駒子の備忘録

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『ifi』

2014年09月11日 | 観劇記/タイトルあ行
 青山劇場、2014年9月9日マチネ(Aバージョン)。

 ニューヨーク・マンハッタンでインディペンデント系の映画監督として数々のヒット作を生み出していたユーリ(蘭寿とむ)は、映像カメラマンのヒロ(Aバージョンではジュリアン)と暮らしていた。仕事に明け暮れるユーリに対し、ヒロはふたりの将来のことも話したがったが、それでもふたりは平穏な日々を送っていた。だがある日、ユーリとヒロは若者たちの喧嘩に巻き込まれてしまい…
 作・演出/小林香、音楽/スコット・アラン、扇谷研人、堀倉章、KENSHU、SUPA LOVE、映像・空間監督/東市篤憲、振付/SHUN、ケント・モリ、エイドリアン・カンターナ、ANJU、黒須洋壬、ティム・ジャクソン、chaos。
「もしもあのとき違う選択をしていたら…」がテーマのダンス・パフォーマンス・ショー…かな? 前花組トップスター蘭寿とむの女優デビュー作。

 小林香の作品は『ピトレスク』、『TATOO14』を観ているのですが、ものすごーく「!」だったことはない印象で、でもまゆたんの卒業後初舞台ですし、出かけてきました。
 普通のミュージカルとは違う、ストーリーのあるダンス・アクト、という意味では『La Vie』に近いのかな、とか思いつつ、楽しく観ました。映像の使い方やスクリーンの模様などの中二感にもニヤニヤしつつ楽しめましたし。ただ気持ち長かったかな、2時間でもよかった。ダンスを見せるにしては冗長に感じられる場面がありました。
 あと、ヒロインのユーリってヘンな名前ですね。恋人がヒロなんだから彼女も日本人か日系人だろうし、普通の日本女性の名前をつけたんじゃダメだったの? ミナでもユキてせもなんでもいいじゃん。
 あと「ヒロの弟(パク・ジョンミン)」ってヒドいよね、なんか名前つけたっていいじゃん。彼はユーリに横恋慕しているだけで最終的にユーリとくっつくとかいう展開のキャラクターではないからこの程度の扱いでいい、ってこと? でもキャラクターに対して失礼だろう。あと単に不便では?
 占い師(ケント・モリ)のそばでいつも舞うのが「謎の男(ストリードボードP)」なのはいいにしても、「大ヒット作曲家(辻本知彦)」と「友人(ライアン・カールソン)」って…私は彼は音楽の精みたいなものなのかと思ってしまいましたよ。ちゃんと名前付けてキャラクターとして扱ってあげてくれ…
 ところで「愛を選べない男(ラスタ・トーマス)」がこれまた「友人(Aバージョンでは佐藤洋介)」に結婚を止められ結局デキちゃうのはいいとして、作曲家と友人もそんなような関係に見えるから、ゲイ・カップルが2組も出てくる舞台なんですね。イヤいいんだけど。レズビアンのキャラクターはいないのにね。まゆたんがせっかくのヒロインなのに兄弟に取られ合うってほどでもないし、ちょっとしょぼん。

 Bバージョンも観ないと演目としての最終的な判断は下せないのかもしれませんが、私は1回しか観ないのでとりあえず私なりの感想ですが…
 ユーリは自分のせいでヒロを失ったと思っていて(まあぶっちゃけほぼそのとおりなんだけれど)、選択を誤ったと悔やんでいる、彼を取り戻したいと思っている、というところから始まる物語なんだけれど、ヒロが死んでいるのか、たとえば意識不明の重体で回復の見込みがないとかの状態なのかが不明瞭でしたよね?
 でも死んでしまっているのだとしたら(そして事実死んでいたのですが)、占いに依存しがちになるのはともかく、ヒロを取り戻そうとするというのはかなりユーリがやばい人に見えませんかね? ファンタジーの域を超えているというか。
 逆に言うとオチが見えているというか。ヒロが帰ってきちゃったらホラーでしょ、ギャグでしょ。
 でも最初からユーリが編集中の最新作が『オルフェ』だったりするので、当然それは死んだ妻を取り戻しに冥界に行って、でも取り戻せないで終わるオルフェウスの話だと誰でもわかるので、ユーリがヒロを取り戻しにいっても同じことになるのだろうという推定はできる。
 まあその上で観ても途中をおもろしがることは同じようにできるんだからいいんだけれど、「愛の奇跡を信じる!」みたいな構成にはなっていないので、私はちょっと出オチ感というかネタバレ感を感じました。
 ただ、「Aバージョンではユーリは恋人を取り戻しに」行き「Bバージョンではユーリは過去を変えるために」行く、となっているので、このあたりは全体を通してまた新たに見えてくるものがあるのかもしれません。
 でも、映画でも最近前後編みたいなものがあったりしましたが、普通の人は一回しか観ないし両方観ないとわからないとかいうんだったら二本立てにして一回にまとめてよ、という気もするので、あくまで一回観ただけの感想を私は語ります。
 だからそもそものユーリの行動拠点が違うし展開もまた違ってくるのかもしれませんが、私は各場面でユーリが選択する「This or That」がA、Bバージョンで違うのかな、でも結局結果は変わらない、というようなことになるのかな、とちょっと予想しました。
 だって過去は変えられないものだから。
 それを認めて、喪失を乗り越えて、未来に向かって生きていく、これはそんなヒロインの物語だと思うから。

 というワケでまゆたんは、私の好みとしてはもう少し髪が伸びていてほしかったのだけれど(私はとても単純なので長い髪は女らしさの象徴だと思っています)、パンツスタイルでもちゃんと女性だし白いワンピースやお臍も披露するし歌もダンスも楽しそうで、よかったのではないかと思います。
 ファンはもっとバリバリ踊ってもらいたかったのかもしれないけれど、やはり宝塚歌劇のトップスターとはこれからはあり方が違ってくると思いますからねえ。ミュージカル女優になるのかな、ストレート・プレイもやるようになるのかな、ダンサーとしてやっていくのかな、楽しみです。
 その他、「ダンス」というくくりは同じでもいろんなジャンルの違ったパフォーマーたちのいろんなタイプのダンスが見られて楽しかったです。でもプログラムの主催者の挨拶文のダブルクォーテーションの使い方はいかがかと思いましたけれどね。ダンサーはダンスで仕事しているのであって名前で仕事してないんじゃないかなあ…このダンス公演の意味、わかってんのかなあ…
 そこはちょっと残念でした。

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