駒子の備忘録

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宝塚歌劇宙組『ロバート・キャパ 魂の記録/シトラスの風Ⅱ』

2014年02月22日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 中日劇場、2014年2月19日マチネ、ソワレ。

 1933年、ベルリン。新米カメラマンのアンドレ・フリードマン(凰稀かなめ)は質屋の店主と殴り合いになる騒ぎを起こす。生活のために質入した小型カメラ・ライカが売られてしまったのだ。やがて彼は親友のチーキ・ヴェイス(七海ひろき)とともにフォト・ジャーナリスト目指してパリに向かうが…
 作・演出/原田諒、作曲・編曲/太田健。2012年に初演されたものを一幕ものにして再演。

 青年館で見たときの感想はこちら。「…まあ…こんなもんかな…」というものだったような気が…
 その後スカステで映像の放送を見たときには「記憶していたよりおもしろく見られた…かな?」と感じた気が…
 で、出かけてきたのですが。
 スペインのショーアップ場面やゲルダ(実咲凛音)のソロがカットされていたりはするのですが、いつものお芝居より長い上演時間でしたし、一幕ものにする以上、もっと大胆に編集したり再構成したりしてもよかったのではないかな…と思いました。
 全体に通してみると単調に見えるというか、山や谷の作り方が一幕ものになっていないというか、あくまで間に休憩があることを見越したままの構成に見える…という気がしました。とにかく長く退屈に感じてしまったのです…
 シモン(寿つかさ)との電話の場面とか(これはセットチェンジのために必要なのかもしれませんが)母親(京三紗)の来訪場面とかは、一幕にもあって二幕にもあったからこそ意味があったように見えました。同じような流れなのに意味が違っていることに意義がある、というか。でも一幕の中にあると妙な既視感と「さっきも同じことやったじゃん」という繰り返し感の方が気に触ってしまったのです。
 序盤も、第4場のフーク・ブロック通信社の場面はカットしちゃってもよかったかもしれないし、ゲルダと出会ってすぐ「キャパ」が生まれたことにしちゃってもいいかもしれないな、と思いました。仕事の妨害・迫害をされたから名前を変えキャラクターとプロフィールを捏造した、という流れより、その名前で何をしたのか、ということに焦点を絞った方がいいように思えたのです。
 まあ尺を巻けばいいというものでもないですけれどね…
 そうやってテンポアップしたとしても、題材として宝塚歌劇としてやはり地味だな、と思ってしまいました。パリのデモ場面もスペイン内戦場面もコーラスや群舞は素晴らしいのですが、はて何を争い何と戦っている場面なんだろう?と思ってしまうのです。これは私が色恋好きで戦争とかとなると思考停止するタイプなのが良くないのかもしれないのですが…
 ううーむ。アンドレはカッコよかったんだけれどねえ…
 あと、卒業したいちくんに代わりフェデリコに扮したりくくんがきっちりいい仕事をしていました。
 ずんちゃんとかもよかったな。ちーちゃんは…まあ、おっさんの作りでなくて安心したかな。そしてカイちゃんはこういうしどころのない役はどうしようもないんだな、という感じがしてしまいました…

 自分でもびっくりしたのが、ゲルダみりおんがダメだったこと。
 再演の発表があったときには、ニンからしたらゆうりちゃんよりゲルダに向いていそう!と期待していたのですが…
 なんか真面目で地味できっちりしっかりしたみりおんがやると、私にはゲルダが本当に賢しらで嫌な女に見えて、鼻白んでしまったんですね。ゲルダはゆうりちゃんのあの無駄なまでの美貌と大根と言ってもいいくらいにちょっと一本調子だったしゃべり方で、ちょうどいいキャラクターだったのかもしれない…と思ってしまいました。
 「キャパ」誕生場面のキラキラさやラブラブ感はさすがトップコンビの息の合い方だな、と思ったんですけれどね…
 脚本のせいかもしれないけれど、ゲルダがアンドレのプロポーズを「今は駄目」と断るのも納得いかなかったし。いつならいいんだ、彼女にとって結婚ってなんなんだ、恋愛ってなんなんだ、全然わかんないぞ。宝塚歌劇の主人公たるトップ男役を簡単にふるなよムカつくな、とか感じてしまったんですよ。
 ヤダなあ、もっとすっきり楽しくニヤニヤ見たかったわ…
 個人的にみりおんがタイプでないことももちろんあるのかもしれないけれど、ヘンな偏見はないつもりで観に行ったので、ちょっと驚きでした。勝手な感想ですみません。
 しかしポスターはツーショットの方がよかったと思います。一緒に撮影する時間が取れなかったのかもしれませんが、トップコンビなんだし、なんといっても「キャパ」とはアンドレとゲルダが一緒に作ったキャラクターであり名前であり、ゲルダの方が姉さん女房というか牽引した部分が大きかったはずなんですからね。あの写真だってゲルダのカメラに収められたものだったそうなんですからね。
 しかしそれで言うと今見るとこの題材は某聾音楽家問題を思わせてなかなかモヤりますよね…私はペンネームを使うこととか架空のキャラクター像を立てることはアリだと思っていて、あの事件のある種の詐欺性とは問題が違うとは考えているのですが…
 とにかくそんなワケでなかなかいろいろ考えさせられてしまった観劇なのでした。
 ちなみに八百屋舞台は美しく、特に前半の流れるようなミュージカル仕立ても美しいなと思いました。シャッターが閉じられるように閉まる幕の閉まり方もお洒落で、特にセンターで観たときに綺麗でした。

