演のミュージカル・コメディ、8年ぶりの上演。

 93年に日生劇場で、03年06年に四季劇場・秋で観ていて、しばらく観てないなー観たいなーでも上演がないなーとか思っていたらこんなに間が空いてしまいました。私はなんというかもっと辛気くさい、深い、せつない、考えさせて泣かせるような作品が好みなのですが、この作品はそういうんじゃなくても例外的に手放しで大好きです。
 ブロードウェイ版CDを愛聴していて、日本語の歌詞は馴染まないような気もしますが、観れば覚えていたり思い出す歌詞もあり、今回も楽しく観ました。ダンスの振りやフォーメーションなんかもけっこう覚えていて、ああずっと変わらず定番ロングランでやってくれる作品ってのもいいな、と改めて思いました。ボビーの母の車からピンクのミニスカートのガールズたちがわらわら出てくるところとか、あの時代のあのラインのワンピースのガールズたちが十人並んでシルエットになってざかざかネヴァダにやってくるところとか、もう大好き!
 歌詞に、韻を踏むためとはいえジプシーとあるのが気になったり(しかし日本語の歌詞には脚韻は馴染まないよね、日本の詩の遊びってもっと類語を並べるとか、なんかもっと違うタイプのものじゃないですかね?)、パッツィ(濱絢音)のボケって結局金髪パープー娘ってキャラってことなんだよな、というのは引っかかりましたが、あとは本当に終止ニマニマ楽しく観ました。
 ボビーはすらりとスマートで優男っぽくひょろりんとしていて、軽やかでいい感じ。それからするとポリーはだいぶ貫禄があるように見えたかもしれません。テス(宮田愛)やアイリーン(岡村美南)がすらりと大人っぽく背が高いのはキャラのうちかなという気もするのですが、ポリーは背も高かったけどガタイもよく見えて、ボビーが押されて見えかねない気もしたので…まあがっつり対等、くらいな方が現代的なカップルに通じるのかもしれませんが、もうちょっと可愛げがあった方が好みかな、と思いましたすみません。でももちろん上手かったし、ダンスが素晴らしくて観ていて本当に心躍りました。
 幕間に周りの四季ファンらしき方々の会話で漏れ聞いたのですが、この日のアイリーンはポリー経験者だとか? そういうのも素敵ですね(そういえば私がかつてボビーを観た荒川務はもうひとりのベラですね)。そして声だけならしっとりおちついていてポビー母もできそうではあった…(^^;)でもボビーとポリーがくっつく一方でアイリーンとランク(渡久山慶)がくっつく、というのがいいんですよねー。ポリーからしたらボビーは都会から来たお金持ちの王子さま、ということになるのかもしれませんが、同じように都会のお金持ちでなんならボビーより経営手腕のあるアイリーンはランクとまとまって彼のホテルを立派に立て直している。都会の女が粗野な田舎者の男のセックスアピールに負けたんだ、という揶揄なんだとしても結果を出しているのはむしろ彼女で、めでたいことよあらまほしきことよ、と思います。逆シンデレラ・ストーリーがちゃんとあるところが現代的だ、とも言えるなと思いました。
 それでいうとエベレット(池田英治)も最終的にボビー母とまとまるボーイミーツガール大団円ラブコメディですが(3組のカップル…『ミーマイ』か!)、ベラは離婚が成立していないからラストにテスと組むことはなく、テスはパッツィとシンメで出てきます。当然ですね、良きですね。でもみんなホントにチャーミングなキャラクター揃いで、ホント楽しい演目です。
 フォーダー夫妻(長手慎介、花田菜美子)の存在というのは、もしかしたらアメリカ人が観るともっと何かあるのかもしれませんが、私たち日本人にはよくわからず…ただバリケードと赤い旗が出てくるミュージカルってのは『レミゼ』のことだと思うけど、あれに出てくる革命はフランス革命じゃないぞ、とは思いました。でもベラにとってはその程度の認識、ということなのかもしれません。
 他にも微妙に笑いが取れていないやりとりもありましたし、四季独特の、洋画の吹き替えみたいだなーとも思う妙にハキハキした日本語発声台詞とかも、まあ気にはなりましたが慣れはするので、総じてホントに楽しく観ました。
 でも完売ではないようでしたね、残念だなあ…でもいつでもふらりと帰る、追加できる、というのはいいことなのかもしれません。
 三か月の長丁場、どうぞご無事で…そして私は四季に疎くて観ていない演目がたくさんあるので、手を出していきたいなと思っているのでした。いまっちが『ウィキッド』に出ますしね! オススメ、教えてくださいませ…!!




 





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