駒子の備忘録

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宝塚歌劇宙組『華やかなりし日々』東京新人公演

2012年06月15日 | 大空日記
 新公って通が行くものだとずっと思っていて、そうじゃなくてもレベルが本公演より落ちるに決まっているんだから観に行く価値なんてそうそうないもので…とずっと思っていましたすみません。
 だから初新公観劇は月組の『スカーレットピンパーネル』とごくごく最近のことでしたし、そこから片手の指で足りるほどしか新公なるものを観ていないし、ひとつの記事にもまとめてきませんでしたが…
 今回、ひょんなことからチケットが舞い込み(すぐ駆けつけられる体勢をたまたま取れていた自分GJ!)、かつオペラグラスいらずで下級生たちの顔がちゃんと識別できるとてもとてもよいお席で、ちょいちょい変更されている演出や芝居の間合いやキャラのニンの違いもすべて楽しめ、最後はうっかり泣いてしまったので、書き留めておきたいと思います。
 毎度前置きが長くてすみません。このくだくだして理屈っぽい性格を何とかしないとホント、モテないよね…(関係ない)


 新公担当は原田先生。そのままなんですね、でもちょいちょい変えてきた。それは生徒に合わせてということなのか? こういうパターンもありえるということだったのか?
 だったら最後の銀橋で花束を見つけるのをジュディにしてくれたってよかったよ! 鼻歌歌ってる(愛ちゃんのは鼻歌にしては朗々としすぎていたが)ロナウドのところにジュディが追っかけてきてもよかったよ!!
 しつこいけれどそれは何度でも言っておく。

 さて第1場から。
 暴漢、というかロイ(風馬翔)はカケル。逃げ道を探しながら帽子を取って見せる仕草がありました。つまり、のちにより「これがロイですよ、重要なキャラクターですよ」と印象付けることになる演出変更だと思ったがいかがか。
 逆に言えば、ロイの重要度が上がって見えた分、なおさらロナウドトロイのいきさつが見えないことによる全体のお話の混迷度も上がって見えましたけどね…
 重ねて言いますが演じる生徒のせいではまったくない。原田先生の脚本の不備の問題です。

 アーサー(凛城きら)はりんきら。ニンなのかなんなのか、これだけで叩き上げっぽい、誠実っぽい、そういう意味での仕事ができそうな刑事に見える不思議。テルのノーブルな優男っぽさはかけらもないけれど、「敏腕刑事」ではあるからいいんじゃないかな。
 ビリーは実羚淳。上背あるなあ。カチャの軽いヤング・アメリカンな刑事とはまた違った、ちょっと骨太な、不良上がりだったりするの?みたいな感じがよかったです。

 ウォリスキー邸のパーティーはさすがに人が減ってちょっと寒々しかったかな?
 招待客にりくくんがいたのがさすがに目を引きました。黒塗りだからではなく! やっぱり前に出て踊ることに対する度胸が下級生たちに比べてもうできているんですよね。

 アリサちゃんのジョセフィン(瀬音リサ)はわかりやすくおつむの軽そうなフラッパーにしてきましたが、これはこれで可愛かった。ちや姉ほどの貫禄はないジミー市長(星月梨旺。でも健闘していた)とのバランスとしてとてもよかったと思いました。

 タキシードで登場する主役・ロナウド(愛月ひかる)の愛ちゃんですが、総じてスーツはとても似合っていたし脚の長さに惚れ惚れしましたが、このタキシードと黒燕尾が意外に今ひとつに見えました…もちろん採寸が完全に合っていないのかもしれないけれど、やはり年季がいるものなのかなあ…ガンバレ!
 とてもおちついて見えて、逆に言うと軽快さはない。大劇場初期の大空ロナウドもこんな感じの慇懃無礼さがありました。だから詐欺師というより誠実で押しの強い実業家に見える…ここも実は脚本の穴だけれどね。
 本人も、あがったという大劇場新公より落ち着いて演じられていたのではないかなあ。だから乱入してきたロイとのやりとりもとてもよかったし、だからこそロナウドトロイの間にはいろんな確執があったのだろうと連想させて、でもその説明がのちにまったくなされないからフラストレーションがたまるという怖ろしい効果を生み出してしまっています…どーにかせーよ原田先生!!!