 エツ姉とエビちゃんのバイト(というかアンサンブル)が素晴らしかったなあ…!


 ロマンチック・レビューは作・演出/岡田敬二。1998年に初演されたものの再演。
 初演は生では観ていません。友会で外れたか、『エクスカリバー』にNO興味だったのだと思われます(笑)。
 だがしかしロマンチック・レビューはいいねやはり! 時に昭和すぎてタルいなと思わないこともないのだけれど、今回はとてもハマりました、すごくよかった!
 プロローグの次がストーリー性のある場面、そして中詰め、さらにストーリーのあるダンス、ゴスペル、フィナーレととてもバランスがいい。間に入る繋ぎの歌唱場面もいい。これで尺が十分あればもう一場面入れられたか、フィナーレをもっとたっぷりできてベストだったと思います。
 なんてったってプロローグで手拍子入れなくてもいいのがいいよね。で、手拍子なくてもちゃんと盛り上がる、そして主題歌が覚えられる。大事! ずっと手拍子ししてなくちゃいけないのってはっきりいって苦痛だしインフレ起こす。この間の『コンタカ』のつらかったこと…!
 シャーベット・トーンのお衣装が上品で美しい。間奏曲の「夢・アモール」はバラードであるべきだと思っているので、後のみりおんのソロ・バージョンのほうが好きですが、これもよかった。
 だがちーちゃんはずっとカイちゃんより上手に置くべきではなかったのか…ヤダなあもう。

 続く「ステート・フェアー」は『ラ・カンタータ!』からの場面。大好きだった! もともとは海外ミュージカル映画の場面なんでしたっけ? でももう可愛くて懐かしくて鳥肌たちました!!
 ヤングガールA6人全員がマジで可愛いのとか異常! 特にあおいちゃんとエツ姉の金髪ぱっつん前髪! エツ姉なんかさらに三つ編み!! タラちゃんエビちゃんアリサにあれは誰!?と思ったら愛白もあちゃん、パレードでエビちゃんとシンメでその可愛さに仰天しましたよ!!
 ここは完全にアグネスのみりおんがメインでフレッドのテルはヒロインの引き立て役、みたいなところが好き(笑)。だから本当は二番手格の男役スターが相手をしてもよかったのかもしれません。

 「そよ風と私」と言いつつ宝塚歌劇以外では許されないとんちきな水玉衣装が楽しすぎる中詰めもよかった!
 続く「ノスタルジア」は…すっしぃさんを使っている場合なのか、というのはある。『クライマックス』で似たことやったやろ、というのもあるし、ちーちゃんでもカイちゃんでもりくくんでもずんちゃんでも使ってやれよ、と思わないではなかったからです。
 でもまあもちろんすっしぃ素敵だったけれどね。暗転オチもいい。

 ロケットは男役のニコニコっぷりにニヤニヤ。
 そして「明日へのエナジー」はやはり名場面! あおいちゃんの歌声が素晴らしい!!
 フィナーレはデュエダンがあまりふたりが絡んで踊ってなかったのがちょっと寂しくて、黒燕尾も短かったのが残念だったけれど、でもとても楽しく清々しく見終えられました。
 やはりショーはいい! レビューはいい!! もっとやるべきですよ、タカラヅカ「レビュー・カンパニー」なんだから!!!


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