駒子の備忘録

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松田環『こちらから入れましょうか?…アレを』(祥伝社フィールヤングコミックス全3巻)

2021年09月11日 | 乱読記/書名か行
 新婚2年。優等生人生を歩んできた俺・高遠敦が、愛しの妻・優とできなくなって3か月。俺より妻の方が経験豊富だったことに劣等感が生まれ、いつしか男として機能しなくなっていたのだ。妻のことが好きだからこそ、できないのには困っている。そんなある日、優が入手してきたのは●●●●だった。「……えっ、俺が入れられんの? 想定外の事案すぎるんだが??」だがそれでふたりの危機が乗り越えられるなら…性欲にまつわる夫婦の物語。

 確か1巻をたまたま読んで、以後フィーヤンで追っかけて読んできました。
 今のフィーヤンって、昔のいわゆるレディスコミックとはまた違った意味でがっつり「性」を扱ったアグレッシブな作品が多くて、これもそのひとつだと思います。
 最初は、ラブコメにしては中途半端で、どう読んでいいのかとまどったんですよね。主役夫婦に、敦の後輩で優の元カレという京介が絡んできての一応三角関係なんだけれど、敦と京介のBLとも読みづらいし、優がふたりからモテモテで揺れちゃってきゅん!みたいな話でもないので。
 敦は、後ろの方が感じるようになってしまったとしても愛しているのは優で、セックスしたいのも優なんですよね。優も、そりゃ京介と爛れた性生活を送った過去があるとはいえ、敦と結婚してからは敦との性生活になんの不満もなかったわけです。敦が優の性経験の豊富さを知って勝手に引け目を感じて勝手に勃たなくなっただけで。それでも優は敦とだけしたいし、京介に言い寄られても本当に困惑し迷惑に思っている。そして京介は優にも敦にも絡むけれど、結局はかつて優にフラれたことを自分の中で納得・消化し切れていないだけなのです。
 結局、お互い不器用に、けれど真正面からぶつかって、いくところまでいって、さらけ出して恥をかききって素直になって、それでやっとみんななんとか乗り越えて、前に進んでハッピーエンド…というお話になりました。好きだからこそテレちゃうとか恥ずかしいとかカッコつけちゃうとかこだわっちゃうとか、そういう力みを、隠したり棚上げにするのは無理があって、なんとか上手く捨て去るか、認めてそれごと相手に受け止めてもらえるよう、真摯に向き合うしかない。愛と信頼があって対等でお互い大事にしあって楽しく気持ちいい性行為ができるなら、アブノーマルとかなんとかいう世の基準(?)なんか関係ない。そういうお話だったんだと思います。優の、女性だし挿入されたいけど精神的というか性格的に攻め、みたいな感覚とか、敦の男性だけどMっぽい感じとか、多分わりと普通だし意外と広く共感されるんじゃないかなー、とも思いました。物語として、また漫画としてものすごく上手く描けている、というほどではないのが残念だったし、ラストが優の妊娠で終わるのはちょっと本筋と関係ない気が私はしましたが、でもおもしろい企画、コンセブトの作品だったと思います。




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