 ニック(星吹彩翔)は目端の利きそうな弟分を好演していました。タイプが違いすぎて愛ちゃんと同期に見えないところがいいよねえ。でもこれについては後述。

 第2場。
 オーディションを受ける女の子たちの数もひとりふたり減っていたかと思いますが、みんな綺麗で可愛くてデレデレ。
 そしてすばらしかったのがジェームス(美月悠)。立つときは常に五番ポジション、取るポーズはすべてパになっているような振付師、イイ!
 ピーター(桜木みなと)が一番本役に忠実にやっている感じがありましたが、これはこれでよかったです。
 ジーグフェルド(月映樹茉)は…なんだろう、ともちんとはまたちがった、おっさんなのにふわふわしとる…という感じが出ていた。ただ思い込みとして、じゅまちゃんならもっとなんか見せてくるだろう、とおもっていたほどではなかった…かな?
 訪れてくるロナウドさんに対する芝居もちょっと変わっていましたが、不発だったせいもあるかも…

 アンナ(百千糸)は絶品でした。小さいんだけど往年の大スター、という感じをとてもよく出していました!
 Fマイナー(だったかな?)で『カルメン』から朗々と歌ってみせ、応じるポーラ(花乃まりあ)は超オンチという役作り、これもよかった。
 そこへ助け舟を出す…というか喧嘩を売りにいってしまうジュディ(伶美うらら)のゆうりちゃんですが…うーん、これが実は一番印象に残らない生徒だったかも…
 実は『美生涯』でも茶々に一番違和感を感じたので、もしかして私はスミカの芝居が好きすぎるのか!? いや美人だし知的なしっかり者に見えてそれはおもしろかったんだけれど…あとロナウドとのふたり芝居の場面は本公演と感じがなんかちがくてよかったんだけれど…あとはなんか印象がない。
 歌はあいかわらず下手だ。自信なさげに歌うのがまたよくない。だって愛ちゃんははったり力を身につけつつあるもん、大空さんの芝居歌の極意を伝授してもらっているのがわかるもん(逆に言うとそろそろ歌上手さんの本役についてちゃんと勉強した方がいいなとも思ったけど)。
 あとみんな総じてマイクに声を乗せるのが下手だよね。まあこれも経験を積むしかないんだろうけれど。ゆうりちゃんは腹筋がまだまだ弱いのか、単純に声量が足りなく聞こえるときが多くて、自分は良席だから聞こえるけど二階奥とかには聞こえてなくない?とか常にヒヤヒヤしました。要練習。

 第3場、ロナウドとニックのやりとりはのちの場面でも変更がされていましたが、ここのものの方が全然よかったな。自然だった。
 そのあとの銀橋ソロ、愛ちゃんがんばっていました。感情を乗せて丁寧に歌うこと、技術や音量で勝負しようと無理しないこと、をきちんと学習している気がしました。

 続く第4場の回想場面、ロナウドもロイも美少年でドキドキ…って、ロナウド少年は和希そらでロイはこれは抜擢なのでは、の留依薪世だったんですね! でもとてもいい場面になっていました。ガンバレ若手!!

