駒子の備忘録

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ハンナ・ジェイミスン『ガール・セヴン』(文春文庫)

2016年10月24日 | 乱読記/書名か行
 石田清美、21歳は家族を何者かに惨殺され、ロンドンの底で生きている。そこに飄々とした殺し屋のマークがやってきた。君の家族を殺した人間を探してみようか、と彼は言うが…暗黒街からの脱出を願うヒロインの必死の苦闘を描ききる、女子が女子を書いたノワール。

 若くしてデビューした女性作家の第二作で、デビュー作もその若書きが評価されたようなところがあったようなのですが…いつおもしろくなるのかな?と思いながら最後まで読みました。
 別にヒロインがコールガールの仕事をしようが上司と不倫しようが実はレズビアンだろうがなりゆきで人を殺そうが、それはかまわないと思うのです。そういう事情があれば私もそうするかも、とか、そうしちゃうヒロインの気持ちもわかるわ、とか読者に思わせられるよう描けていれば。
 でもそうなっていない。ノワールだからクールで説明のない文体でいいんだ、ってことなのかもしれませんが、ヒロインの感じ方や考え方が支離滅裂にしか思えず、これでは読者は共感も感情移入もできません。ただの見知らぬサイコパスの話になっちゃっています。
 あげく、ヒロインの家族が殺された事情が明かされるわけでもなく、東京の「彼女」との過去や経緯が語られるわけでもなく、ヒロインがプロの殺し屋になることになっておしまい、ってなんじゃそりゃ、でした…
 あ、でもせめて、「女子による女子のためのノワール」なんてキャッチにせず、「ラノベだよ」って言ってくれたらよかったんだと思います。そういう見方で読めば、主人公や世界観に読者を馴れ合わせようとしない感じ、要するに中二の作家が書く中二の物語、ってことで、そういうものだと許容して読みやすかったはずだからです。実際、本国ではそういう捉えられ方をしているんじゃないの? ヤングアダルト小説なんじゃないの?
 なら納得だし、そういうふうに読みたかったな、そうできていたら意外と楽しく読んだろうな、と思いました。残念。




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