 第5場、ウィンター・ガーデン劇場。ここではヘディ(瀬戸花まり)のワイルドさが圧巻。いい感じに調子っぱずれだったし(何しろアユミさんは上手すぎるからなー)。
 ジョージの朝央れんも上背があって目を引きました。宙組は娘役が小さくて男役が大きくていいよね。
 あと席が良すぎて「スキャンダル」ダンサーの尻ばっかり見ていましたここで懺悔します…

 クラブ・ヴィーナスの場面は…だからジュディの歌が弱くてさ…歌えないクリスティーヌのときの『ファントム』のしょっぱさがややよぎってしまい…
 ハリソンのカケルもとてもよかった。いちくんのところの春瀬くんと愛ちゃんのところの七生くんがまた美麗で眼福。キング・グラント(蒼羽りく)のりくくんは…ここではなんかうさんくさくてとてもよかった(笑)。

 第8場、ロナウドとジュディの銀橋場面に来て笑っちゃったのが、愛ちゃんが『誰鐘』ロバートさんになっちゃってること。下級生の相手役を持つのが初めてだからか、遠慮なく包容力を発揮できてやりやすい場面だったのかもしれないけれど、ロナウドさんとしてのキャラクターの一貫性に関しては崩壊していました。
 プログラムにコメントしていたように、感傷的にシリアスに演じる方が楽なんですよね、おそらく若いころは。軽妙な中の本心、なんてそりゃハードル高いのわかってます。でもガンバレ!
 そして逆にゆうりちゃんは全然色が見えなかったぞ、ジュディがどんな人間なのか女性なのか全然見えなかったぞ、違う意味でガンバレ!(だってこうなったら雪に呼ばれてみっちゃんとかえりたんとかと組むかもしれないじゃん…いやチギかもしれないけど知らないけどでも、とにかくガンバレ!!)

 ちょっと流して第12場。
 驚いたのはキャサリン(すみれ乃麗)のれーれの芝居の密度の濃さ。本公演でちゃんとした役どころを得ている人の演技って公なんだ、と仰天しました。タラちゃんがどうとかとは全然別問題で、同じ台詞で似た仕草をしているだけなのに、与える情報量が圧倒的に違う。すごい!と思いました。しかもそれがうるさくはなりすぎてはいない、すごいなあ…

 前後にあるロナウドとジュディのふたりだけのシーンは、あたりまえかもしれませんが空気の色が本公演とは特に違って見えて、台詞のやりとりの間とかもなんかちょっとだけ違って(キスシーンの抱き寄せ方とかも!)、なんか観ていてとてもおもしろかった。「こういう人間関係であることを構築したいんだ」とがんばっている意図が見えたというか…なんなんでしょうね。
 愛ちゃんがやりやすそうに見えたのもよかったのかもしれません…

 第14場は素じゃないかと言われた(^^;)エツ姉のラナ(里咲しぐれ)の酔っ払い芸をちゃんとこなしていて好感。
 個人的には、ここでいちくんがラナを酒臭がるのがオーバーに見えて、違う臭気があるように見えて気になっていたのですが、単にまとわりつかれてファーの毛が移ってイヤ、というだけになっていたのもよかったです。

 第15場、ジュディの楽屋場面で微笑ましく思ったのは、りんきらだとテルみたいなピンクオーラは出ないこと、だからこそアーサーの初恋はそれはそれでけっこうマジだったんじゃないの?という誠実さを感じたこと(テルのアーサーが誠実でないという気は毛頭ないが! でもあの人だとパトロールの婦警さんとかにしょっちゅう言い寄られてそうだし、ベテラン女刑事とかには乗っかられてそうだし!!)。
 あとロナウドの出方が下手だった点! アレは笑ったわー!!
 ちなみに脚本突っ込みに書き忘れましたが、ここで「失礼しました、失礼しますよ」って「失礼」がダブるのは芸がない…といつも観ていて思っていて、「お邪魔しましたね」とかにしろよ、と思っていたのですが、今「ル・サンク」読んだら「すみませんでしたね、失礼させていただきますよ」だった…! えー! 大空さんが勝手に言い換えてんじゃないのー!!?? この点も後述。

 続くロナウドとニックの場面もかなり本公演となんとなくノリが違い…でもモンチはキャラとして弟役をちゃんとやっていて、その上でやはりふたりは同期という気安さもここで見えて、だからなおさらロナウドとニックってどういう間柄なの?という脚本の整合性のなさに思いが至るという恐ろしさ…
 だってふたりがこんなに仲良しならロナウドは現状に満足してそうだし、ニックに対してロイのことを隠し立てしているのもヘンだし、手にしたものは何もないとか言ってジュディに迫るのもヘンだし…といろいろいろいろボロボロしてきちゃうんだって原田先生!!!!

 第18場、ウォリスキー邸での謎解き場面。
 一番大きい変更は、ロナウドの「お見事です」の前の哄笑がなかったことでしょうか。ロナウドはニックと目とボディランゲージだけのお芝居をして、アーサーの軍門に下ります。私はいいなと思いました。ニックが実際にアーサーに吐いたのかどうなのかとか、ロイとのことを聞かされていなかったのでここでけっこうショックを受けていたりしているのではないかとか、そういうことは全部脚本の不備として未消化なので、逆に言えばこういうパターンの演技もありえる、と腑に落ちました。
 ところでここで大空さんは、私が気づいたところではここ一週間ほど「代々伝わるロシア貴族」と言ってしまっているのですが、脚本は「代々続くロシア貴族」だし日本語としてもそれが正しいし愛ちゃんはそうちゃんと言っていました。気づいて明日から直るかなあ…ごめんこんなファンで大空さん…(ToT)

 初日前のカーテン前芝居は圧倒的に本役がよかったよ…ここは一日の長ならぬ十年の長が出たよ…続く銀橋の歌も。でもこれはもうしょうがないよね。今の大空さんが歌うことにこそ意味があるような歌であり歌詞だからね…
 初日場面もさすがにフォーリー・ガールがまったくいないのが寂しかった…あとホントゆうりちゃん歌なんとかしないと…(ToT)

 りくくんグラントは花束で「ジュディは俺様を好き、嫌い…」と花占い始めちゃってラブリーでした。

 最終場、少年ふたりは花咲あいりちゃんと彩花まりちゃん。とてもよかった。ここの少年はいつもぐっとさせて私の涙腺を決壊させます…
 最後の台詞や歌は、愛ちゃんがやると微笑ましいわけですよ。アンタはこれからもっともっとたくさんの人をだましていくの、それが仕事なの!とおばちゃんモードで怒ったかと思えば、「忘れはしないさ」と歌い上げるときに、そうよアンタにいろいろいろいろ教えてくれたであろう大空さんのこと忘れたら承知しないから!とまた怒り、そして泣く…ああ忙しい……
 コートを脱ぐのにちょっとモタついたのも愛しい。いいの全部そのまんまできるわけないんだから、やられたら大空さんの立つ瀬ないから。
 でもお願いだから覚えていて、盗んでいって学んでいって継承していって。それを愛して見続けるから、応援し続けるから…そんなことわ考えたらもう、ダダ泣きでした。


 ご挨拶で長のモチモチが、これで卒業のモチモチが、
「今日の経験はすぐには形にはならないかもしれませんが」
 と言いました。いいなあ。このあと彼女が芸能活動を続けようが続けまいが、あるいは自分のことではなく同期と下級生のためだろうが、これって本当に本当のことだと思う。今日感じたことがすぐ明日生かせるとは限らない。というかそんな簡単なことじゃない。でもたゆまずがんばり続ける、そしていつか…という夢を見続ける。それが舞台だよな、宝塚歌劇だよな、ここにしかない生徒とファンのあり方だよな…と感動してしまいました。
 愛ちゃんの、だいぶマシになったかとは思いますがまだまだおたおたした挨拶もまあいいだろう。しかしそろそろ甘えてらんないんだからね! 新公三回主演なんて幸せすぎるんだからね! 生かしてくれないと困るよホント!!


 というワケで、本当に観られてよかったと思った公演だったのでした…
 ツイッターのご縁で急遽チケットいただきました、ありがとうございました!!




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